幽閉聖女の小言
ああ、今日もですか。
筆頭侯爵令嬢がまた、私に文句を言わせるために新しい噂をでっちあげたようです。
幽閉部屋の窓から差し込む光を眺めつつ、私は小さくため息をつく。
「黙ってられないんですか?」——いやいや、あなたが毎回やらかすから私も答えるしかないのですよ。
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侯爵令嬢は、汚い手で権力を簒奪した女です。
かつて30人がかりで暴漢に私を襲わせたとあの日から、彼女の口は止まらない。
毎回、ありもしない悪行を私のせいにして大騒ぎ。
どんな理由つけたってそんな外法使った人間が尊敬されるわけないでしょ。
「聖女が毒を盛ったらしいわ!」
そんな報告を耳にするたび、私は小声で笑うしかない。
毒? 飲ませていませんよ。
私は悪役令嬢のあなたと違って嘘をつかないので、事実しか合わないもの。
その話は、あなたがかつて公爵令嬢に出した偽手紙と、敵対する側妃の陰湿ないたずらの組み合わせで作られたものです。
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それにしても面白いのは、私がこっそり飛ばす魔法伝書鳩の存在。
一羽飛ばせば、大抵の嘘は暴かれてしまう。
「聖女が女王陛下に暴言を吐いた?」
伝書鳩が届けば、かつて女王に偽手紙を送ったのが侯爵令嬢本人だったこと、私を悪人に仕立てたい敵対勢力がやった嫌がらせだったことが全部ばれる。
侯爵令嬢はそのたび顔を真っ赤にして、次の策略を考えざるを得ない。
私の幽閉生活は退屈かと思われるかもしれませんが、正直なところ、毎回この小さな“真実暴露劇”が楽しみです。
侯爵令嬢がどれほど必死に嘘を並べ立てても、魔法鳩が飛ぶ限り、世界は私に味方してくれるのですから。
今日もまた、伝書鳩を放つ準備をします。
窓辺に止まった小さな鳩を手に取り、私は小さく微笑む。
「さて、今日の噂は何がバレるかしらね?」
侯爵令嬢はまた、あたふたして泣き喚くでしょう。
そして私は、幽閉部屋の静かな空気の中で、心の中でくすくす笑うのです。




