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現世の妖怪、異世界転生  作者: A古町
第二章 百鬼夜行

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第19話 終焉の胎動 ——空亡降臨、絶望の捕食者——

終焉の胎動 ——空亡降臨、絶望の捕食者——

1. 帝都消滅の序曲

昭和二十年八月初頭。帝都・東京の上空に開いた漆黒の亀裂から、それは音もなく這り出してきた。

百鬼夜行の終焉を司る最強の厄災、空亡くうぼう

実体を持たぬ巨大な闇の球体であり、その中心には赤く不気味な単眼が、現世のすべてを嘲笑うかのように開いている。


「アハハハ! 見なさい! これこそが貴女たちの神話、そしてこの世界の幕引きよ!」


狂乱の笑みを浮かべるローレライが叫ぶ。だが、その直後、彼女の顔から余裕が消えた。


「……な、何をしているの? 空亡! 標的はあそこの妖怪どもよ!」


生まれたての赤児の如き無垢な残虐さを持つ空亡は、召喚主であるローレライの命令など聞きはしなかった。空亡が放った虚無の光線がローレライを掠めながら帝都の空をなぞると、そこにいた数百の日本妖怪——河童、一つ目小僧、小豆洗いといった者たちが、叫ぶ暇もなく闇に吸い込まれ、その存在ごと喰らい尽くされた。


2. 総力戦の号令:異界連合軍の猛攻


「……仲間たちを、よくも、よくもやってくれたなあ!」


滝夜叉姫が、がしゃどくろの頂から叫ぶ。


「皆、ひるむな! 空亡はまだ己の力を制御できておらぬ! 今こそ、日ノ本の底力を見せてやるぞ!」


「がはは! 骨のある化け物よ! 清姫、愛の力でその眼を焼き潰してやれ!」


仙石秀久が槍を構えて突撃し、大蛇となった清姫が「殿の道を塞ぐ不届き者ですわ!」と、超高温の火柱を空亡の単眼へと叩きつける。


「……ありんすねぇ。わっちの庭で好き勝手するとは、仕置きが必要でありんしょう」


紅葉が空を舞い、数千の燃える紅葉を刃に変えて放つ「紅葉狩り」を繰り出し、空亡の表層を削り取る。


3. 覇王の刃と狸の奇策


「……フン、虚無か。余の『天下』には不要なものだ」


織田信長が、妖刀・圧切り(へしきり)を抜き放つ。その一閃は、実体を持たぬはずの空亡の闇を物理的に両断し、紫の血のような妖気を噴き出させた。


「親分、今だぜ! 狸の意地、見せてやろうじゃねえか!」


喜左衛門が数万の幻影兵を出現させ、空亡の視覚を攪乱する。その隙に、軍帽を深く被り直した隠神刑部が、法力を込めた特製徹甲弾を二挺拳銃で乱射した。


「理屈じゃねえんだよ、空亡! 四国の狸の弾丸は、魂までぶち抜くぜ!」


4. 漆黒の反撃

八百万の神々の末裔、戦国を生き抜いた武将、そして帝都を守る軍人たち。

総力を結集した一撃が空亡に命中し、巨大な爆炎が空を包んだ。

だが、煙の向こうから聞こえてきたのは、赤子の泣き声のような、不吉な重低音であった。

空亡の単眼が、怒りに燃えてさらに赤く輝き始める。


「……いけませんわ、皆様! あの化け物、私たちの攻撃を『食べて』成長していますわ!」


天狐が叫ぶ。阿古町の狐火も、清姫の炎も、空亡にとっては新たなる糧に過ぎなかったのである。


「阿南殿、第ニ撃の準備を! 妾たちが隙を作るぞ!」

滝夜叉姫は折れそうな大太刀を握り直し、さらなる闇の深淵へと足を踏み出した。

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