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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第五章 戦争編

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攻撃開始

前回のあらすじ


 聖歌公国軍は押されていた。奇襲隊も戦果は芳しくなく、さらに空戦部隊も迂闊には接近できない。本体から援護の煙幕が飛んだ直後、突然の爆発にぎょっとした。

 巨大な火球が生じた瞬間を、晴嵐と亜竜種も目にしていた。

 距離はあるのに、轟音と突風を肌で感じる。臆病な亜竜種は体をぴくりと震わせ、晴嵐は「やりおったな……」と呟いた。


「ナ……何があったんでス……?」

「粉塵爆発じゃろ。炸裂前に煙幕が広がっておった」

「??????」


 使い方を学んでも、内部構造や仕組みまで知らない。けれど扱っているなら、多分この説明で伝わるはずだ。そう信じて晴嵐は軽く話す。


「こいつ、一回攻撃する度に小さな爆発が起きておる。それは分かるな?」

「あァ……そうですネ」

「多分あの煙幕は即席の……倉庫内に保管されていた小麦かなんかで、咄嗟に作ったモンと考える。で、細かい粒子が空気中に舞っている中で、火花なんか散らしたらそりゃあ……ボンっ! だ」


 すっとぼけて説明する煙幕は、晴嵐がスーディアに渡した物と考える。晴嵐は緑の国は『ヒートナイフ』を用いて着火した覚えがあるが……火薬で弾丸を発射する銃でも、粒子内でトリガーを引けば、引火するに決まっている。


「お主も気をつけろ。煙幕や細かい粒子が舞っている環境で『悪魔の遺産』を使うな。引火してバラバラになっちまうぞ」

「ワ、分かりましタ……ア! じゃああの爆発はゴブリンがやらかしたんですネ!!」

「そうだろうな。奴らの頭では、粉塵爆発まで気を回せん。煙の中で闇雲に弾幕を張ろうとして、自分自身をフッ飛ばしちまったんだ」


 会話もそこそこに、男は声を潜めるように指示した。


「……つまり、あの位置か周辺にゴブリンがいる。頃合いを見て仕掛けるぞ」

「! ハイ!」


『悪魔の遺産』を握る二人。両者ともに緊張して、グリップに知らず知らず力が入る。暗闇と、破裂音と、瞬時に見える閃光とかがり火を頼りに進もうとすると、亜竜種が晴嵐に囁いた。


「ぼくが前に行きまス。暗闇でも見えますかラ」

「夜目が利くのか?」

「えぇト……ぼくは『ピット』が使えるんですヨ。温度を見れるんでス。暗くても大丈夫」

「……そうだったのか?」

「『狂化』した相手だって見つけていたでしョ?」


 そう言えば草原の中で、やたらと早く相手の接近に気が付いていた気もする。ひどい混乱の中だったので、誰が見つけていたかは知らない。

 ただ、この環境で『温度を見れる』技能持ちはありがたい。元々蛇の温度探知能力『ピット』は、夜行性の蛇に由来する能力でもある。光源の少ない環境でも問題なく、敵を発見可能なアビリティは非常に重要だ。


「いまス! 爆発のあった二つ隣のテント! 数は3」

「……こちらでもなんとか見えた。構えるぞ」


 篝火と発砲時の光でなんとか、同じ数の敵を晴嵐も確認した。両手で構える男に続き、亜竜種も似たように両手で構える。

 右手で構え、左手を添える。左足を前に、左足を伸ばす。亜竜種は加えて尻尾も、ぴったりと地面につけて反動に備えていた。

 意外にも構えはしっかりしていて、小さな銃の手ブレが少ないように見える。ちらりと様子を見た彼は、亜竜種に伝える。


「お主の好きな時に攻撃を始めろ。わしも合わせる」

「ふーッ……わかりましタ」

「あまり緊張するなよ。りきむと照準がズレる」


 頷きはするが、余裕は見えない。咄嗟に奪って使っただけの初心者には、酷な言い分だったか。ましてやこの武器には、忌避感が強いらしい。山賊上がりで罪悪感が薄い方とはいえ、土壇場になれば震えるか。

 外していた指を、引き金にかける。射撃体勢に入ったのを見て、晴嵐も遠方のゴブリンに狙いをつけた。二回深呼吸の後に、ついに亜竜種は発砲する。

 乾いた炸裂音。もうテント内で散々発砲したのもあって、亜竜種は目を閉じたりしない。反動で跳ねる腕と銃口。けれど素人のわりには、抑え込めている。

 ――亜竜種の放った弾丸は、ゴブリンの腹を貫く。やられたとすぐに認識できないソイツを無視し、脇にいた二匹に向けて男もトリガーを引き絞った。

 すばやく二発ずつ、計四発を発射。一匹を仕留め、もう一匹は重傷。追加の一発で二匹殺した頃には、亜竜種の次弾が最初の一匹の頭をブチ抜いた。


「はァ……はァ……やっタ?」

「お前、まさかこれ使った事あるのか?」

「そんな訳ないですヨ!」

「の割には、随分上手いじゃないか」


 連射速度はともかく、照準の正確さは大したものだ。晴嵐は数を撃ってごまかしているというのに、コイツは二発とも命中、うち一発は急所である。ビギナーズラックだろうか? 考えは物陰から出た追加の二匹に遮られ、咄嗟にさらに晴嵐が発砲。亜竜種は一発だが、これまた頭部を破壊し、一撃で絶命させた。

 半分あっけにとられながらも、男がリロードを挟む。亜竜種もマガジンを切り替え、捨てそうになったが、慌てて晴嵐は受け止めた。


「あレ? 捨てるんじゃないのですカ?」

「全弾使っていればそれで良いのじゃが……あー……その、なんだ。空のカートリッジには意味がないが、全部使いきっていなければ、多少残っておるんじゃよ。中身が」

「はァ……」

「で……その、半端な残量同士をニコイチにして、新品と空のカートリッジを作れるんじゃよ。一回や二回しか使ってないなら、マガジ……カートリッジは捨てない方がいい」

「ナ、なるほド。でもそれって結構面倒じャ?」

「……面倒じゃが、半端な残量のまま使うよりいい。頃合いを見てわしがやるから、新品とは別のポケットに、使いかけは入れておけ。新品と混ざったらそれはそれで、危険な状況を生みかねん」


 いかんせん『銃』の知識が相手にないので、説明に手間がかかる。かといって、無説明で窮地に陥るのも馬鹿馬鹿しい。その場で数回射撃した後、今度は晴嵐が移動を促す。


「奴らの知能は低いが、同じ場所で賑やかにヤっていたら、バレるかもしれん。何度か攻撃したら位置を変えるぞ。そこでニコイチにするから、見張っていてくれ」

「……ハイ!!」


 素直に晴嵐の指示に従う亜竜種。射撃の腕も悪くない。内部からゴブリンを撃ち殺す二人は、着実に敵の数を削っていった。

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