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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第三章 緑の国編

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第三章 ダイジェスト・11

 その頃、晴嵐とムンクスお抱えのゴーレム部隊は、古城のユーロレック城に侵入、作戦準備を進めていた。物置とされる一角に、隠しスペースを発見したゴーレムたちは、ここが『私兵吸血種部隊の出入り口』と断定。周辺の包囲と封鎖、そして晴嵐が罠を配置していると、情報を共有したゴーレムがテグラットの現状を伝えてきた。

 目標を排除し、後方で待機していたゴーレム隊が突入を開始。しかしレリーの館には私兵部隊が見られない。こちらが本隊と断じ、全員が戦闘態勢に入った。

 カウントスリーで、氷で生成した戦槌せんついを振り下ろすゴーレム。すかさず銀粉煙幕を張り援護する晴嵐。後続のゴーレム隊が銀のチリと水分を凝固した、即席の銀と氷の刃を作り上げ、次々と突入していく。

 最後に晴嵐も内部に侵入。手を軽く切り裂き、血の匂いで奴らをかく乱する狙いだ。先陣を切った部隊が交戦開始との報を受け、晴嵐も『吸血鬼は殺す』と吠え、戦線に加わった。


 一方、内部に巣食っていた吸血種私兵隊の反応は鈍い。何名か見回りに来ていたが、臨戦態勢のゴーレムが銀と氷の刃で一閃。その悲鳴でようやく目を覚まし、慌てふためきながら応戦の準備に入る。

 訓練か、それとも千年前の悪魔の襲撃か。あれはただの噂に過ぎない。そう口にした瞬間『悪魔の遺産』に似た炸裂音が地下に響く。その度に怯え、恐怖する吸血種私兵隊だが、逃げ道などないと構えたその時――一団に対し、銀色の投擲物が投げつけられた。


 残り四匹と呟くヒューマン。血の匂いをさせているのに、足音を完全に遮断し、鈍い吸血種を強襲する。次々とナイフを投げる相手に対し、襲われた側が鎧の腕甲で対応するが……男は手早く投げ技に移行。転ばせた後に銀を含んだ煙幕を投げつけた。衝撃や刃は防げても、銀の粒子を防ぐことは出来ず……あっさりと絶命。


 残り三匹。煙幕越しの呟きは、死神の囁きにも似ていた。風を起こす輝金属武器で煙幕を煽り、閉鎖空間で有毒ガスを押し付けるのに使ったのだ。

 一人が飲み込まれ、同じ道具を使って有毒の煙幕を押し返す。爛れた顔の仲間を救おうとした途端、甲高い破裂音が至近距離から響く。転び、怯え、ひっくり返る吸血種を尻目に、煙幕から飛び出した男が一人をめった刺しにして殺害。


 残り二匹。恐怖から逃れるように、吸血種特有の衝動に身を委ねると、牙を剥いて男へとびかかった。吸血を行えば、一時的に滋養が付く。相手も怯んで活路が生まれるかもしれない。そんな希望を『吸血鬼は殺す』と呟いた男は、慣れた手つきで解体に入る。

 左手をわざと噛ませ、食いついた所で手前に引き、右手のナイフで吸血種の首を掻っ切る。僅か三秒で屠殺された相手に目もくれず、男が懐から何かの紙切れを振り下ろす。

 殺意に満ちた破裂音に、硬直する体。その隙に男は、遭遇した吸血種の一団を皆殺しにした。


 使い捨ての折り紙を投げ捨てる晴嵐。噛まれた後、吸血種になる危険もない。軽い処置を済ませた所で、奥からゴーレムが合流する。全体の進行は予定より早く順調。吸血種私兵隊と言っても、思っていたよりはるかに雑魚だ。どちらかと言えば入り組んだ地形の方が厄介。どうやらテグラット達が暮らしていた、隠し空間のような物らしい。

一つずつ未探索な場所を潰すしかない。穴埋めのため進もうとするが、敵の攻撃に合う。前面に出るゴーレム。背後から晴嵐が折り紙を振り下ろし、『悪魔の遺産』に似た炸裂音を浴びせた。

 怯んだ隙に拘束される吸血種。尋問用に囚われたソイツに、晴嵐は手品の種を見せつけてやった。

 彼とテグラットが使った、炸裂音の正体は……『紙鉄砲』という、紙さえあれば誰でも作れるオモチャだった。悪趣味と見下ろされる晴嵐は、この場で尋問するかどうかをゴーレムに問う。


 ユニゾン・ゴーレムは、互いの情報を完全にリンクし、共有できる特殊モデルのゴーレムだ。外で待機している隊は、情報演算と処理を担当している。晴嵐の隣にいたゴーレムから状況を把握し、保留せよと現場に指示。その頃同時刻で、レリーの館に突入したゴーレムたちに情報をリンク。城の地下の情報を求めると、レリーの館に一斉に捜索の手が入る。

 ほどなくして見つかる、大量のライフ・ストーン。隠されていた点を考えれば、今までの非合法な行為のメモや情報だろう。その中身を調べ、城の地下についての地図を発見すると、すぐさま情報が現場へと伝達された。


 別機体の得た情報を、遠隔にいる機体が瞬時に共有できる……それこそが『ユニゾン・ゴーレム』シリーズ最大の強みだ。レリーの館から次々と情報が伝わり、城の地下での戦闘効率が向上する。現場のゴーレムも晴嵐に『尋問は不要』と伝え、さらにここから先は離脱するように進言する。

『保管所』という単語を聞いた瞬間、晴嵐は捕縛した吸血種を蹴り上げていた。先ほどまで静止していたゴーレムも、今度は全く止める気配がない。

 それもそのはず、彼らは知ってしまったのだ。

 レリーの保管していた資料から、レリーがこの城の地下で、何をしていたのかを、正しく。


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