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現世の妖怪、異世界転生  作者: A古町
第一章 出会い

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第8話天狐異聞:残光と黒砂糖の約束

天狐異聞:残光と、黒砂糖の約束

第一章:落日の白狐、九尾の蹂躙

かつて日ノ本の霊峰には、純白の毛並みを持つ狐の一族が、神の使いとして静かに暮らしていた。その中に、ひときわ強い霊気を放つ幼き白狐がいた。

だが、その平穏は、大陸から飛来した最悪の災厄――九尾の狐によって打ち砕かれた。


「白狐よ、逃げて……!九尾は、強すぎる ……!」


九つの尾が空を裂き、山を焼き払う。一族郎党が次々

とその紅蓮の炎に飲み込まれていく中、幼き白狐は、母の最期の力を借りて、聖域・稲荷山へと逃げ延びた。

背後に広がるのは、愛する者たちの悲鳴と、全てを食い尽くす九尾の嘲笑。白狐の心には、癒えぬ傷と、いつか天に昇るという宿命だけが残された。


第二章:稲荷の守護、天狐の薫陶

稲荷山の奥深く、古き天狐は迷い込んだ白狐を、我が子のように慈しんだ。


「さぁ、白狐よ、お行きなさい。貴女の魂は、いつかこの國を救う光となるのです」


稲荷山の天狐の導きにより、すくすくと育った白狐は旅立ちの日を迎えた。


「はい。この御恩、いつか必ずや、この日ノ本の土へと返しましょう」


「白狐よ、私の妖力を分けておきます、いつか必ず役立つ時が来るはず」


「阿古町様、ありがとうございます...」


天狐の妻、阿古町が若き白狐の肩を抱き寄せ抱擁した。


数百年の修行を経て、白狐はいつしか「天狐」の素質を完全なものとしていた。


第三章:蒙古襲来、神風の咆哮

文永の役。大陸から押し寄せた蒙古の大軍団が、九州の浜を埋め尽くした。

日ノ本の武士たちは苦戦し、國家は未曾有の危機に立たされる。その時、稲荷山から一筋の白い光が翔けた。

博多の空に、各地の霊獣たちが集結する。

春日野の神鹿、熊野山の霊烏、気比の宮の白鷺、そして比叡山の猿。


「皆さま、準備はよろしくて? この美しき國を、汚させるわけにはまいりません」


白狐の号令とともに、霊獣たちは一斉に吼えた。

白狐が天に向けて舞い、その尾を振ると、海原を割るような猛烈な嵐――神風が巻き起こった。蒙古の巨大な船団は、木の葉のように翻弄され、渦巻く波の下へと消えていく。


だが、代償は大きかった。

白狐は全霊の力を神風へと捧げ、全ての妖力を使い切り、海へと沈んだ。仲間たちは彼女を探したが、霊体となった白狐の気配は、荒れ狂う波間に消えてしまった。


第四章:神木の眠りと、黒砂糖の温もり

それから数百年の月日が流れた。

霊体となった白狐は、深い山奥の神木の中に逃げ込み、長い、長い眠りについた。失われた妖力を蓄えるため、彼女の意識は深い闇の底に沈んでいた。

ある日、空腹と衰弱の中で、白狐は眠りから覚める。

人の姿を借り、フラフラと村の近くを彷徨う彼女の前に、一人の幼い男の子が現れた。


「おねえちゃん、お腹空いてるの? これ、あげるよ」

男の子が差し出したのは、包み紙に入った一塊の黒砂糖。


「……これを、私に?」


一口齧ると、濃厚な甘さが、冷え切った彼女の魂に染み渡った。


「……ああ、美味しい。なんて、温かいのでしょう……」


白狐は、この名もなき少年の優しさに救われた。彼女はこの少年の成長を見守ることを誓い、再び妖力を蓄えるために姿を隠した。


第五章:戦場に舞う焔、最期の恩返し

数年後、あの男の子は青年となり、陸軍の中隊長となっていた。

世界大戦の最中。彼は大陸の最前線、敵軍に包囲された絶望的な戦地に立っていた。

降り注ぐ砲火。壊滅寸前の中隊。


「これまでか……。このまま敵陣へ突入するか…部下たちを犬死させたくはないが」


青年が唇を噛み締め覚悟を決めたその時。

戦場の中央、赤く染まった空から、神々しい純白の光が舞い降りた。


「お待たせいたしましたわ。……あの時の甘味のお返しに伺いました」


白狐が尾を一振すると、白蓮の炎が戦場を焼き尽くす。一瞬にして火の海となり、敵軍は大混乱に陥った。その隙に、壊滅寸前だった中隊は奇跡的な退却を果たす。

青年の耳元で、透き通るような声が囁いた。


「あの時の黒砂糖、美味かったぞ.....」


それが、白狐がこの世界に残した最期の言葉だった。

全霊の気力を使い切った彼女は、その瞬間に最高位の神「天狐」へと昇格し、そのまま眩い光となって現世から姿を消した。


第六章:異界「新坂東」への着任

「……あら? こちらも、また賑やかな場所ですのね」


天狐が目を開けると、そこは爽やかな風に靡く草原が広がる異界。

目の前には、黒髪の滝夜叉姫、ギャル鬼の茨木童子、軍服姿の隠神刑部、そして清姫たちがいた。


「おっ、すげー綺麗なお姉さん来た! 滝夜叉サマ、スカウト成功じゃない?」


茨木童子が目を輝かせ、ぬりかべが「ぬりー」とはにかみながら、石壁のテーブルにお茶を用意する。


「ようこそ、天狐殿。俺も戦場帰りだが、貴女の立ち姿には、ただならぬ武勲を感じる」


隠神刑部が敬意を表して一礼した。


「ふふ、わたくしは天狐。少し、お腹が空いてしまいましたわ。こちらに、美味しい甘味はございまして?」


滝夜叉姫が、黒髪をなびかせながら満面の笑みで答える。


「あるとも! 妾の國には、世界一の妖菓子職人がおるからの! 天狐よ、お主も楽しもうぞ!」


天狐は、かつての少年の面影を胸に抱きながら、新しい仲間たちと共に、永遠に続く安らぎの地へと足を踏み入れた。

彼女の穏やかな声が、異界の風に乗ってどこまでも響いていく。


史実では、この大陸の戦場に現れたのは白狐でも天狐でもなく、九尾の狐だったそうです。尾を9つに分け、戦場を火の海に変えたとか。


この兵隊さんが幼い頃、幼い小狐に黒砂糖を与え、その恩返しに戦場に現れたそうです。


ですが、疑問が生まれます。この兵隊が子供から成長して戦場で隊長になるのが20年かかるとして、、小狐が20年で九尾になれるものか、と。

その辺を踏まえ、元から白狐にして、白狐が神風を起こす史実と絡ませ、数百年時を経ってこの戦場で成長し天狐へと昇格する設定にしました。



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