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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第四章 亜竜自治区編

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暴走した創作

前回のあらすじ


 可変武器に翻弄されつつも、攻略の糸口を見出したスーディア。変形する瞬間を狙い、衝撃波を叩きこむ。狙いは当たったのか、それとも外れたのか、変形の要である結晶体が膨張し……炸裂した。

 突然の出来事に、その場に居合わせた……いや観戦者含め全員が驚愕した。

 可変武器で変形する瞬間、その結合部を狙ったスーディア。彼の攻撃がどのような影響を与えたのかは不明だが、想定外の出来事には違いない。異常に成長した結晶体が四散した瞬間、無数のガラス片が飛び散ったような、高い破砕音が辺りを包んだ。

 結晶の大きさも方向もまるでバラバラ。若いオークも反応しきれず、脇腹と左足に塊が着弾する。実戦なら抉れていたであろう一撃は、確かに致命傷のように思えた。

 しかし――勝負の決着は、彼が被弾する前についていた。


 暴走した術式が、結晶を異常増殖させた輝金属が……ドワーフの左手側を侵食していた。今もなお結晶の一部が次々と増殖し、時々爆ぜて欠片をまき散らす。誰が見ても選手の制御下から離れており、致命傷を負っていなくても、既に戦闘不能な事は、誰が見ても明らかだ。

危険を察したスタッフが、大慌てでコロシアムから選手に駆け寄る。ドワーフの顔の一部も結晶化し、残った表情も苦悶と焦りが見えていた。周りの術者が混乱しながらも、何らかの魔法をかけていく。治療が功を奏したのか、徐々に結晶が盾の方へと収束していった。

 スーディアの体は問題ない。『闘技場』の効果で、実際の肉体に傷はつかないが……どうやらドワーフの体にかかった魔法は、判定をすり抜けたらしい。本当に危険な状態だと悟り、物々しい気配を全員が感じていた。


「大丈夫でしょうか……今競技を中断し、モルガル選手の救出に入っています」

「事故だなこりゃ……二人とも想定外って顔だ。様子見る限り、何とかなりそうだが……」

「何が起こったのでしょうか?」

「モルガルは武器と武器を連結させて、手持ちの武器を結晶で包み変形させていた。けれどスーディアはそれを隙と見て仕掛けた。狙いは当たった。衝撃が入って、術の均衡が大きく崩れた……多分モルガルも焦っちまったんだろうな」

「その結果が暴走ですか……いやはや恐ろしい。この場合決着はどうなるのでしょう」

「そりゃスーディア側の勝ちだろ。確かに最後、結晶の塊を被弾はしたが……中断して救出しなけりゃ、モルガルは結晶に飲み込まれて……」

「あー……考えたくありませんね」


 数名の術者に抱えられ、何とか髭面のドワーフが結晶から引きはがされる。武器から手を放す様に指示を受けていたが、ドワーフの戦士はそれを拒否した。

 危険な目にあっただろう? 周りの者が忠告する中でも、彼は渋い顔で言う。


「……俺達の不出来が招いた事だ。大丈夫。もう暴走はしねぇよ」


 不思議な言い分だった。武器に文句を付けそうなものだが、自分の至らなさを反省している。事故とはいえ、危険な目に合わせてしまったスーディアも対戦相手に駆け寄った。


「本当に大丈夫ですか?」

「ハハ。気にするな。俺の調整不足だ……悪いな」


 スーディアに向けた言葉ではない。未だに握りしめた得物を撫でる様子は、不出来なモノへの愛着が感じられる。自らの武器を……青い宝剣めいたレイピアを愛用する彼は、対峙した相手の心意気を悟った。


「その武器は……あなたが自作した物か?」


 戦いを終えた二人の目線が絡む。ドワーフの戦士が含んだように笑った。


「俺だけじゃねぇさ。……スーディアだっけか? 予選で当たった時を覚えているか?」

「確か……ドワーフ四人で固まっていた?」

「そうだ。この武器は、あいつら全員で作った試作品だ。ちょっくら宣伝をかねて、大会に出たんだが……はは、醜態を晒すことになっちまった」


 なるほど……今更ながらスーディアは納得する。

予選の時の動き……四人組で固まり、身内全員での勝ち上がりを狙う動きは、集中攻撃にさらされるだろう。悪手に思えたその一手は、最初から一人だけを勝ち上がらせる目的があったのだ。


「あなた一人を生かすために?」

「馬鹿言うんじゃねぇ。俺たち全員この武器を扱えるさ。誰が生き残ってもコイツの宣伝が出来るようにな」

「……」


 こんな複雑な武器を全員が使える? 彼一人だけでも驚いていたが、並々ならぬ事に違いない。それだけの覚悟、それだけの熱量を持ってこの武人祭に臨んだのだろう。結果は散々だったが……


「原因は……衝撃か?」

「それもあるが、安全装置組み込んでなかったのが一番の失敗だ。想定していなかった俺たちが、間抜けだっただけさ」


 だから、気に病むんじゃない。負けた悔しさから言葉にしないが、それでも言外にドワーフの戦士は伝えてくる。わざわざ暴くような無粋はせずに、静かに一礼の後に一言。


「……対戦ありがとうございました」

「礼を言うのはこっちさ。まだまだ改良の余地があるってわかった。あーでも次の武人祭は一か月後か、調整間に合うかねぇ……」


 不遜で豪胆な笑みを浮かべて、係員に肩を借りてドワーフの戦士が会場から去っていく。

 しばらく止まった競技会場に、はっきりとアナウンスが響いた。


「えー……会場の皆様にお知らせです。少々事故が発生しましたが……本戦第一試合は、スーディア選手の判定勝ちと致します。中断が無ければモルガル選手は、実際に致命的な事態に成り得ました。対してスーディア選手も最後被弾しましたが、『闘技場』による自動転送は行われていません。魔法による敗北判定が下されていない点と、モルガル選手の緊急性を加味し、再試合ではなくスーディア選手の勝利とさせて頂きます!」

用語解説


モルガル・ヴィッド


 武人祭本戦、第一試合でスーディアが対決したドワーフの戦士。予選で四人グループを組み、一人だけでも勝ち上がらせるために、連合を組んでいた。新型武器の喧伝とテストを兼ねて本戦に登場。しかし安全装置と調整不足、さらに変形の隙を突かれた事により武器が暴走。判定により敗北となった。

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