第8話 帝都防衛、神風と巨神 ——鋼の咆哮と白骨の意地——
帝都防衛、神風と巨神 ——鋼の咆哮と白骨の意地——
1. 巨神激突:がしゃどくろ vs アイアンゴーレム
日比谷交差点。帝都の中心地は、二つの巨大な質量がぶつかり合う地獄の如き様相を呈していた。
滝夜叉姫の呼び出したがしゃどくろ(ヒトカタ)が、鋼鉄の魔神アイアンゴーレムの巨躯を押し戻す。
「負けるな、がしゃどくろよ! 異国のガラクタ人形に、日ノ本の霊脈を汚させてならん!」
がしゃどくろの頭上に立つ滝夜叉姫が、大太刀を振りかざして叫ぶ。
がしゃどくろはその巨大な白骨の手で、ゴーレムの鉄甲板の胸部を掴み、力任せに握りつぶそうとする。対するゴーレムは、呪われた蒸気と異界の魔力を噴き出しながら、鉄の拳をがしゃどくろの肋骨へと叩き込んだ。
ドォォォォォォォォォン!!
一撃ごとに、帝都の地面が地震のように揺れる。
「あの骨……意外にしぶといわね。でもね、私の魔力の前では塵におなじよ」
ゴーレムの肩に乗るローレライが、さらに不気味な歌声を響かせ、ゴーレムの装甲を再生させていく。
2. 第二ラウンド:茨木童子 vs ヴァルキュリア
「あはは! また会ったね、ヴァルちゃん! そのピカピカの鎧、今度こそベコベコにしてあげるよ!」
ゴーレムの足元では、茨木童子が「鬼の金棒」を軽々と振り回し、戦乙女ヴァルキュリアに襲いかかっていた。
「黙りなさい、この野蛮な鬼女が! 私の戦斧は、神の理を刻む刃よ!」
ヴァルキュリアの戦斧が、夜の闇を切り裂く白銀の閃光を放つ。茨木はそれを金棒の腹で受け流し、凄まじい衝撃波を周囲に撒き散らす。
「マジで硬いね! でも、ウチの金棒は『地獄の底』で鍛えたんだから、神様のご機嫌取りとはワケが違うんだから!」
激しい火花が散り、二人の女傑は一歩も引かぬ力勝負を展開する。
3. 狐の守護、神風の咆哮
上空では、ドーリトル航空隊のB-25爆撃機が、官庁街を狙って爆弾を投下し始めていた。
「……させませんわ。日ノ本を護る祈り、今こそ集いなさい」
天狐が静謐で透き通るような声を響かせる。彼女は空中に浮遊し、日本中の神社仏閣に眠る妖狐たちの「霊力」を呼び集めていた。
「五月様、! 我も一肌脱ぎますよ。……さあ、悪い爆弾さんは、お空の向こうへ飛んでいきなさいねぇ」
老いた母狐の如き慈愛を湛えた白狐・阿古町が、天狐と共に印を結ぶ。
日本全国の社から集まった無数の狐火が、帝都の夜空を染め上げた。
その瞬間、凄まじい「神風」が巻き起こった。
落下する無数の爆弾は、着弾の直前に突風によって軌道を逸らされ、人気のない東京湾や空地へと次々と吹き飛ばされていく。
「What the hell is this wind?!
なっ、何だ、この風は!? 爆撃が、一発も当たらないなんて!」
B-25の操縦士たちが驚愕する中、天狐の瞳が鋭く光った。
4. 決死の防衛線
「阿南殿、今ですわ! 敵の機影、風で乱れておりますわよ!」
「……感謝する、狐の神子殿! 全砲門、撃てッ!」
阿南惟幾大臣の号令一下、命中精度を欠いた爆撃機に対し、地上から高射砲の猛火が降り注ぐ。
「……ありんすねぇ。空が騒がしいのは、妾の趣味ではありんせん」
紅葉が空中に火の階段を刻み、清姫の大蛇が夜空を泳ぎ、被弾したB-25を次々と業火で包んでいく。
「おのれ……日ノ本の妖怪ども、ここまでとは……!」
歌声を乱されたローレライの顔に、焦燥の色が浮かんだ。
がしゃどくろの叫び、金棒の激突音、そして狐たちの祈りが混ざり合い、深夜の帝都は「神国日ノ本」の底力を示す巨大な結界と化していた。




