異世界
僕は何でこんなところにいるのやら?
ある古民家の縁側でお茶を飲みながら考えていた。
事のいきさつはこうだ。
僕は登山に出かけたんだが、急に雨が降り出したのでこの家に雨宿りをさせてもらおうと頼もうとしたんだよ。
そしたら一人のお爺さんが現れて、僕に駆け寄ってきて何か話しかけてきた。
爺さんは酷く慌てているらしく、意味不明な事を喜んでるのか泣いてるのかよく分からない勢いで僕に訴えかけてきた。
「とにかく後は頼んだ」みたいな事を言って飛び出してしまったのだ。
…そういうわけで僕は今この家に留まっているのだ。
しかしあれから一週間も経つのに一向に戻ってこない。
もう戻ってこないんじゃないかな?とも思うが、僕は人一倍責任感が強いので頼まれたら最後までやり遂げないと気が済まないのだ。
…いや、それは嘘だ。
いくらなんでも一週間もこんな所に留まるなんてどうかしてる。
そう思って爺さんが出て行って暫く経ったらすぐ外へ出たさ。
そしたら驚くことにさっきまで山にあったはずの家が街中に建っているんだよ。
しかもこの街、人の気配が全くしない。
その上霧がかかっているし、苔やら雑草やらが生い茂っていてまさにゴーストタウンそのものだった。
その街をウロウロしてしばらく徘徊してみたが、行けども行けども人も動物も、虫一匹すら見つからなかった。
…急に不安になったので結局あの家に戻る事にしたのだ。
この家には冷蔵庫にたっぷりと食料があったし、庭には見た事のない木の実がなっていて、恐る恐る食べてみるとジャガイモとサツマイモの中間のような味がした。食感はバナナに近い感じだったので生でも食べられた。
もしかしたらあの爺さんはこれを主食としていたのかもしれない、従って食糧に困る事はなさそうだ。水も水道があったし、井戸水もあった。
なので暮らしていくのに別段困る事はない。
ところでこの家には自分以外誰もいないはずなのに、たまに物音がするのだ。
不気味に思って恐る恐る調べてみるも、誰も見つからない。
…まああんまり拘ってもしょうがないと思って気にしない事にした。
僕はどっちかというと細かい事に拘らない性格なのだ。
そうして一か月ぐらい経ったある日、縁側で昼寝をしていたら急に金縛りにあった。
そしてうっすら目を開けると、白い小袖を着た少女が立っていた。
びっくりして起き上がろうとするも体が動かない…。
少女は静かにほほ笑んだと思ったら何処かに消えてしまった。
そのまま僕は再び眠りについた。
再度目が覚めると「あれは夢だったのかな」と考えてあまり深く考えないようにした。
今思うと、あれは座敷童子に似ていたような気がするが、僕は神奈川県の箱根山に来ていたのだからそれは違うだろう。座敷童子は東北地方に出る妖怪だ。
しかし今この家は箱根山ではなく、ゴーストタウンの中にあるのだ。
何が出て来ても不思議じゃない。
ちょうどその時だった、ガラガラと玄関から人が入ってきたのだ…。