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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第四章 亜竜自治区編

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実証の結果

前回のあらすじ


 巴投げを決めて、亜竜種をブン投げた晴嵐。しかし受け身を取られ簡単に倒されてしまう。これで終わりかと思いきや、クレセントは積極的に学びを得ようとしてくる。投げてくれ、投げさせてくれとせがむ戦士に、男はしばらく付き合った。

「あー……全く。長い事拘束されたわい……」


 すっかり日が落ちるまで、クレセントの検証は続いた。

 まさか、あそこまで『巴投げ』に熱中するとは思いもよらなかった。普通上手い事出し抜かれたら、嫌って拗ねるのが普通の反応なのだが……あのクレセントという亜竜種は、随分と勉強熱心な奴らしい。

 別れた直後に、愚痴りつつ町の中に戻る晴嵐。しかし見る者が見れば……例えばスーディアなら気が付いただろう。口調とは裏腹に、そんなに彼は不機嫌ではない事に。

 彼は……勤勉な人間は嫌いじゃない。

 最後の方はタイミングをあわせて、逆に晴嵐を引き倒すまでに成長した。熱心な気質もそうだが、やはり亜竜種は戦闘慣れしている。そしてもう一つ二人の間では発見があった。

 巴投げに対して、カウンターを会得したクレセントだが……それだけ理解を深めたのにも関わらず、巴投げを会得する事が、出来なかったのである。


「まさか、亜竜種な事が仇になるとはな……」


 恐らく、クレセントに限定した話ではあるまい。何せ巴投げは後ろに思いっきり体重をかけて、自分から地面に転がる動作がある。亜竜種の場合……『尻尾が邪魔になって、後ろ向きに倒れることが出来ない』

 クレセントから話を聞いたが、どうやら亜竜種は「後ろに倒れる」という経験がほとんどないそうだ。人が歩くことが自然なように、彼らもほとんど無意識で尻尾を操り、体重を支えているという。なので後ろ向きに転がりたいのなら、尻尾を左右によけるか、股の下から丸めるしかない。

 が、それをしてしまうと、予備動作があからさま過ぎた。正面から対峙する相手に丸見えで、初見であっても「何かを企んでいる」と、即座にバレてしまう。

 一応クレセントが試してみたが、普段しない動作だからか、非常にぎこちない。かなり強く意識して、ようやく使うことが出来る有様である。

 となると……ただでさえリスクが生じる技を、バレバレの予備動作を見せつけた挙句、日ごろの習慣を矯正してまで使う必要があるのか? という結論に達した。


 ……早い話が「苦労して習得する割にメリットが少ない」「クレセントの技量なら、今のまま戦う方が強い」のである。一通り試した後、名残り惜しくクレセントは肩を落としていた。一通りはしゃいでから落ち込むさまは、遊び疲れた子供のようだ。付き合った晴嵐としても……同情を覚えるくらい、へこんでいた。

 とまぁ、検証を長い事続けた結果、今日一日が終わってしまった。途中から晴嵐もつられて、色々と試していたため文句はない。それに一つ、有益な約束も取り付けた。

 翌日……鎧の腕甲の応用技、ヤスリのように障壁を展開し、攻防一体の技について検証したいと言う。あまり広まっていない技術だけれども、既に目にした晴嵐はアイデアを盗んだも同じ。今日のやり取りを気に入ったのか、クレセントは研究相手に晴嵐を選びたいと言う。


(こっちとしても、悪い話ではないが……アレは買っておかないとな)


 彼女と同じ装備品……トンファーはともかく、鎧の腕甲と同じ道具は揃えておかねば。対決して深く理解したが、あの魔法の防壁はかなり応用が利く。普通に用いても、咄嗟の時に身を守れるはずだ。未知の技術の魔法……念じただけで使える、電池に近い『魔道式』はともかく、全く経験のない『魔術式』は、あまり使いたくなかったが。


(あんな便利なモン見せつけられたら、そうも言ってられん)


 軽く念じるだけで全身を防御出来る障壁。晴嵐の知らない穴があるかもしれないが、咄嗟に一撃を防げるだけでも非常に大きい。何なら過去生活していた、終末世界でも役立っただろう。重量や可動域に制約をかけずに、全身を守れる道具は強力過ぎる。それが攻撃にも転用できるとなれば、なおさらの事。

 覚える手間はあっても、時間と金を投じる価値はある。幸い相手も練習や検証中だし、上手い事誤魔化せば練習の口実にできるだろう。

 すっかり日が落ちても、街の中は随分と明るい。輝金属製の街灯が町を照らし、夜闇を明るく染めていく。迷いながら歩む先は、ライフストーンを更新した雑貨屋だ。

 まだ夜中ではないけれど、それを考慮しても中が混んでいる。品ぞろえもこの前から変わっていて、よく見ると道具屋なのに、いくつか武器や防具、そして探し求めている性質の装備も並んでいた。

適当な店員を捕まえて尋ねると……放送に当てられた人々が、成績を残した戦士の装備を求めるらしい。有名な人間、活躍した人間とお揃いになろうとする心理は、こちらでも共通の様だ。

 さしずめ『武人祭特需』か。以前訪れた時も、確か店員の亜竜種が晴嵐に話していた気がする。多分全品割高なのだろうけど、今この瞬間に購入しなければ好機を逃してしまうだろう。足元を見られる事を承知で彼は尋ねた。


「鎧の腕甲の……手軽に装備できるものはないか? 魔術式の奴で」

「時期がいいですねダンナ。腕輪の在庫が一つありますゼ」


 その売り文句が、本当かどうなのかは知らないが……すぐに店員が望みの品を持ってくる。

 余計なやり取りは極力省いて、晴嵐は『鎧の腕輪』を購入した。

用語解説


鎧の腕輪


 鎧の腕甲を小型化した物。値段や効果が一回り小さく、やや燃費も悪い。普段から身に着けるには丁度よい性能ではある。


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