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現世の妖怪、異世界転生  作者: A古町
第二章 百鬼夜行

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第10話帝都崩落の残滓 ——白骨と鋼、神風の結末——

帝都崩落の残滓 ——白骨と鋼、神風の結末——

1. 巨神の終焉:がしゃどくろ vs ゴーレム

日比谷交差点。帝都の地鳴りは、ついにその臨界点を迎えていた。


「……これ以上、日ノ本……いや、妾の護るべき民の街を、土足で踏み荒らすのは許さん!」


滝夜叉姫が、がしゃどくろの頭上で大太刀を天に掲げる。その瞳には、かつての闇堕ちした鬼女の冷酷さではなく、人々を護らんとする異界の姫の光が宿っていた。

がしゃどくろは、アイアンゴーレムの鉄の双腕をへし折り、その剥き出しになった胸部へと巨大な骨の拳を叩き込んだ。


「砕けろ、異国のガラクタ人形ッ!」


バキィィィィィン!!

呪われた蒸気を吹き出しながら、鋼鉄の巨神がひび割れ、崩落していく。ローレライが捧げた「泥の心臓」が露わになった瞬間、滝夜叉姫の放った斬撃がその核を一刀両断にした。


2. 双子の撤退と執念


「姉様……! 私たちの最高傑作が……!」


ヴァルキュリアが、砕け散るゴーレムの破片から間一髪で飛び退く。その背後では、茨木童子が欠けた金棒を担ぎ、獰猛に笑っていた。


「あはは! 案外脆かったじゃん。次会うときは、もっと硬いの作ってきなよ!」


ローレライは、怪鳥の上で唇を噛み切り、呪わしげに眼下を見下ろした。


「……おのれ、日本の妖怪ども。この屈辱、次は必ず千倍にして返してあげるわ……! ヴァル、引くわよ!」


二人の魔女は、異界の歪みへと吸い込まれるように、夜の闇の向こうへと消えていった。決着は着かず、だが帝都の喉元から刃は退けられたのである。


3. 狐の神風と帝都の傷跡

上空では、天狐と阿古町が呼び起こした黄金の神風が、最後の爆弾を東京湾へと押し流していた。


「……守りきりましたわ。皆様、よく耐えてくださいました」


天狐の穏やかな声が帝都に染み渡る。だが、その声には一抹の悲しみが混じっていた。

夜が明け、朝日が昇る。

そこには、神風と妖怪たちの奮闘により、壊滅を免れた帝都があった。しかし、アイアンゴーレムが踏み荒らした銀座の街並み、爆風で砕け散った窓ガラス、そして黒焦げになった並木道。


「欧米列強に、帝都を直接攻撃された」という事実は、逃れようのない重い爪痕として、人々の心に深く刻まれた。


4. 静寂の中の決意


「……被害は最小限であった。だが、これこそが奴らの狙いであったか」


阿南惟幾大臣が、焼け残った庁舎の窓から煙の上がる街を見つめる。

物理的な破壊以上に、帝都を侵されたという精神的な衝撃は、日ノ本の軍民をさらなる狂乱の戦火へと駆り立てる火種となりかねなかった。


「阿南殿、顔を上げるのである。妾たちは負けておらぬ! 奴らを追い払ったのは、妾たちの……そして現世の皆の力であるぞ!」


滝夜叉姫が、朝日を浴びて凛と立ち上がる。


「……ありんすねぇ。これしきで折れるほど、日ノ本の魂はやわではありんせん」


紅葉が煙管をくゆらし、南の空を見つめる。


「さて……あちらの魔王(信長)は、今頃どんな暴れ方をしていることでありんしょう?」


帝都防衛戦は終わった。だが、それは世界を包む「ラグナロク」の、ほんの序章に過ぎなかった。

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