第3話 異界決戦、神話の激突 ——黄金の騎士と骨の巨兵——
異界決戦、神話の激突 ——黄金の騎士と骨の巨兵——
1. 魔女の歌、死者の軍勢
異界の空は、ローレライが放つ不気味な紫の魔力によって、淀んだ毒の色に染まっていた。
「フフッ、日本の妖怪なんて、ただの野良犬と同じね。……さあ、目覚めなさい。主のために魂を捧げた、美しき僕たちよ!」
ローレライが銀色の髪をなびかせ、高く細い声で呪文を詠い上げる。すると、常世の隠れ里の地面が激しく脈動し、無数の亀裂が入った。
そこから這い出してきたのは、全身を黄金の甲冑で固めた「不死の騎士団」であった。彼らは魔女の歌によって縛られ、生前以上の膂力を持つ生ける屍兵だ。
「な、何じゃ何じゃ……! 地の底から、鉄の塊が湧か出て来よる!」
滝夜叉姫が驚愕に目を見開く。黄金の騎士たちは、感情の失せた瞳を光らせ、一糸乱れぬ動きで異界の軍勢へと歩を進める。
「……ありんすねぇ。野暮な鉄屑を並べて、妾の里を汚そうとは。その薄汚い金色のメッキ、剥がして差し上げんしょう」
紅葉が煙管の灰を落とし、不敵に笑う。彼女の周囲には、すでに魔王の紅蓮の炎が渦巻いていた。
2. 滝夜叉姫の覚醒、がしゃどくろ降臨
「……これ以上、妾の國でを好き勝手はさせん! 妾が己の『闇』を力に変え、この國を守り抜いてみせる!」
滝夜叉姫が太刀を地面に突き立てると、里の四方から巨大な白骨が集まり、天を突く巨躯へと組み上がっていく。
現れたのは、山をも見下ろす伝説の怪異——がしゃどくろ(ヒトカタ)。
滝夜叉姫の魔力に呼応したその巨兵は、巨大な手で黄金の騎士団をゴミのように薙ぎ払った。
「はーっはは!妾のがしゃどくろを侮るでないぞ!数の暴力には、大きさで対抗するのじゃ!」
滝夜叉姫ががしゃどくろの頭上に飛び乗り、意気揚々と指揮を執る。
3. 剛力激突:茨木童子 vs ヴァルキュリア
「姉様姉様、あの大きな骨……少しは楽しめそうですわね!」
ヴァルキュリアが戦斧を上段に構え、跳躍する。だが、その軌道を遮るように、一本の黒い影が割り込んだ。
「マジうける! その斧、飾りじゃないなら、ウチの金棒とどっちが強いか勝負しよーぜ!」
茨木童子が、禍々しい「鬼の金棒」をフルスイングで叩きつける。
ギィィィィィィィィン!!
神話の斧と地獄の金棒が激突し、周囲の空間が震動で爆ぜた。
「なっ……この女、私の斧を止めるなんて……!?」
「あはは! ヴァルちゃんだっけ? 筋肉が足りないんじゃない? もっとマジで来なよ!」
茨木の圧倒的な怪力に、戦乙女ヴァルキュリアがじりじりと押し込まれていく。
4. 日本妖怪の猛攻と双子の焦燥
「……今だ。一気に畳み掛けろ」
信長の号令が飛ぶ。
「了解だ! 野郎ども、新兵器の出番だぜ!」
隠神刑部と喜左衛門率いるタヌキの兵が、法力を込めた特製炸裂弾を騎士団の足元へ次々と撃ち込む。
「熱いですわよ! お覚悟なさいまし!」
清姫の業火が油の海に引火し、黄金の騎士たちは溶解し始める。さらに、おさん狸の幻術によって、騎士団同士が同士討ちを始めるという大混乱に陥った。
「くっ……何ですの、この野蛮な連中は! 姉様、話が違いますわ! 日本の妖怪なんて、もっと弱いはずじゃなかったの!?」
ヴァルキュリアが茨木童子の金棒を斧で受けては火花を散らして叫ぶ。
「……あり得ないわ。私の不死の騎士団が、こんな狸や狐の術に翻弄されるなんて……。少し、舐めすぎていたようね……」
ローレライの歌声が初めて苛立ちで震える。
「ふふ、ありんすねぇ。ぬしら、日ノ本の妖怪を侮ったのが運の尽きでありんしょう」
紅葉が背後に音もなく現れ、ローレライの首筋に冷たい爪を立てた。
「さあ、ここからが本当の地獄でありんしょう? 覚悟はおできでありんすか?」




