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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第三章 緑の国編

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第三章 ダイジェスト・7

館の主、ムンクスが扉越しに晴嵐たちに話しかけた。従者のフリックスが、直接会うのは控えた方が……とやんわり止めてる最中に、遠慮なくムンクスは戸を開く。警戒心や敵意むき出しの晴嵐に、ポーションで傷を治したと伝えた。

 この世界の未知の薬とはいえ、回復効果は大したものである。勘違いもやむなしの状況でも、今回ばかりは晴嵐が悪者。けれど素直に謝れない彼に、少年は『アルファたちが加減できなかった』と逆に謝る。それでようやく会話になった。


 テグラットが生き残ったのは、晴嵐を待っていたから。他の配下のゴーレムたちに、あの場の監視や生存者を探しているらしいが、報告はない。随分な勢力と感じた晴嵐は『これだけ手駒がいれば、未然に防げたのでは?』と問う。

 ムンクスは首を振った。あのゴーレムは特別な型番らしく、下手に動かせば晴嵐のような誤解を招く。現状をより深く説明するために、秘密をいくつか明かそうとするムンクス。今までの振る舞いが子供のようだと聞くと、吸血種特有の精神についてムンクス少年が語った。


 吸血種は肉体の老化が無い。元の種族から『吸血種』に変異した時の年齢のまま、肉体年齢が止まってしまうと言う。

 その影響で、老いによる不都合を感じることが無い。年を取れば、体力や気力、物覚えなどなど、様々な不具合が生じる。それを感じる事で、精神もまた老いていく。

 しかし若くして……いや、幼少期に吸血種と化したムンクスは、いつまでも遊び盛りの子供のまま。以前の人生で老人だった晴嵐には、分かるような分からないような話だが、何故わざわざ裏路地の子供と遊ぶのか? 理由は『正体を隠し、詮索しないのが普通で、変に畏まらないから』らしい。少年ムンクスにとっては、奔放に振る舞える環境は貴重だそうだ。

だから本気で守ろうとした……一から十まで子供の理屈だが筋は通っている。ようやく晴嵐はムンクスの性格を理解し、二人は和解した。



 ムンクス・ホールは、千年前の戦争で……まだ幼少ながら参戦した少年兵だった。普及の始まった輝金属を用いて、伝令役として奔走していた一人である。

 戦闘中に『悪魔の遺産』による攻撃を受け、瀕死の重傷を負う。その際吸血種へと転生し、その後も好奇心を失わず、ゴーレムの技師として今も権威を持つ人物である。

 と、いきなり正体を明かされても、テグラットは完全に困惑している。ムンクスにしてみれば恒例行事らしく、完全に反応を楽しんでいるようだ。今も役員として顔を出し、子供の感性で周囲を引っ掻き回すらしい。ちょうど晴嵐と城の前で会った日も、会合があったらしい。


 今回の軒の黒幕、レリー・バキスタギスも出席していた会議で、ムンクスはレリー一派に牽制をしていた。これ以上の行動を止めるように、案件に便乗して圧力をかけていた。

 直接逮捕に動かなかったのは、吸血種レリーに対する情のため。

 千年前に発生した『欲深き者ども』と『ユニゾティア』の間で起きた全面戦争。世界の命運を賭けた戦争において、吸血種同士は全員が戦友であり、故に絆は深い。だから……ムンクスは希望を捨てきれなかった。やんわりとした注意でも、千年前英雄だったレリーなら、自ら過ちに気付いて手を引いてくれると……そう期待していたから。

 だが、現実は『圧力がかかる前に人を攫っておき、ほとぼりが冷めるまで待機してしまおう』と、今回の襲撃を誘発してしまった。ものの見事に、英雄は腐り果てていた。


 話を聞く中で、晴嵐は一つ気になる事があった。

 レリー一派が攫った人は、裏路地とはいえそれなりの人数がいた。吸血種が捕食で必要な血液量を考えると、攫った人数が多すぎるように思える。彼がそう質問すると『ここから先は絶対に漏らさないで』とムンクスが前置きする。それは、表向きユニゾティアの常識から隠された、一つの真実が存在していた。

 レリー配下の吸血種。彼らは『千年前の戦争を経験していない』と言う。加えてムンクスは『人狩=吸血種』なのに、殺されて騒ぎにならない理由を聞く。吸血種はすなわち、千年前の英雄に認められ、転生した人物。仮に殺害されれば大きな事件になる。にもかかわらず……裏路地て時々撃退され、時には殺されてもニュースにならないのは何故か?

 即座に晴嵐が答える。『常識とは別の方法で、吸血種を増やす手段がある』。彼の推察は正しく……『ヒューマン限定だが、鼠算式で吸血種を増やせる』特性をレリーは持つと言う。テグラットだけでなく、この情報には晴嵐も戦慄していた。


 吸血した相手を同族と化し、次々と増殖する性質……これは晴嵐の身に覚えがる。終末世界を跋扈した『吸血鬼サッカー』の特性にそっくりと感じた。

 しかし奴らは理性を失う。これでは中間種……そこで彼は思い出す。確か『テティ・アルキエラ』が語った前世に、近い種族が存在していたと。

 晴嵐の世界だけでなく、彼女の前世も関係があるのか? 混乱を隠しきれない中、晴嵐が想像した通りの事を、口にし始めるムンクス。だが執事役のゴーレムが、まるで強引に隠すように遮った。妙だと思いつつも、ひとまずはスルー。大事なのはこれからどうするか……ムンクスは保護した二人に対し、自分の方針を打ち明けた。


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