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現世の妖怪、異世界転生  作者: A古町
第一章 出会い

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第20話 安土焦熱、異界の援軍 ——黒百合の殉教と魔王の姉妹——

安土焦熱、異界の援軍 ——黒百合の殉教と魔王の姉妹——

1. 叛逆の果て、燃ゆる安土

天を衝く安土の天主閣は、今や現世うつしよと地獄を繋ぐ巨大な松明と化していた。爆ぜる火の粉が夜空を朱に染め抜き、城下には絶望の叫びが満ちる。


「信長様、もはやこれまで……! 本丸まで火が回っております!」


家臣たちの悲鳴を、織田右府・信長は鼻で笑い飛ばした。手にした名刀を抜き放ち、眼前の闇を睨みつける。


「フン、余を焼く火が、地獄の業火より温いぞ。……出てこい、坊主。貴様のその腐った法力、この信長が直々に断ち切ってくれるわ」


闇の奥から、静かな足音が響く。かつて明智光秀と呼ばれた男が、今は不気味な僧衣を纏い、怪僧・天海として姿を現した。


「ククク……『天下布武』。その夢、この天海の曼荼羅の中に閉じ込めて差し上げましょう。貴方は今日、ここで歴史という名の檻に閉じ込められるのです」


天海が扇を翻すと、背後に控えた鉄砲隊が一斉に銃口を向けた。それは天海の法力によって強化され、魂を削る妖気を帯びた「呪詛銃」の列であった。


2. 黒百合の盾、佐々成政の最期


「天海ィ! 貴様の不忠、この成政が許さぬと言ったはずだ!」


その時、轟音と共に一人の武士が割って入った。佐々成政。その手には、越中の深山に咲き誇る、禍々しくも美しい黒百合が握られている。


「ほう、成政。まだ生きていたのですか」


「黙れ! 信長様は、俺が守る! 咲き誇れ、黒百合の呪いよ! 我が魂を糧に、鉄壁の盾となれ!」


成政が咆えると、黒百合から泥のような闇の霧が噴出し、彼の全身を包み込んだ。鎧は漆黒に染まり、受けた傷を即座に「黒い花弁」へと変えて癒やす、不死身の加護が宿る。


「信長様、ここは俺が食い止めます! く、お逃げくだされ!」


「成政、余に背を向けろと言うか。……よかろう、貴様の忠義、冥土への土産に持っていくがよい」


成政は、天海の鉄砲隊へ向かって一直線に突撃した。「放て(ひ)!」「ふ!」と天海の冷徹な号令が飛ぶ。弾丸が肉を抉るが、傷口から黒い花弁が舞い散り、瞬時に再生する。しかし、天海が「三段目」の印を結んだ。


「……無駄ですよ、成政。放て(み)」

三段目。それは天海が自らの魂を削って練り上げた「極楽往生」の弾丸であった。放たれた光の弾は、成政の胸を正確に貫き、加護の源である黒百合を粉砕した。


「……あ、が……。信長様……天下……を……」


成政は立ったまま、満足げな微笑を浮かべて絶命した。その体は崩れるように無数の黒い花弁へと変わり、夜風にさらわれて消えていった。


3. 異界からの救援、女傑と怪異


「まったく……少し目を離すとこれであるぞ! これだから人間ひとというやつは、放っておけぬのである!」


燃え盛る屋根を突き破り、凛とした少女の声が響き渡った。紅蓮の炎を割って現れたのは、異界の姫として返り咲いた滝夜叉姫である。


「チッ、また滝夜叉姫ですか。異界の掃き溜め共が……」


天海が不快そうに目を細めた。彼は既に、異界で勢力を伸ばす彼女たちの存在を熟知していた。


わらわの名を呼ぶとは、少しは物分かりが良いようであるな、天海! 妾は五月、またの名を滝夜叉姫! 正義の姫であるぞ! 成政とかいう男の忠義、しかと見届けた。あのような美しい花を散らすとは、誠の武士もののふよ」


「マジそれな。てか、ウチらが来たからには、もう終わりだよ。マジで空気悪いし、サクッと終わらせて遊びに行こーよ」


ピンク色の髪をなびかせ、金棒を軽々と弄ぶ茨木童子が、退屈そうに天海を指差す。


「お前さんたち、無駄口はそれまでにせんか。……総員、突撃準備!」


軍帽を被り、階級章の付いた外套を羽織った隠神刑部が、背後のタヌキ兵たちに鋭く命を下す。その隣では、古強者の風格を漂わせる喜左衛門が静かに得物を構えた。


4. 第六天魔王の邂逅

そして、最後にゆっくりと、だが重々しく高下駄の音が響いた。炎の中から現れたのは、信長の姉にして「戸隠の鬼女」――紅葉であった。


「……ありんすねぇ。わっちの可愛い弟を、ここまで追い込むとは、よほど命が惜しくないと見えんしょう。天海、ぬしは相変わらず分を弁えぬ坊様でありんしょう?」


「紅葉……貴方まで。せっかく曼荼羅が完成するというのに、最大の邪魔者が入りましたか」


紅葉は煙管をくゆらせ、驚愕に目を見開く信長の前に立った。信長は呆然としながらも、その名を唇に乗せる。


「……姉上。ふ、まさか助けに来てくれようとは、、それとも、余を笑いに来たか」


紅葉は艶やかな着物の裾を翻し、慈しむように信長の頬を撫でた。


「ふふ、何を仰るでありんしょう。ぬしは正真正銘、天魔の血を分けた姉弟。そんな出来損ないの坊様に首を獲らせるなど、わっちが許すはずがないでありんしょう?」


「……相変わらず、傲慢な女だ」


「それがわっちの良さでありんしょう? 黙っていなさい、信長。ぬしはわっちの所有物でありんす。勝手に地獄へ行かせては、わっちの面目が丸潰れでありんしょう? さあ、坊様。我らの『遊び』に付き合ってもらいんしょうか。曼荼羅ごと、真っ赤な紅葉に染めて差し上げんしょう」


紅葉が指をパチンと鳴らすと、安土の空が異界の闇に塗り潰された。


「フフッ、何を驚いておるのである! 悪巧みがあるところに妾あり! さあ、参るぞ皆の者! 正義の鉄槌、食らわせてくれるわ!」


滝夜叉姫が先陣を切り、大太刀を振り下ろす。異界の精鋭たちが、天海の鉄砲隊へと牙を剥いた。


天海の謀反を信長はかわせるか⁉︎


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