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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第五章 戦争編

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戦争の真意

前回のあらすじ


 ゴブリンとの戦闘を終えた聖歌公国軍。無数の死傷者多数で、事後処理に追われる。そんな時、聖歌公国の現国王から『ホットライン』――緊急連絡用の回線で呼び出しがあった。

 内容は『緑の国』からの停戦の申し出。妙なタイミングを疑問に思うと『緑の国軍が、悪魔の遺産で武装したゴブリンによる襲撃を受けた』らしい。聖歌公国が受けたのと同じ被害。つまり今回の事件に、両軍は関わっていない可能性が高い。

 では……今回の事件は、一体誰が手を引いたのか……?

 聖歌公国と緑の国、両国の衝突は意外な形で終息を迎えた。

 二度目の本格的な衝突……『不幸な横やり』や『ハクナ・ヒュドラの出陣』などなど、激しい交戦を終えたその日の夜間。両軍に対し『悪魔の遺産で武装したゴブリン』による襲撃事件が起きた。

 誰にも想定外の事件に、両軍の対応は遅れた。人員に甚大な被害を受けた両者だが、そのまま無理に戦闘継続する選択肢も存在した。しかし現実として、両国上層の意向もあり、素直に両軍は撤退した。


 理由はいくつかある。人的被害による損耗はもちろんそうだが、他にも複数の要因が存在していた。

 まず互いが互いに、今回の事件について『自分たちはこの事態をはかったのではない』と主張するためだ。

『悪魔の遺産』は、ユニゾティアで強く忌避されている兵装である。直接用いるのはもちろんの事、間接的に使わせても批難は避けられない。疑わしく思われるだけでも、その後の印象は間違いなく悪化する。ここで下手に攻め込めば今後に響くと、政治的な利害も一致した。


 次に……『悪魔の遺産』の特性上、鹵獲した『悪魔の遺産』での攻撃が、敵国から来る危険性があった事。

『悪魔の遺産』は、誰が使っても性能が変化しない。ゴブリンが使おうが、聖歌公国の軍が使おうが、緑の国の兵士が使おうが、である。

 つまり――ゴブリンを撃退した後には『悪魔の遺産』がいくつも両軍内に残っている。その力に晒された直後、今度は自分たちが使えるとしたら? 軍隊として、国家として『禁じる』と厳命したとしても、目の前に過剰な力がぶら下がっていて、誘惑に抗える人間ばかりではない。もし今後、両国が衝突した際……『悪魔の遺産』の撃ち合いに発展する危険性が、否定しきれなかったのだ。


 ただでさえ悲惨な損耗の後に、さらに『悪魔の遺産』を用いた両軍の衝突が起これば、それは凄惨な光景しか生まないだろう。やったもの勝ち、られる前にる。戦場では当然だが、そこに『悪魔の遺産』と言う要素が含まれれば……あらゆる観点から戦争激化が目に見える。戦争状態で互いに信用しきれないが、泥沼化と過剰な損耗は望まない。ここでも互いの思考と、利害の一致があった。


 しかしそうなると……一つの疑問が残る。

 互いに撤退と終戦交渉に応じたことから、この『悪魔の遺産で武装したゴブリン襲撃』は、両国ともに関わりがない。そもそもこれだけの量の『悪魔の遺産』の生産と、誰がゴブリンに訓練を施したのかが不明だ。武器の生産ラインも、ゴブリンの教練する場所も、隠しきれるとは思えない。これは終戦交渉中に決定した事だが……この案件についての調査は、両国が共同で行い、逐一報告する事が決定された。

 これは『互いに全く知らない』裏付けとも考えられる。事実兵員に被害が出た以上、真犯人や黒幕の類がいるなら、絶対に暴きたい。腹黒い計算もあるが両者共に、被害者犠牲者を出しているのも真実。

 そして……両国の戦闘激化が『黒幕』の狙いである可能性を否定できない。以上の理由から、極めてスムーズに、両国の終戦処理は完了した。

 民間や民衆感覚では、あまり納得いかないとの意見もあるが……少なくとも政界と軍部は、やむを得ないとの意見が大半を占めていた。


***


『ヤレヤレ。事務仕事ハ不得手ヨ……現国王ノくれないニ、ホトンド投ゲテシマッタ』

「はは……相変わらずだね、ハクナは」


 緑の国の一角、五英傑の一人『黄昏の魔導士』は、一人自宅で話し声を上げていた。

 いくつかある隠し部屋の一つで、彼は専用ホットラインを使用していた。緊急連絡用通信『ホットライン』は、いくつか別口の回線が存在している。

 国家同士で話すため、周囲の目がある中で発動するオープン回線と……かつての英雄たち『吸血種』や真龍種、国の要人が個人で話すためのシークレット回線だ。

 前者は緑の国と聖歌公国、また戦場でハクナと聖歌公国の王が交信した通信回線で……今、吸血種同士が会話を重ねるのは後者に当たる。この回線は『主に千年前』に関わる会話……つまり現行の政界にさえ、表向きに出来ない案件を話し合う特殊回線である。


「ま、こっちもこっちで大変だったよ。ドラージル老やラーク議員が頑固でね……彼らは千年前の戦争の当事者だから、感情は複雑なのだろうけど……」

『ダガ同時ニ、奴ラノ脅威モ知ッテイル。対シテ聖歌公国ノ民ハ、千年前ノ脅威ヲ半バ忘却シテイル……オカゲデ紅ハ苦労シタヨウダ。今度何カ贈ロウ』

「……そうだろうね。それに『グラドーの森、深部の真実』は、できれば目を背けたい案件だろうからね……」


『黄昏の魔導士』は、深い嘆息を漏らした。

 今回の事件、そして戦争が起きた……いや『ガス抜きも兼ねて黙認した戦争』の理由は、あの森にある。


「――聖歌公国と緑の国、この両国で戦争を繰り返す理由はあの森にある。『千剣の草原』はグラドーの森に比較的近い。奴らの望遠カメラなら、十分見える筈だ。あの場所で戦争行為を繰り返す事で、こちらの……『ユニゾティア陣営』力を見せつける、軍事演習的側面があった」


 確認するような言葉の群れ。その中に少なからず罪悪感を含んでいるのをハクナ・ヒュドラは感じ取っていた。庇うように武人は語る。


『……実際ニ兵ノ血ハ流レテイルガ、ソレモ致シ方無シ。『武人祭』モ開催シテイルガ、ヤハリ死ノ恐怖ガアレバ竦ム兵モイル。真ノ戦場ヲ知ル者モ必要ダ』

「僕より戦士の君の方が、そのあたりの体感も詳しいだろうね……ただ、今回予想外だったのは――その演習中に、奴らが攻勢に出てきたことだ」


 焦りと憎悪、緊張と怒りを滲ませる『黄昏の魔導士』……ハクナの頷く気配を感じ、彼は今回の襲撃事件を紐解いていく……

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