第7話 帝都防衛戦 ——巨神激突と魔王の密かな影——
帝都防衛戦 ——巨神激突と魔王の密かな影——
1. 惜別の出陣、密かなる「豆」
「信長様、仕度は整いましてござる。南方の風が、我らを呼んでおりますぞ!」
仙石秀久が甲冑を鳴らし、拳を突き出す。
「……フン、天下布武の続きだ。秀久、遅れるなよ」
織田信長は腰の太刀を叩き、静かに歩み出した。
その背後、軍用トラックの荷台に積み込まれた兵糧袋の中から、クスクスと忍び笑いが漏れる。
「……へへ、隠神の親分。信長公にバレやしませんかね?」
「先の戦さで旅順に乗り込む時も小豆に化けて海を渡ったな……喜左、お前も小豆になりきれよ」
「内地で迎え撃つだけでは性に合わない、それに外地の戦場、狸の知恵がなきゃ立ち行かねえからな」
隠神刑部、喜左衛門は、一粒一粒の「小豆」に化け、信長の南方遠征にこっそりと潜り込んでいた。内地守備を滝夜叉姫に任せ、彼らは魔王の覇道に同行する道を選んだのだ。
2. アイアンゴーレム、帝都蹂躙
その頃、帝都の空は地獄の様相を呈していた。
「……見なさい、ヴァル。あのちっぽけな街を、私たちの鉄の巨神で平らにならしてあげるわ」
魔女ローレライが怪鳥の上で歌い出すと、地上では全長数十メートルに及ぶアイアンゴーレムが動き出した。接収された鉄甲船の残骸、戦車の残骸が呪力で繋ぎ合わされたその巨躯は、一歩踏み出すたびに銀座のビルを紙細工のように粉砕する。
「姉様、あの生意気な姫の骨は私が直接粉々に砕いてまいります!」
ヴァルキュリアがゴーレムの肩から飛び降り、戦斧を振り下ろす。
3. 帝都防衛、がしゃどくろvsゴーレム
「……これ以上、妾の愛する帝都を汚させてはならん! 皆、配置に付くぞ!」
滝夜叉姫が、大手門の屋根から叫ぶ。
「天狐殿、ぬりかべ、のっぺ、けうけげん! 結界を張るのじゃ! 阿南殿、砲兵隊の火力を一点に集中させよ!」
「承知いたしました、姫君! 攻撃開始せよ!」
阿南惟幾大臣の号令一下、皇居周辺に配置された高射砲と野砲が一斉に火を噴いた。だが、ゴーレムの重厚な鉄の皮膚には、現世の砲弾すら弾き返される。
「ならば……これでどうであるか! 出よ、がしゃどくろ(ヒトカタ)!」
滝夜叉姫が印を結ぶと、帝都の霊脈から溢れ出した白骨が組み上がり、アイアンゴーレムに匹敵する巨躯を現した。
「グォォォォォン!」
白骨の巨神と、鋼鉄の巨神。
二つの巨躯が日比谷交差点で激突し、その衝撃波で周囲の窓ガラスがすべて砕け散った。がしゃどくろがゴーレムの腕を掴み、力任せに引き剥がそうとする。
4. 紅蓮の迎撃、空を舞う姉妹
上空では、ドーリトル航空隊のB-25爆撃機が爆弾を投下し始めていた。
「……ありんすねぇ。妾の目の前で、そんな汚らしい火を焚べるとは」
紅葉が空中に火の階段を作り、優雅に、だが恐るべき速さで駆け上がる。
「清姫、おやりなさい!」
「ええ、紅葉様! 殿(秀久)を送り出したこの寂しさ、すべて火の玉にしてぶつけて差し上げますわ!」
清姫は大蛇の姿へと変じ、空を泳ぐように上昇。口から放たれた極大の業火が、B-25の主翼を次々と焼き落としていく。
「ちっ、またアイツらが邪魔するのね...!」
ローレライの前に、紅葉が音もなく立ち塞がった。
「……ぬし、いい歌を歌うでありんしょう。だが、帝都の夜に相応しいのは、そなたの奏でる悲鳴でありんす」
鋼鉄と白骨、科学と魔術。
深夜の帝都は、現世と異界が混ざり合う、未曾有の戦場と化していた。




