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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第二章 ホラーソン村編

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第二章 ダイジェスト・5

『緑の国』へ向かうと決めた晴嵐は、早速旅の準備に取り掛かった。まずは交換屋トレーダーだった過去を生かし、小物の修理やジャンクの引き取りを始める。旅をするには金と道具が必要だ。時にはジャンク品を引き換えに、小物の修理を続けて、旅路に着々と備えていく晴嵐。シエラなど知った顔から始め、こつこつと集めていく。

別れたオークたちにもメールを送り、面白い話があれば聞きたいと、メッセージを送った。あまり期待はしていないが、晴嵐は使える物は使う主義だ。

 その時、ポートにいるハーモニーが目に入った。日頃明るい彼女だが、今回は明らかに元気がない。どうやら親子関係がこじれているらしい。息の詰まる空気を嫌って、彼女は『緑の国』を飛び出してしまったと言う。晴嵐が『緑の国にこれから向かう気だ』と告げると、否定的な反応を見せた。

 それでも行く気だと伝え、ついでに親の様子を見に行っても良いと晴嵐は言った。引き換えに『緑の国』で注意すべき事は無いかと聞き、彼女からこれから向かう国の様子や空気の情報を集める。


 一方そのころ、晴嵐と別れたオーク二人も旅立ちの気配を見せていた。『亜竜自治区』出発前に触れたポートで、晴嵐のメッセージを受け取る二人。彼の態度の変化に何とも言えない感想を漏らす。

彼らオーク二人は、別々の地域に向かおうとする。この地域のある武人に助言を受け、ラングレーとスーディアは一度、距離を置いた方が良いと告げられた。少し思うところがあったのだろう。名残惜しく感じつつも、ラングレーは『ドワーフ山岳連邦』に、スーディアは『聖歌公国』の中心部に向かうと言う。

そんな中スーディアを呼び止める『亜竜種』の武人が現れる。亜竜自治区では闘争をスポーツ化する魔法の公共施設があり、スーディアとの手合わせを所望した。長話で別れる機会を失うのを嫌がり、ラングレーは一足先に旅立つ。残されたオークの若者は、亜竜種側の挑戦を受けて立った。

 盾の腕甲をボクシング・グローブの代わりにして、インファイトを仕掛けてくる亜竜種の戦士。鍛え上げられた肉体と、尻尾も交えた格闘戦は亜竜種特有の物だった。この世界『ユニゾティア』において、亜竜種は近接戦闘に優れた種族。スポーツ感覚で鍛錬も欠かさない彼らは、スーディアを苦しめる。

追い込まれたオークの若者が、見よう見まねで亜竜種の技を繰り出す。しかし未熟なまま発動したためか、不意は付けたが有効打にはなり得ない。最終的に敗北したスーディアだが、相手の亜竜種は『見込みがある』と、スーディアへ亜竜種の技を伝授した。


 そして色々あって一か月後……晴嵐は『ホラーソン村』を出立する日を迎えた。なんだかんだで世話になった『黄昏亭』の亭主や、宿屋のロボットめいた存在、ゴーレムの従業員に礼を述べる。宿泊の感想を聞かれた晴嵐は戸惑いつつも、真剣に考えて解答をする。従業員の二人が軽口を交わす中、防音が欲しいと晴嵐は返した。


 話し込んでいると、まだ眠っていたハーモニーが起きてしまった。目を覚ます前にこっそりと出立する予定だったが、上手くいかなかったらしい。湿っぽい空気を嫌った晴嵐は、淡々とハーモニーと会話する。相変わらず人懐っこいハーモニーだが、晴嵐は胸の中で黒く呟く。彼女の親の様子を見てくる約束と引き換えに、ただ情報源として利用しただけに過ぎない……なのにどうして無防備なのか。晴嵐は居心地が悪い。


 晴嵐を心配する若い女エルフに対し、何が起きても自分の責任と割り切る晴嵐。『緑の国』に行くと聞き、亭主が『黄昏の魔導士に会ったらサイン頼む!』などと戯言を抜かす。天文学的確率とツッコミを入れられ、笑いに包まれる一団。誰かに見送られながらの出発を懐かしく思いながら、晴嵐はついにホラーソン村を旅立つ。


 なんとか徒歩でも行ける距離に『緑の国』は存在する。

 この世界の移動手段『ゴーレム車』に乗る手もあったが、まずは自分の目で道中も確認したいと、朝早く晴嵐はホラーソン村を出発した。

 背後から走り抜ける『ゴーレム車』に道を譲り、前の世界との違いや、今まで見て来たこの世界の事を回想する晴嵐。隣にはスタート地点であり、まだまだ謎を残す『グラドーの森』が広がる。

 この森についての情報も、緑の国視点なら新情報も、期待出来るかもしれない。『悪魔の遺産』や共通の言語、所々で合致する地球文化との接点……不可思議な事はいくつもあり、晴嵐は考えずにはいられない。


 未だに終末世界で生きて来た感覚を、捨てきれない晴嵐。真実を探す最中で、命の危険に晒されるかもしれない。それでも男は、ビビッて縮こまる事を良しとはしなかった。

 歩みを止めれば、考える事をやめれば、簡単に人間は死んでしまう。

いつ理不尽が降りかかるか分からない。安泰はこの世に存在していない。

だから晴嵐は考える。だから晴嵐は歩き続ける。未知の世界に触れながら、それでも臆せず進み続ける。

 確かな意志を胸に、晴嵐は緑の国を目指して歩き続けた。


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