大ジャンルとジャンルの中央値
前回は、『小説家になろう』全体で総合評価のポイントがどのように分布しているのかを見てみました。更に2016年5月24日に実施されたジャンル再編以後に初投稿された小説、異世界転生と異世界転移のみ、更にジャンル再編後の異世界転生と異世界転移のみも合わせて見てもらいました。大体予想通りのところもあれば、予想外のところもあったでしょう。
さて、今回皆さんに見てもらうのは、中央値です。例えば、ある集団に所属する数値が5つあったとして、その真ん中である3つめを取り上げるやり方です。その集団の数値が、0,5,10,500,1000とすれば、10が中央値ということになるあれです。平均値は平均値で役立つのですが、『小説家になろう』へ小説を投稿している作者にとっては、まず自分の小説が真ん中よりも上か下かを知りたいと思いますので、こちらから発表したいと思います。
この『小説家になろう』には、ジャンル再編後に大ジャンルとジャンルができました。そして、どういう判断でこのような分類になったのかはわかりませんが、大ジャンルの下にジャンルがいくつかぶら下がっています。ということで、最初に大ジャンル、次にジャンルの中央値を見ていくことにします。
最初に見ていただくのは、約45万件全体の大ジャンル毎の中央値です。縦軸はジャンル、横軸は中央値となるポイントです。念のために言っておきますが、これは0ポイント小説も含んだ結果です。
恋愛の大ジャンルが最も大きいですね。『小説家になろう』ではファンタジーが強いという印象がありますから、そういった意味では意外とも言える結果です。ただ、恋愛という大ジャンルもかなり存在感がありますので、この結果に違和感はありません。次にファンタジーが続いているのはある意味当然と言えるでしょう。その後はどうなるのか予想がつきませんでしたが、SFの中央値が高いですね。そうしてその他と文芸が続いています。
こうやって眺めてみますと、それ以外で語るところは見当たらないですね。順当だと思います。
では次に見ていただくのは、ジャンル再編があった2016年5月24日以後に初投稿された小説に関する表です。
先ほどの約45万件全体のときよりも中央値の値が低いですね。しかし、ジャンル再編後から9ヵ月しか経過していないことを考えると、ノンジャンル以外はむしろ0ポイントではないだけ健闘しているとも言えます。
そしてやっぱり恋愛が強いようです。次点でファンタジーと続き、文芸、SF、その他は仲良く2ポイントです。1年未満で多くの小説がポイントを付けてもらっていると見るか、それともこの程度しか評価されていないと見るかは微妙なところですね。
では次に、異世界転生と異世界転移の小説について見ていきます。人気の高い小説が集まっているようですが、中央値はどうでしょうか。
おお! これはまた恋愛がとんでもないことになっていますね! ひとつだけ群を抜いて中央値がすごいことになっています。私も初めて見たときは、集計するときの条件を間違ったのではないのかと確認しなおしたくらいですよ。思わず、「え? うそ? え?」と声を出してしまいました。
そして、恋愛があまりにもすごすぎるので霞んでしまっていますが、ファンタジーとノンジャンルも中央値が高いです。そして、さりげなくファンタジーがノンジャンルに負けてしまっているのを見て少し衝撃を受けました。ノンジャンルは旧ジャンルのごった煮みたいなものなので、もちろんピンからキリまであるでしょう。しかしそれにしても、中央値がこんなに伸びるとは思いませんでした。
そして残る文芸、SF、その他の中央値は約45万件全体のときと値がほとんど変わりません。つまり、この3つの大ジャンルでは異世界転生と異世界転移の小説は、他の小説と似たようなポイントしか付けられていないということですね。逆に中央値の跳ね上がった恋愛とファンタジーは異世界転生と異世界転移の小説は、読者から積極的にポイントを付けてもらえているということでしょう。
では次ですが、今度は異世界転生と異世界転移のキーワードチェックがされていて、尚かつ2016年5月24日以後に初投稿された小説に焦点を当てます。これは一体どうなっているでしょう。
おや? 意外と普通ですね。文芸、SF、その他などは中央値が2ポイントです。ジャンル再編後に初投稿された小説に関しては、まだ中央値が跳ね上がるほどの評価はされていないようです。
そして面白いのは、ここに来てようやくといいますか、ファンタジーの大ジャンルの中央値が最も高くなっています。恋愛との差がわずか1ポイントではありますが、それでも一番であることに変わりはありません。何にせよ、相変わらず恋愛とファンタジーが強いことには違いないですけどね。
このように大ジャンルの中央値を見ていきますと、全体的に恋愛に対して積極的に評価がされているようです。異世界転生と異世界転移など51ポイントが中央値になるくらい全体的にポイントが付けられているんですよね。去年の中央値を知っているだけに、まさかここまで高くなるとは予想外でした。
それ以外では、ジャンル再編後に限定すると中央値は全ての大ジャンルで低下しています。これはやはり、まだ9ヵ月しか時間が経過していないからなのではと思っています。中央値が上がるのはしばらく先のことでしょう。
一方、転生転移のみに限定すると、中央値は恋愛とファンタジーを中心に上昇することがわかりました。てっきりファンタジーが圧倒的に高いと思っていただけに、恋愛の強さには驚きましたけど。
それにしても、中央値だけを見ていますと、ファンタジー1強という状態は完全に崩れ、恋愛との2強になっていることがわかります。中央値から見た場合、ジャンル再編はある程度成功したと言えるのではないでしょうか。
大ジャンルの次はジャンルの中央値を見てもらいます。ノンジャンルを除いて全部で20種類もあってなかなか細かいですが、なかなか面白い結果になっていますよ。
