第15話 異界戦記:第三話・天魔の落日、門出
異界戦記:第三話・天魔の落日、黄金の門出
第一章:巨神激突、鉄甲船を砕け
「はーっはは! 逃がさぬぞ信長! 異界の土の重み、その身で味わうが良い!」
滝夜叉姫の咆哮に応じ、漆黒の鎧を纏ったがしゃどくろが、その巨腕を振り下ろした。旗艦「大天魔」の舷側が、凄まじい衝撃音と共に潰れる。
「案ずるな、これしきよ。天海、術を回せ。骸の巨像など、鉄と火薬で塵にせよ」
信長の命により、天海が印を結ぶ。
「三段撃ち、斉射。……必中破邪の陣、開門....」
鉄甲船の砲門が一斉に開き、がしゃどくろの胸部を正確に貫く。だが、がしゃどくろは崩れない。傷口をぬりかべの石壁が補強し、天狐と阿古町の神風が砲弾の威力を削ぎ落としていく。さらに後方ではおさん狸が扇を振り、がしゃどくろの「核」に死傷率ゼロの加護を与え続けていた。
「ウチの拳、鉄甲船より硬いんだから! 堕ちろぉぉ!!」
茨木童子ががしゃどくろの肩から跳躍し、前線から引いた成政の守る第二船の甲板を粉砕した。成政は呪いの黒百合を散らしながら必死に応戦するが、異界の妖怪たちの結束は、織田の規律をも凌駕し始めていた。
第二章:魔王の血、兄妹の決着
乱戦の中、滝夜叉姫は信長の旗艦へ飛び乗った。その横には、漆黒の炎を扇に宿した紅葉が立つ。
「信長、お主の天下布武はここで終わりでありんす。……あちきが、姉として引導を渡してやりんしょう」
「……紅葉。貴様も結局は、そのような有象無象に情を移したか。魔王の血が泣くぞ」
信長の妖刀と、紅葉の炎、そして滝夜叉姫の采配が交錯する。信長の力は圧倒的だったが、紅葉が信長の動きを封じる。
「戸隠の秘技、紅葉狩りを味わうが良い!」
信長の周囲を刃の様な紅葉が飛び交い、動きを封じた。
「今じゃ、滝夜叉様! 妾たちの『遊び』を見せてやるのでありんす!」
「おおおぉぉ! 奥義・奈落堕ちの采配!!」
滝夜叉姫が、復讐の念ではなく、國の皆を守る「愛」の霊力を采配に込めて振り抜いた。信長の結界を内側から破壊し、旗艦「大天魔」は爆炎を上げて地表へと不時着した。
第三章:侍大将の降伏、そして拉致の果て
旗艦が沈んだことで、織田軍の統制は崩れた。成政は撤退を開始し、天海は「……潮時、ですか」と底知れぬ笑みを残して霧と共に姿を消した。
一方、城内の清姫の宿舎。そこには、大蛇の胴体でぐるぐる巻きにされ、清姫の膝の上で「あーん」と団子を口に運ばれている侍大将・仙石秀久の姿があった。
「秀久様、これでお話し合いは十分ですわね? もう、私以外は見ないと誓ってくださいまし」
「……くっ、離せと言っている! ……モグ、……美味い。いや、そうじゃなくてだな!」
そこへ信長が、煤けたマントを翻して現れた。秀久のあまりにも情けない姿を見て、魔王は深い溜息をついた。
「……秀久。貴様、その蛇女に完全に骨を抜かれたか。現世の武名が泣くぞ」
「お、殿! 助けてくだされ、この女、全く話を聞かんのです!」
信長は滝夜叉姫と紅葉を交互に見た後、腰の刀を納めた。
「……戦場を汚されたわ。女の執念ほど、天魔の理にそぐわぬものはない。ここで引き上げるとする、秀久は、、置いていく。今のあいつは、ただの蛇の餌だ」
信長は、自分を「除霊」した男に執着する清姫の姿に、ある種の「敗北」を認めたのかもしれない。織田軍は、清姫に囚われた秀久を置き去りにし、異界の彼方へと去っていった。
第四章:黄金と花の結婚式
数ヶ月後。「新坂東」には、かつてない盛大な賑わいが戻っていた。
國の広場には、ぬりかべが作った「幸せの石門」と、のっぺが作った数千の提灯、けうけげんが作った色彩とりどり毛の造花が飾られている。
「秀久様、ついにこの日が来ましたわね。ふふ、逃げようとしたって無駄ですよ、けうけげんに貰った赤い毛糸をつけておきましたから」
白無垢を纏った清姫が、いまだに冷や汗を流している仙石秀久の腕をぎゅっと抱きしめる。秀久は「……もう諦めた」とばかりに天を仰いでいた。
そこへ、上空から一艘の小舟が降りてきた。
中には、まばゆいばかりの黄金の小判と、現世には存在せぬ天界の花々が山積みにされていた。
「あら、贈り物でありんすね」
紅葉が手紙を拾い上げ、読み上げた。
『侍大将・仙石秀久の不始末に対する慰労、並びに蛇女への手切れ金代わりなり。……織田右府』
「はーっはは!信長の奴、案外粋なことをするではないか!」
滝夜叉姫が黒髪を揺らして笑い、朱塗りの酒杯を掲げた。
「皆の衆! 今日は清姫と秀久の門出じゃ! 飲んで踊って、妾も楽しむぞ!」
けうけげんの少女が丸まり秀久の足元をモフモフと擦り、隠神刑部が祝砲代わりに拳銃を空へ撃つ。天狐と阿古町が桜の吹雪を降らせる中、異界の國に、かつてないほど明るい笑い声が響き渡った。
戦いは終わり、國はより強固な絆で結ばれた。
滝夜叉姫の國づくりは、これからも賑やかに、そして「楽しく」続いていくのである。
物語が進むと,過去の話や伏線回収が難しくなるね。
清姫と仙石秀久のところは何とかまとまったかな。




