運命と宿命
かつて自分の腰に携えていた愛剣も、今では彼の手中に収められている。
「私が...剣を振るっていた意味……あったの、かな...?」
朦朧とする意識の中、今までの剣士としての日々、彼と過ごした時間が走馬灯のように駆け巡っていく。
剣士として生きる
これが私の運命であり、宿命。
死ぬ寸前まで、愛剣と共に戦い続け、死ぬ瞬間も愛剣と一緒。
...それが私の人生、のはずだったのに。
彼が、変えた。
変えてくれた。
運命なんて...宿命なんて関係ない。お前はお前として生きればいいんだ。
私を救った、あの言葉。
今でも貴方は、そう思ってくれていますか?
届くはずのない言葉を、心の中で必死に投げかける。
変わった。
変わってしまった。
私を変えた彼は、変わってしまった。
もう、以前の彼ではない。
私の愛剣を振るい、人の生命を一瞬で奪う。
それが、今の彼。
愛剣は、奪われたのだ。彼に。
私の愛した剣を、愛した人が奪っていったのだ。
全てを賭けた勝負……。私は彼を手にかける事を躊躇った。
その結果がこれだ。
自分の甘えが招いた結果を、今更どうしようも出来ないが、あの瞬間の後悔は忘れない。
敵。
彼は、私の敵となった。
斬るべき相手。
殺すべき相手。
なのに...。
私にとって、彼は。
愛すべき相手。
許すべき相手。
私は自分の運命を、この世に生を受けて初めて恨んだ。
初めて「涙」というものを零した。
運命とか、宿命とか、関係なく。
彼を愛せたら...。
そしたら、私は幸せだったのかな。
自嘲気味な笑みを浮かべ。
彼との幸せだった日々を思い出しながら。
ゆっくり。
ゆっくりと。
私は目を閉じた。
私の視界が完全に塞がる前、私を斬ったはずの彼が泣き崩れるのを見たのは...
私の妄想か、それとも____。
初投稿なので肩慣らし程度に...。
10分とかそれくらいで書いたやつなので、少々低クオです。
敵国の剣士と恋に落ちてしまった誇り高き女剣士。
彼女は愛する彼と対峙し、1度は彼を殺すチャンスを得るも、愛故に剣を突刺すことを躊躇い...
彼女が愛した剣士は 愛する 彼女の亡骸を見て何を思うか__。