最初に見ていただくのは、約45万件全体のジャンル毎の中央値です。縦軸はジャンル、横軸は中央値となるポイントです。念のために言っておきますが、これは0ポイント小説も含んだ結果です。こんなふうになりました。
先ほど大ジャンルを見てもらいましたから、どの系統のジャンルが高そうだなということは漠然と予想していましたかと思います。
異世界の中央値が高いことはまぁ予想できたかと思います。逆に現実世界の中央値は低すぎるように思えますが、大ジャンルである恋愛の中央値が16ポイントであることを考えると、異世界の値がむしろ突出しすぎなんですよね。
そして、意外だったのはVRゲームの中央値です。異世界に続いて42ポイントってすごいですよね。大ジャンルSFの中央値を引き上げているのは間違いなくこいつです、と言おうとしたんですけど、よく見ると宇宙、空想科学、パニックのどれもが大ジャンルの中央値と大して変わりません。小説の数が少ないのかもしれないですね。
密かに私が中央値の伸びを期待していたハイファンタジーはぱっとしないです。ローファンタジーに至っては他のジャンルに埋もれてしまっています。前回のデータ分析でもそうでしたが、たくさんの小説が集まり読者もたくさんポイントを付けていても、母数が大きいとその分だけ評価の低い小説も増えますから、それが中央値を下げているのでしょう。
文芸の大ジャンルに所属するジャンルでは、歴史が突出していますね。旧ジャンルでもそうでしたが、投稿される小説の数は少なくても読者がしっかりとポイント付けてくれるからだと思います。
最後にその他の大ジャンルに所属するジャンルですが、エッセイが意外に高いです。リプレイも同じ値ですけど、こちらは投稿小説の数が少なすぎるので、むしろ無難な結果となっていることが驚きでした。
こんなところですね。異世界の中央値の高さにも驚きましたけど、VRゲームの値の方がもっと驚きました。
では次に見ていただくのは、ジャンル再編があった2016年5月24日以後に初投稿された小説に関する表です。
ジャンル再編後に初投稿された小説は、一体どのくらいが真ん中なのか見てみますと、衝撃を受けるような数値はないですね。異世界、VRゲーム、エッセイの3つが特に高いです。つまりそれだけポイントを付けてもらっているということなんですけども、そうなるとVRゲームが一番支持されているということになります。このグラフを見る限りでは、異世界を押さえてVRゲームが一番読者に受けているとも言えます。
そして、この表を見て驚いたのが、エッセイの中央値が異世界と同じだということです。VRゲームのときの論法を使うとそれだけ流行っているということになるんですが、どちらかと言いますと、とりあえずポイントを付けてもらいやすいというのがぴったりだと思います。それで同率2位まで上がってくるのですから大したものですが、皆さんはどうでしょうか?
他に言うことがあるとすれば、ホラーの中央値ががんばっているということくらいでしょうか。他はこんなものだと思います。
では次に、異世界転生と異世界転移の小説について見ていきます。人気の高い小説が集まっているようですが、中央値はどうでしょうか。
そういえば、大ジャンルの中央値を見たときに、恋愛の値だけ51ポイントやたらと高かったですよね。それを考えますと、この異世界と現実世界の高さは納得できます。ただ、納得はできるんですが、やっぱり驚きますよね。特に現実世界の中央値の高さに。今までぱっとしなかった子がいきなり輝いた感じがします。ああ、チートものそのまんまじゃないですか。
そして、更に驚いたのがコメディーの中央値の高さです。君こそ今まで全然目立たなかったのに、異世界転生と異世界転移になった途端にやる気を出してきました。異世界とほとんど変わらないなんてすごいですよね。しかし、コメディーがそんなに頑張っているにもかかわらず、大ジャンルの文芸の中央値はぱっとしませんでした。つまり、コメディーの小説の投稿件数も多くないということなのでしょう。
他には、ハイファンタジーが高いのは当然として、歴史とエッセイも中央値が高めということが上げられます。特にエッセイですよ。異世界転生と異世界転移のエッセイって何それ? と思って検索をかけてみたところ、小説の書き方講座や投稿小説の傾向と分析がたくさん出てきました。どうも異世界転生と異世界転移に関係するからキーワード設定をしているみたいです。条件設定の仕方に問題があるのかもしれませんが、小説そのものが出てこなかったのは少し残念です。
では次ですが、今度は異世界転生と異世界転移のキーワードチェックがされていて、尚かつ2016年5月24日以後に初投稿された小説に焦点を当てます。これは一体どうなっているでしょう。
1年前にやった旧ジャンルでのデータ分析では絶対に実現しなかった、ハイファンタジー、コメディー、エッセイの中央値が並んでいます。というか、エッセイって粘り強いですね。どんな条件で絞り込んでも、大体10ポイントから17ポイントで安定しているんですよね。つまり、今も昔も、どんなキーワード設定がされても安定してポイントを付けてもらえるということです。
それと、1つ前のときに書くのを忘れていましたが、異世界転生と異世界転移になるとVRゲームの中央値が低くなりました。他のジャンルと比べるという相対的な面もある感想なんですが、VRゲームというジャンルは異世界転生と異世界転移との相性が良くないのかもしれません。
いかがでしたでしょうか。大ジャンルと似たような傾向になるかなと思っていましたが、一部のジャンルは中央値が突出していましたね。具体的には、コメディー、VRゲーム、エッセイです。しかしそれでも、大ジャンルの中央値にほとんど影響を与えていないところが面白かったです。
特に作者の皆さんは、自分の投稿した小説が中央値よりも上か下かがこれでわかったかと思います。わかったことが良かったのかはわかりませんが。
今回はここまでにしたいと思います。