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現世の妖怪、異世界転生  作者: A古町
第二章 百鬼夜行

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第18話 菊水作戦と百鬼夜行 ——沈まぬ太陽、亡国の咆哮——

菊水作戦と百鬼夜行 ——沈まぬ太陽、亡国の咆哮——

1. 昭和二十年六月、沖縄の落日

沖縄の空は、鉄の暴風が過ぎ去った後も、黒い雨と硝煙に閉ざされていた。


「……終わったか。わらわたちはまた、守れなかったのか……!」


南部戦線の断崖で、滝夜叉姫は泥にまみれた大太刀を握りしめ、咆哮した。おさん狸は力尽き、のっぺは友を失った悲しみで形のない涙を流し続けている。


「五月、嘆いている暇はありんせん。敵の狙いは、いよいよこの日ノ本そのもの、帝都でありんしょう」


紅葉が、ボロボロになった着物の裾を翻し、水平線の向こうを睨みつけた。


2. 帝都へ

七月。本土決戦を目前に控え、帝都・東京には日本中から「負けられぬ」想いを抱いた妖怪たちが集結していた。

遠野の河童、四国の狸、雪国の雪女、九州の土蜘蛛……。その数、数万。

阿南惟幾大臣が率いる陸軍守備隊の横に、異形の軍勢が整列する。それは、神代から続く日ノ本最大の「百鬼夜行」であった。


「皆、聞け! 妾たちはかつて、人を脅かし、闇を歩む者であった!」

滝夜叉姫が、皇居前の広場で数万の妖怪に向け、檄を飛ばした。


「だが、今この国を土足で踏み荒らす夷狄いてきは、妾たちの歩む闇さえも奪おうとしておる! 妾たちの故郷、そして未来を護るため……今こそ、一匹残らず地獄の底へ突き落としてやるのじゃ!」


「おおぉぉぉぉぉん!!」


妖怪たちの咆哮が帝都の空を震わせる。かつての明朗快活さを完全な「覇気」へと変えた滝夜叉姫の姿に、妖怪たちは己の命を賭ける覚悟を決めた。


3. 菊水作戦の悲劇:大和沈没


「……作戦開始! 戦艦大和と共に、沖縄へ、友を救いにいくぞ!」


日本海軍の象徴、戦艦大和。その巨大な艦体には、天狐と阿古町が神風の加護を与え、海中では清姫とがしゃどくろが護衛に付いていた。

しかし、坊ノ岬沖。空を埋め尽くす異国の艦載機の群れが、大和を容赦なく襲う。


「いけませんわ! 大和様が……火柱を上げて……!」


天狐が叫ぶが、魚雷の雨は大和の巨躯を無残に引き裂いていった。


「……報告いたします。戦艦大和、沈没……!」


小野曹長が、震える声で滝夜叉姫に最悪の報を伝えた。

日ノ本の誇りが、海の底へと消えた。絶望が軍民を、そして妖怪たちを支配しようとしたその時。


4. 空を裂く狂気:ローレライ降臨


「アハハハハ! 美しいわ、沈みゆく鉄の棺桶! これが貴女たちの神話の終わりよ!」


不気味な魔歌と共に、帝都の上空が紫色の亀裂に引き裂かれた。

そこから現れたのは、禁忌の魔術によって変わり果てた姿となったローレライ。彼女の背後には、数万の亡霊騎士と、見たこともない漆黒の影が渦巻いていた。


「……ありんすねぇ。妹を亡くして、ついに頭が狂ったでありんしょう?」


紅葉が構える。だが、ローレライの瞳に宿るのは、もはや現世の復讐心ですらなかった。


「黙りなさい! 私が連れてきたのは、この世界のすべてを『無』に変える神よ。さあ、目覚めなさい……空亡くうぼう!」


帝都の空が、真っ黒な闇に飲み込まれていく。

史上最強の妖怪、百鬼夜行の終焉を司る「空亡」が、ついにその巨大な影を地上に落とし始めた。

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