第6話 建国宣言、妾に続け!
第一章:建国宣言、妾に続け!
「さあさあ、集まるが良い! 今日はこの異界にとって記念すべき日になるぞ。妾が今、ここに『新坂東・あやかし楽園』の建国を宣言する! 妾も楽しむ、お主らも楽しむ。これぞ真の國よな!」
異界の黄金色に輝く草原。中央の高台で、白銀の髪をなびかせ采配を振るのは滝夜叉姫だ。今の彼女は、溢れんばかりの生命力で異界を照らす太陽そのものだった。
「おーっ! 滝夜叉サマ、マジ最高! 超ついていくし!」
一番に声を上げたのは、茨木童子だ。
「ウチも國づくりとか手伝っちゃうよ。とりあえず、一番映えるダンスホール作んない?」
「ダンスホールも良いが、まずは皆が安らげる場所を、だ。俺たちが日露の戦場で培った知恵、ここで振るわせてもらおう。喜左、図面を引け!」
法被姿になった隠神刑部が、異界で合流した家臣の喜左衛門狸と共にやる気を見せる。
また、至高の芸事と美貌を活かし、異界にて再び頂点の花魁として返り咲いた紅葉が、艶やかな香りを漂わせ歩み寄った。
「ふふ、騒がしいことでありんすねぇ。滝夜叉様、あちきは、お茶会ができる静かな紅葉の庭園が欲しいわ。季節外れの紅葉を咲かせるのも、一興でありんしょう?」
紅葉が煙管をくゆらせ、優雅に微笑む。
「わたくしはもう誰も閉じ込められない、花に囲まれた開放的な宿場を作りますわ!」
清姫も、清々しい笑顔でこれに続く。
「ぬりー!」
小柄な少女の姿をしたぬりかべが、左右に浮かせた石壁をパタパタさせて「建設資材なら任せて」とばかりに誇らしげに鳴いた。
「よおし、決まりじゃ! 皆の衆、妾の國づくりは『遊び』が基本じゃぞ。苦しい苦労など要らぬ、ワクワクすることだけを形にするのじゃ。さあ、宴の準備と街づくり、同時に始めるぞえ!」
第二章:あやかし流・都市開発
滝夜叉姫の指揮のもと、異界の街づくりは爆速で進んだ。
まず、ぬりかべが石壁を増殖・浮遊させ、巨大な城門を組み上げた。それは皆が寄りかかって昼寝をするための「癒やしの壁」だ。その上を、のっぺが顔を変えながら走り回り、デコレーションを施していく。
「おっ、いい感じじゃな! ぬりかべ、その壁の横に妾の特等席、ブランコを吊るしてくれぬか?」
滝夜叉姫が飛び跳ねるように指示を出す。
一方、隠神刑部と喜左衛門狸は、得意の化け術で温泉を引き、酒が流れる蛇口を設えた。
その横で茨木童子は、超巨大な野外ステージを建設中だ。
「マジ、ここがウチらのフェス会場! 紅葉サマ、あとでバックダンサーやってよ!」
「……粋な誘いでありんすが、あちきが踊れば都の男たちが皆、魂を抜かれてしまいんすよ? ふふ、冗談でありんす」
清姫は、かつて自分が囚われていた釣鐘を「平和の鐘」として広場に据え、その周りに美しい花々を植えた。
「素敵な花嫁になれますように...」
清姫は平和の鐘に祈りを捧げた。
第三章:不滅の宴、黒髪の帰還
街が形を成すと、滝夜叉姫は全員を招き、巨大な円陣を組んだ。
「さあ、仕上げじゃ! 乾杯じゃ、皆の衆!」
滝夜叉姫が朱塗りの杯を掲げたその時、彼女の全身を温かな光が包み込んだ。
「……? 何事じゃ、体が熱いぞえ……?」
茨木童子が目を見開く。
「えっ、ちょっ、滝夜叉サマ! 髪がマジでヤバい!」
滝夜叉姫の白銀の髪が、毛先からじわじわと、吸い込まれるような艶やかな漆黒へと染まっていく。本来の「五月姫」としての髪の色だ。
「あちきも驚きでありんす。まるで現世の未練が、春の雪解けのように消えていくのが見えんす」
紅葉が目を細めて呟いた。滝夜叉姫は、自分の長い黒髪を手に取り、眩しそうに見つめた。
「おぉ……。妾の恨みが、完全に消えたというのか。ふふ、あはははは! 見るが良い皆の衆! 妾の美しさに磨きがかかったようじゃな! 黒髪もまた、妾によく似合っておるぞえ!」
滝夜叉姫は、黒髪をなびかせ、最高に明るい笑顔で采配を振りかざした。
「妾も楽しもうぞ! この黒髪が揺れるほど、激しく、楽しく、永遠に宴を続けようぞえ!」
終章:明日に続く笑い声
異界の夜は更けても、暗く沈むことはない。
滝夜叉姫の國には、彼女の明るいエネルギーが満ち溢れている。
「滝夜叉様、今夜はあちきの庭園で、月の雫を集めた酒を酌み交わしんせんか?」
「おお、紅葉! それは良い! 刑部も茨木も、皆集まるが良いぞ!」
黒髪に戻った滝夜叉姫は、元気いっぱいに仲間たちの中心で笑っている。
「明日はぬりかべの壁で流しそうめん大会じゃ! 茨木、準備を頼むぞ!」
「マジ!? 了解、超デカい竹持ってくるわ!」
「ぬりりー!」
黄金の草原に響く、底抜けに明るい笑い声。
滝夜叉姫の國づくりは、まだ始まったばかり。彼女の「妾も楽しもうぞ!」という叫びは、これからも異界の風に乗って、新しい仲間たちを呼び寄せていくことだろう。
滝夜叉姫は妖術で朝廷に叛逆するも、大宅光圀に討たれる悲劇的な結末として描かれます。最後は妖術が尽き、無念の内に斬り伏せられる、あるいは自害して果てる物語が有名です。
ですが、奥州へ落ち延び、新たな人生を送った、とも伝えられています。




