23.《レクスの気持ち》
今回、レクス視点!
◇ ◇ ◇
(フーヤ。俺にはお前が何を考えているのか、分からないよ)
レクスは、目の前を歩いている親友を、唯一の友の背中を見つめる。
フーヤは、ついさっきグズデス先生を殺した。
あっという間の出来事でレクスにとって実感はない。
それ以前に、攻撃動作さえ見せなかったのだ。
しかし、フーヤがなんらかの方法でグズデス先生を殺したのは事実である。
レクスは、頭だけとなったグズデス先生を思い出す。
(全然、なんの利益にもならないような、どうしようもない先生だったのは知ってるけど...............他に方法は本当になかったのだろうか?)
レクスは、フーヤの顔をフーヤの後ろから盗み見る。
その表情は、いつもと同じように何を考えているのかさっぱり分からない。
しかし、どこかいつもと違うように見える。
(まあ、フーヤのことが分からないのはいつも通りだな......出会った時も変なやつだったし)
レクスは出会った時のことを思い出す。
◆ ◆ ◆
(帰ってもいいだろうか...............)
レクスは、好奇の目にさらされながらも、必死に耐えて魔法学院の中を歩いていた。
今日は、入学式。
レクスは、予想していたこととはいえ、注目されまくっており、閉口していた。
しかも、話しかけられるわけでもなく、ただ見られ、こそこそと噂話をされるのには嫌気がさしている。
さっさと帰りたい。
それが、今のレクスの願いであった。
しかし、それは当然、許されない。
社交界のパーティーに参加しているときのような、居心地の悪さを感じつつも、レクスは1年Bクラスにたどりつく。
「まあ、Bクラスなの?」
「落ちこぼれなのよ。きっと」
「でも、うまく取り入れば...」
などの会話が聞こえたが、無視し、レクスはクラスに入る。
クラスの中は、いくつかの集団が既に出来上がっていた。
そもそも、貴族が多い魔法学院内では、社交界で既に出来上がっているまとまりでいるやつの方が多いだろう。
もちろん、平民もいるにはいるが、レクスがその輪に混ざるのはお互いの身分的にも難しい。
となると、レクスは必然的に一人でいるしかなくなる。
皆、レクスに興味はあるようで、視線が集まったが話かけてくるやつはいないようだ。
(じゃあ、話に聞いていた通り、なぜか人のいない窓際の方の席で一人でいようかな......)
そう思い、レクスが窓際の席に視線を向けると先客がいた。
薄い銀髪に、色白。
氷のような瞳の少年であった。
そして、その少年は他の人が、友づくりに必死になっているにも関わらず、無表情で紙に術式らしきものを書きなぐっていた。
どう見ても、クラス内で異質で浮いている。
パタッ
その少年の学院生徒証が机から落ちる。
しかし、気付いていないのか拾う気配がない。
レクスは、流石に拾ってあげようと近づき、学院生徒証を拾い上げる。
(......フーヤ=ロイホード?............それって、確かロイホード家の6男だったよな?.......................なぜか社交界に姿を見せなく、兄弟に話を聞いても変わり者の一点張りで、一時期本当にいるのかどうかさえ、疑われた...............)
レクスは、そんな情報を思い出しつつも、学院生徒証を差し出して、話しかける。
「落ちてたよ」
フーヤは、顔も上げず術式を書きなぐりながら言った。
「ありがと。その辺の机の上、置いといて」
フーヤのこの態度に少しカチンときた、レクスはさらに話しかける。
「人が親切に拾ってやったのに、その態度はなんだ?だいたい、さっきからなにをやっている?」
「見て分からない?魔道具の術式考えてるんだよ」
フーヤの方も、作業を邪魔されてイラッときたのか、顔を上げる。
二人の視線が、初めて合う。
(......流石に気付いたかな......俺の正体)
レクスはそう思ったが。
「そうだ。どうせなら、君の意見も聞かせてよ」
フーヤの口から、出たのは予想外の言葉だった。
「えっ!?」
(知ってて言ってる?............いや、これはもしや知らないのか?)
レクスの予想を肯定するかのように、フーヤは言葉を続ける。
「そういえば、君の名前聞いてなかった。これまで、社交界とか面倒だったから、礼儀の講義もバックレてろくに出てなかったし、礼儀も常識も知らんけど。名前くらいは、聞いておいたほうがいいよね」
(本当かよ......本当に知らないのか............)
レクスは、驚きつつも答える。
「レクスだ」
「そうか、こちらはフーヤだ。礼儀上等みたいなとこあって礼儀とか常識とか全然ダメだけどよろしく。それで、この術式なんだけど............」
◆ ◆ ◆
「ようやく、完成したよ!ありがとう!」
フーヤが嬉しそうに言う。
「...どういたしまして」
(...俺、疑問に思ったこと質問しただけなんだけど......勝手になんか閃いてたし......俺、居なくてもよかったんじゃ.........)
「あ.......忘れてた」
フーヤの顔が少し青ざめる。
「どうかしたのか?」
レクスが聞くと、フーヤがポツリとつぶやいた。
「兄さん達と約束した、友達づくりするの忘れてた。どうしよ、怒られる」
フーヤが、どうしよ、どうしよ、とつぶやき続ける。
「せっかく、普通の学院生活を送るために頑張ったのに......どうしよ、本当にどうしよ」
(いや、あの態度では流石に、普通の学院生活は送れないだろ.........)
そう思いながらも、レクスは言ってみた。
「俺じゃダメか?友達」
「えっ...............本当にいいの?こんな社交性とか常識とかろくにないやつで?」
「いいに決まってるよ。当たり前だ」
(...それに、俺も興味が湧いてきたんだよ.........フーヤ=ロイホード...一緒に居たら楽しそうかなって......)
その日から、二人は一緒に学院生活を送るようになったのである。
◆ ◆ ◆
(...まったく、今思い出しても変なやつだよな......)
レクスは、出会った時のことを思い出し終わりながら苦笑する。
そして、同時に先ほどのフーヤの行動が頭に浮かぶ。
(...なんで、グズデス先生を殺す決断をしたのかなんて分からないけど.........フーヤの様子を見るに、必要なことだったんだよな......................まあ、フーヤを失うわけにはいかないし............)
レクスは、自分の考えを、歩きながらまとめていく。
(......とりあえず、この件をさっさと片付けよう......黒いローブのやつらを全員捕まえて............その後に、グズデス先生は...............行方不明ってことにでもしとくか.........推し通せば、なんとかなるだろ............そのあたりは、揉み消しておけば.........)
さらっと恐ろしいことを思いつきつつも、レクスはさらに考えを進めていく。
(...フーヤ......俺は、お前がとても優秀でこの世界を変えてしまえるような素晴らしい人物であることを確信している......だが、同時にこの世界を危機にさらす可能性を持つのもお前だと思っている............)
レクスは、決意に満ちた表情を見せる。
(だから、確かめさせてもらうぞ...フーヤ...お前がこの世界にとって利なる者になるか害ある者になるか......親友として...そして、この家名にかけて...)
◇ ◇ ◇
次回投稿は、日曜日になりそうです。
ところで、レクスって何者?
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