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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第三章 緑の国編

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第三章 ダイジェスト・1

 今までのホラーソン村を出た晴嵐は、色々と考え事をしながら歩みを進める。

 この世界、ユニゾティアにやって来てから一か月。かつて男が生きていた世界で失われた、人と人との関係性や安堵できる時間に触れ、ホラーソン村を出る事を名残惜しく感じていた。

 自らの過去と照らし合わせ、感じる事、考える事、そしてこれからの事へ思案を向けていた彼の前に、巨大な城壁が姿を現す。聞いてはいたが、いざ目にするとその巨大な城壁が持つ威圧感に圧倒されそうになった。入国審査を受けたが、ハーモニーから教わった単語を使い入国を果たした。


『緑の国』の『城壁都市レジス』に入った晴嵐。都市の作りを観察すると、完全に戦時を想定した設計と男は感じた。ホラーソン村とこの都市の間では、戦闘の記録が少ないそうだが……

 考えながら歩いた男は、城壁都市の路地裏に足を踏み入れてしまった。風通しの悪いその空気は饐えた臭いがする。不快でしかないその悪臭に、懐かしさを感じるのは晴嵐の性根のせいだろうか? 皮肉に唇を曲げた晴嵐から、ひったくりを試みた輩があっさりと捕まる。あまり治安の良くない都市と、迷路のような入り組んだ作りに、晴嵐は苦戦しながらもなんとかポートに辿り着いた。


 ひとまずはハーモニーに近況報告をした所で、肉体が空腹を訴えた。この世界『ユニゾティア』に昼食をとる文化はないが、軽食を出す店ならあるかもしれない。手持ちの保存食で済ませてしまう手もある中、新天地に到着して浮き足立ったのか、晴嵐は良さげな軽食店を探す。通信の要所であるポートで人通りを観察し、後をつけて店に入る。


『とこしえの緑』と言う店は、老エルフの女性が経営する店だった。中の雰囲気も悪くないし、異種族であろうと刺々しい空気もない。適当に初めて見るメニューを注文すると、何故かやんわりと止められた。

 ゲテモノが来ても大丈夫と言う晴嵐。彼の暮らしていた環境はかなり悪く、よっぽどの物でなければ食せると自負していた。そんな彼の予測を嘲笑うかのように……毒々しい紫色のペーストの塗られたパンが、晴嵐の目の前に顕現した。

 見た目だけでなく、その味わいもまた冒涜的な物だった。この地域に伝わる、健康に良い伝統食らしい。悶々としながらも感触しきった晴嵐に、店長は生暖かい目線を送る。


 気恥ずかしく思いつつも、人柄は悪くないと判断した晴嵐は、店長へ宿屋について尋ねる。いくつかの候補地を絞った晴嵐は、やや裏路地寄りのガラの悪い宿屋を使う事に決めた。

 表通りの宿屋は料金が高い上に、この国か地域の特色なのか、エルフの自民族至上主義レイシストが多い傾向にある。劣悪な環境で生きて来た晴嵐は、ちらりと見た裏路地の空気の方が馴染むとも思えた。

 下見を終えた後、決めた宿屋を目指す途中――背後からつけてくる気配を晴嵐は感じ取った。相手の出方を伺うが、どうにも素人臭い。わざと行き止まりに足を踏み入れると、へらへらと嗤うエルフの若者三人衆が現れた。


 手に刃物こそ持っているが、構え方は完全に素人。ただのカツアゲに来たチンピラと判断し、相手の出方を想像しつつ潰しに入る。

 三人で同時に襲われては不利。リーダー格の若造を煽りつつ、後ろに控えた仲間の方へ硬貨の詰まった袋を投げてやる。リーダー格が手を出したところでカウンターを食らわせ、気を取られた隙に一瞬で見張り役をダウンさせる晴嵐。リーダー格の男に『バラしたら今回の非でない拷問をする』と強く脅しをかけ、口封じも忘れずに全員の意識を刈り取ってその場を去った。

 やりすぎに思える晴嵐の行動は、あの手の輩の性根を知っているから。甘い顔をしたり、下手に出ればどこまでも付け上がる。無事に宿で一泊したあと、彼は自分の目的を果たすために、城壁都市レジスを観光する。


 彼の目的は史跡を探し、この世界の『千年前の痕跡』を探る事。所々にある『地球文明の面影』の正体を、彼は知りたがっていた。

 それはそれとして……純粋に晴嵐は驚きや発見があった。崩壊した世界を生きて来たのもあるが、初めて肉眼で目にする西洋風の城に胸が高鳴った。

 まだ現役らしいその城の周辺を巡り、じっくりと観察の目線を注ぐ。ただあまりに夢中になり過ぎたのか、警備のエルフから注意を受けた。

 旅人として当たり障りないやり取りを交わす。どうやらこの城は、この地域のお偉いさんが来る場所らしく、旅人風情が入れる場所ではないらしい。立派な城門に、英雄の青銅像などなど、テティからの情報の裏を取れた。

 その時――彼の背後から気配がした。

 かつて晴嵐の世界を終わらせた奴ら……『吸血鬼サッカー』に似た気配の誰かを。


 警戒心どころか、とびかかる一歩手前まで行った晴嵐に……その少年が無邪気に話しかけてくる。その声でようやく、この世界は崩壊した世界と違うと再認し、何とか殺意を抑え込んだ。

吸血鬼サッカーと気配がそっくりな『吸血種の坊や』は、殺意を抑える晴嵐に対しても、態度を崩さず無邪気な子供のように話しかけてくる。一切警戒を解かずにその少年『ムンクス』が、城の中に顔パスで入っていく様子を見送った……


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