第13話 月下の咆哮と波間の閃光 ——妖魔対峙の狂宴——
月下の咆哮と波間の閃光 ——妖魔対峙の狂宴——
1. ガダルカナル:人狼の蹂躙
密林の奥底、英国黒魔術によって産み落とされた禁忌の軍勢――ウェアウルフたちが、銀色の毛並みを血に染めて躍り出た。
「グルアァァァッ!」
音速に近い踏み込みで、一匹の人狼が小野曹長の喉元へ牙を剥く。
「……死なせんと言ったはずだ、小野!」
間一髪、織田信長の放った覇気が空間を圧し、人狼の動きを止める。そこへ仙石秀久の長槍が電光石火の突きを繰り出し、魔獣の心臓を正確に貫いた。
「がはは! 野良犬が魔王様の御前に立ち塞がるとは、笑わせるわ!」
だが、後方からはさらに数十、数百の咆哮が重なる。
「隠神、喜左衛門! どっちが先にこの群れを掃除するか、勝負しよーぜ!」
「おうよ! 狸の化かしと鬼の剛力、どっちが上か思い知らせてやるぜ!」
隠神刑部が二挺拳銃を乱射し、銀色の毛皮を次々と撃ち抜いていく。ジャングルは、日欧の妖魔が入り乱れる血の狂宴場と化した。
2. 本土沖:深海のアイアン・シャークと悲劇の雷撃
一方、日本の領海境界線上。海面を割って現れた潜水艦「鉄の鮫」の甲板で、女傑たちの再戦が始まっていた。
「……またぬしでありんすか。しつこい女は嫌われるでありんしょう?」
輸送船の甲板から、紅葉が優雅に、だが冷徹な殺気を放って魔女を見据える。
「マジうける! 海の上まで追いかけてくるとか、ストーカー並みの執念じゃん!」
内地の防衛から輸送艦の護衛へと回っていた茨木童子が、金棒を肩に担いで挑発する。
しかし、魔女ローレライの狙いは、彼女たちとの「決闘」ではなかった。
「……フフ。貴女たちが私と遊んでいる間に、愛する荷物たちがどうなるかしら?」
「なっ……!?」
滝夜叉姫が振り返った瞬間、海中から放たれた無数の「呪詛魚雷」が、護衛をすり抜けて輸送船の腹部を捉えた。
ドォォォォォォォォォン!!
凄まじい爆発音と共に、貴重な食糧と弾薬を積んだ輸送船が、瞬く間に炎に包まれ傾いていく。
「いけませんわ! 船が……殿(秀久)へのおにぎりがぁーっ!」
清姫が必死に海中を泳ぎ、魚雷を誘爆させようとするが、多勢に無勢。数隻の輸送船が、断末魔のような音を立てて波間に沈んでいった。
3. ヴァルキュリアの嘲笑
「姉様、やりましたわ! これで南方の鼠どもは、戦う前に干からびるでしょう!」
ヴァルキュリアが戦斧を振り上げ、滝夜叉姫へと肉薄する。
「貴様ァ! 民が、妖怪たちが、血反吐を吐いて用意した荷を……よくも、よくもやってくれたな!」
滝夜叉姫の怒りが頂点に達し、がしゃどくろの腕が潜水艦の艦橋を叩き潰さんと振り下ろされる。だが、鉄の鮫は巧妙に潜航し、霧の中へと姿を消していった。
4. 決戦の行方
海上に漂う、焼けた米袋と浮遊物。
「……残ったのは、これだけであるか……」
滝夜叉姫は拳を握りしめ、沈みゆく船影をただ見つめるしかなかった。
ガダルカナルの密林で勝利を重ねる信長たち。しかし、彼らを支えるべき「糧」は、魔女の狡猾な一撃によって大きく失われてしまった。
物資が届かぬ絶望的な状況下で、南方の「不死の兵」たちは、飢えという名の真の地獄に直面しようとしていた。




