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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第二章 ホラーソン村編

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第二章 ダイジェスト・4

 ユニゾティアにおける千年前は、極めて大きな転換点だった。

 本来なら『魔法』は、輝金属無しに発動できる秘術だった。『欲深き者ども』が行った何らかの妨害で、既存の方法で魔法が使えなくなってしまった。それに対抗するために『輝金属』が作られたのだが、この金属は『五英傑』と大きな接点がある。


『五英傑』とは、過去の戦争において多大な功績を上げた五人の英雄の事。

 

 バラバラだったユニゾティアの民族を『誤解のない相互理解』の異能力を使う歌姫。自らの命を削って世界連合を作り上げ、ついに欲深き者どもを打ち倒した『救世の歌姫』


 すべての吸血種の始祖にして、無制限に敵を切り続けられるという『無限刀』の保持者。弱気を助け悪を切る女傑の武人。認めた戦士を吸血種として迎え入れ、前線で敵を切り続けた『無限鬼むげんき

(吸血種は『無限鬼』によって、死に瀕した者を吸血種として蘇らせる。故に吸血種は過去の戦争の英雄であり、ユニゾティアにおいて敬愛される。晴嵐には不愉快な事実だが受け入れた)


元型輝金属アーキメタル・レーヴァテイン』――すべての輝金属の元型をこの世界に持ち込み、本人も『欲深き者ども』が行使した『測定不能の異能力』を行使できる。今も『緑の国』で存命の吸血種……『黄昏の魔導士』

(余談だが、晴嵐が宿泊した宿『黄昏亭』のマスターは、この『黄昏の魔導士』の大ファンだったりする)


『異能力を止める異能力』を用いて、欲深き者どもの『測定不能の異能力』を封じ込め、戦争終結後もユニゾティアのために活動を続けた英傑。ポートやライフストーン、さらに種族『ゴーレム』の人権運動にも積極的に参加した『ミノル』


 五人の歴史に残る英傑が、ユニゾティアを救ったと言う。これでユニゾティアの一般常識はおおよそすべて話せた。自分の責任を果たせたと安堵するテティ。しかし晴嵐は話を終わらせなかった。テティの語るユニゾティアの史実は長話だったが、すらすらと流れるような語り部は、晴嵐へ語り伝える為に身に着けたとは思えない。

 彼がそう質問すると、ちょうど良いとテティは雰囲気を変えた。そのまま彼女は与太話として、自らの前世を語り始める。


 彼女の前世は成り上がり者の父を持つ、妾の娘だったと言う。世界観はユニゾティアに近いそうだが、魔法は表向き伏せられ、晴嵐の世界のような技術発展も無かったらしい。吸血種に近い種族『ヴァンプ』と、何か真龍種に近い超越的な人物が一人いたようだ。

 ユニゾティアとも、晴嵐の暮らしていた世界とも思えない世界で、テティは外交官として国に貢献していた。彼女が話し上手な事も、歴史について順序良く語れるのも、そして作り話もうまい所も……外交官として勤めていた前世が影響したのだろう。箸休めの話題を挟みつつ、話は彼女の大きな転機について焦点が移った。


 彼女の国で、ある一派が古城を占拠したらしい。最初は内乱、クーデターと思われていたが、その正体は『ヴァンプ』と呼ばれる種族だった。彼らは自分たちを『進化した人類』と主張し、長寿命を持ち、人間を『ヴァンプ』へ変える能力を持つ彼らは、その力をチラつかせて、テティの国の人材を引き抜いていった。

まるでこの世界の自民族至上主義レイシストのような主張に、晴嵐もテティもうんざりした。この『自らの種族が一番上等である』思想は、知性があれば誰であれ発症する可能性があるらしい。嫌な共通点にうんざりしていたが、途中からは彼女のノロケ話に変わった。


 この新種族と対立したテティの国に、偶然だが特殊な種族がいた。超越種として存在する『彼』は、どれだけ傷つこうが再生する不死性を持つ。人間に対し上位種と名乗っていた『ヴァンプ』は、自らの種族以上の存在を容認できない。積極的に絡んで来るヴァンプに対し、この超越種はブチ切れた。テティは最初『彼』を利用するつもりで接触したが、特異な彼の精神性に惹かれていく。戦争は痛み分けに近い形で終結し、ヴァンプの国も建国されなかったが、テティのいた国も崩壊してしまった。

 混乱に乗じてテティと『彼』は駆け落ちし、その後は幸福に暮らしたらしい。彼女も『夫』と呼び、テティが天寿を全うするまで『彼』も寄り添っていたそうだ。


 一人の人生を聞き終えた晴嵐は、もう一度己を考え直す。

 生きる事だけを重視して、生きる意味を持たず前世を終えた晴嵐。今もなお生きる意味を特に見いだせず、死んだ後の続きをする男。それが晴嵐の正体だ。

 その彼は……今を生きる甲斐として、この世界の歴史の真実を欲し、探り、求めるために『ユニゾティア』を旅する事を決める。


 テティからの話を聞いて、この世界には別の文化、別の歴史がある事を知った。

 だがその中に……妙な所で同じ所が見受けられる。どう見ても近代銃器としか思えない『悪魔の遺産』の存在といい、吸血鬼サッカーと吸血種の存在といい、気になる所が多すぎる。

 まず最初に晴嵐が目指すのは『緑の国』……現在晴嵐たちがいる『ホラーソン村』・『聖歌公国』と対立中の国である。今聞いた話は『聖歌公国』寄りの可能性がある。相手側視点も知るべきだと、危険を承知で晴嵐は『緑の国』を目指すと決めた。


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