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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第四章 亜竜自治区編

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第四章 ダイジェスト・8

 組み付いた段階で、晴嵐は亜竜種を投げれないと判断した。相手が直立二足歩行なら、確実に投げ飛ばせるタイミングなのに……全く体幹を崩せない。押してダメなら引いてみろと『巴投げ』を繰り出す。自分を地べたに転がすから、その後の状況はリスクが高い。タイマンの鍛錬と試した。

 結果は相手の油断におかげで決まった。中空に投げ飛ばされたオレンジ鱗の亜竜種と視線を交差させる。しかし亜竜種は空中で体制を立て直し、アルマジロの様に球体の形をとって着地。そのまま転がって突撃を仕掛ける。地面に転がった晴嵐は逃げれずに潰されてしまう。

 カエルが潰されたような声を上げる晴嵐。気絶はせずに済んだが、ダメージは大きい。倒れたままの晴嵐に亜竜種は手を貸し、スポーツマンシップのようなふるまいを素直に受け取めた。

 戦いの感想を述べ合う中、話は晴嵐の投げ技のおさらいに。もう一度投げてくれと頼まれ、男は本気で困惑した。検証と体験が目的らしく、呆れつつも晴嵐は応対。何度も投げをねだる様子は、子供が遊具に夢中になる光景を連想させた。


 長々と検証に付き合った結果、すっかり日が落ちてしまった。愚痴を言いつつも晴嵐は上機嫌。勤勉な人種は嫌いではないし、検証のおかげで発見もあった。

 亜竜種は『巴投げ』を放つのに向かない。体幹を担う尻尾が邪魔になり、自分から後ろに倒れるのに向かないからだ。尻尾を動かせば出来なくもないが、予備動作が露骨になり……だったらそもそも『巴投げ』に拘らず戦った方が強いと、両者の結論は一致した。

 そして、翌日も検証に付き合ってほしいと言う。今度は亜竜種が用いた技――『魔法の防壁をヤスリ状に形成する攻防一体の技』の研究と技術を。今日のやり取りで気に入ったのか、亜竜種は検証相手に晴嵐を選びたいようだ。

 晴嵐側にも利点がある。防壁の利便性を理解した彼は、自前でも購入しておくことに決定。あわよくば技を盗んで会得しようと考えた晴嵐。彼は近場の店に立ち寄り、鎧の腕甲を小型化した道具、鎧の腕輪を購入した。


 次の日の朝早く、亜竜種のクレセントと待ち合わせて検証の続きを行う。軽く巴投げのおさらいしてから『鎧の腕甲』の応用技術についても特訓する。付き合いつつも僅かに盗む晴嵐。まだ付け焼刃なので、咄嗟に使用する事は不可能。魔法の障壁は応用が利く上、自分の命を守る方法としてもすぐれている。折を見て練習すると胸に決め、二人はポートへ向かった。

 戦いの祭典『武人祭』は、今日より本戦に入る。乱戦の予選と異なり、ここからは勝ち抜いた者たちのタイマンだ。彼らが早起きした理由は、クレセントが本戦を見たい気持ちがあったからでもある。

 本戦に入ったからか、周囲の熱気も高まっている。参加者に言及すると、晴嵐とクレセントの知った顔が本戦に出場するようだ。

 活性化した町を見て、経済活動のあれこれを想像する晴嵐。昔であれば、熱狂に身を委ねる事はなかった。腹黒い裏側を見つめて、想像する事で生き延びて来た。けれどスーディアと会い、自分らしくない活動を続けている彼に変化がある。

 そうした決めつけこそが、逆に思考を縛っているのではないかと。裏面ばかりを見ることはない、表の面だってあるのだから。

 だから、今回は賭けたからではなく――知った顔だからお前を応援する。始まった本戦で戦うオークの男は、堂々と剣を構えていた。


 ついに武人祭本戦が始まり、スーディアはヒリついた空気を味わっていた。

 観客席は密度が違い、逆にコロシアム内部は二人だけ。対面のドワーフの男の戦意も十分で、大舞台に上がる緊張をひしひしと感じた。

 実況者の声が内部に響き、観客が歓声を上げる。確かな高揚感を感じるオークの若者は、対戦相手と気持ちを僅かに共有した。

 感慨に耽る中、大闘技場の仕様が観客に伝えられる。より実践に近い環境で競技を行える環境は、少人数しか適用できないらしい。本線とタイマンだけ、この仕様で行えるようだ。

 戦士たちが鼻息を荒くすると、アナウンスが慌てて距離を保つよう静止が入る。解説者の片方は出場経験もあるようだ。雑談を聞くのはほどほどにして、スーディアは対面の相手に集中した。

 この世界では珍しい金属鎧に、小柄の相手はメイスと盾。スーディアの装備は『盾の腕甲』と青いレイピア。両者は武具を構え、試合開始と共に互いに近距離戦を開始。

 初手の数手の攻防は拮抗。一時的に距離を離した所で解説が入る。

 片手に武器を持ち、片手には盾。メイスとレイピアの違いこそあれ、戦闘スタイルはかなり近い。スーディア側は武器の通りが悪いが、相手側は手持ち盾……つまり装備重量がかさんでいる。

 誰が見ても、明確な差異だ。何の狙いがあるのか分からないが、何の狙いも無くこの装備を用いる事はない。鎧のせいで攻撃が通らないが、スーディアは焦らなかった。相手の攻撃は危険だけれど、スタミナ切れを狙えばこちらが有利になる。

 しかしこれは自明の理。予選を勝ち上がった相手が、理解していないとも思えない。細心の注意を払ったまま、彼はじっくりと攻め続けた。


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