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現世の妖怪、異世界転生  作者: A古町
第一章 出会い

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12話 深紅の絆と、新しき稲荷の國

天狐異聞:深紅の絆と、新しき稲荷の國

第一章:天狐の告白、滝夜叉姫への謝罪

けうけげんの騒動が一段落し、再び「新坂東」に黄金の陽光が戻った午後。

天狐(淡い茶髪の姿)は、國主・滝夜叉姫の前に静かに膝をついた。その手には、旅立ちの支度が整えられた小さな包みがある。


「滝夜叉様……一つ、お詫びしなければならないことがございます。九尾の狐のことですわ」


滝夜叉姫は黒髪を揺らし、不思議そうに首を傾げた。


「九尾? ああ、あの鼻持ちならぬ狐のことか。あれは皆で追い出したではないか。何を今更」


「いいえ。あの邪悪な魂がこの異界へ流れ、貴女様の國を脅かしたこと……計らずとも私の因縁が、彼女をここへ引き寄せてしまったのです。申し訳ございませんでしたわ」


天狐は深く頭を下げた。すると、滝夜叉姫は「はーっはは!」と豪快に笑い、天狐の肩を力強く叩いた。


「気にするでない! お主のおかげで九尾という強敵を倒し、わらわの國の結束はさらに強まったのじゃ! むしろ礼を言いたいくらいよ。……それより、その格好はどうした? 旅に出るのか?」


天狐は微笑み、遠く霞む北の連峰を見つめた。


「はい。私を育て、かつて蒙古襲来の折に力を貸してくださった恩人……白狐阿古町様を探しに行こうと思いますの。彼女もまた、あの戦いで力を使い果たし、現世うつしよを去ったはず。……この広い異界のどこかに、彼女の魂が彷徨っている気がいたしますのよ」


第二章:阿古町を求めて、國づくりの旅


「面白い! ならば、妾たちもお主の旅を手伝おうではないか! 隠神刑部、茨木、のっぺ、ぬりかべ! 全員集合じゃ!」


滝夜叉姫の号令とともに、新坂東の精鋭たちが集結した。


「天狐サマの探し物でしょ? ウチの脚なら異界一周なんてソッコーだし!」と茨木童子が拳を鳴らし、ぬりかべが「ぬりー(私も行く)」とはにかむ。

一行は天狐を先頭に、異界の未開の地へと足を踏み入れた。

天狐が探すのは、かつて稲荷山の古い天狐(育ての親)の妻であり、神風を起こす際に自らの命を削って天狐を支えてくれた白狐、阿古町。

旅の途上、天狐はかつての記憶を語った。


「阿古町様がいなければ、私は蒙古の軍勢に呑まれておりましたわ。彼女の放った清らかな霊気が、私の嵐に『核』を与えてくださったのです。……亡くなられたと聞いた時は、心が張り裂けそうでしたわ」


第三章:再会、白き影の導き

幾日もの旅の末、一行は一面の白い彼岸花が咲き乱れる「忘却の谷」へと辿り着いた。そこには、現世で力を使い果たし、行き場を失った霊狐たちが集まるという。


「……阿古町様?」


天狐が呼びかけると、花畑の向こうから、透き通るように白い一匹の狐が姿を現した。それは、かつて稲荷山で見た、慈愛に満ちたあの眼差し。


「……おやおやまぁまぁ。小狐だったあの子が天狐に……。貴女、立派な姿になりましたね……」


白い狐の影は、ゆっくりと一人の女性の姿へと変わった。それこそが、探し求めていた白狐阿古町。彼女は異界に流れ着き、ここで静かに消えゆくのを待っていたのである。

天狐は駆け寄り、阿古町を抱きしめた。


「会いたかったですわ……! 阿古町様、私と一緒に、新しい國を作りましょう。もう、誰も犠牲にならない、狐たちが誇りを持って暮らせる國を!」


第四章:新しき稲荷の國「瑞穂」の誕生

阿古町との再会を果たした天狐は、滝夜叉姫たちの全面協力のもと、異界の北部に新たな聖域を築くことを決意した。


「ぬりかべ、そこへ巨大な千本鳥居を立てるのじゃ! 刑部、お主は周囲の結界を頼むぞ!」


滝夜叉姫の采配が飛ぶ。隠神刑部は喜左衛門狸、おさん狸と共に「守護神」としての知恵を絞って地脈を整えた。

ぬりかべの石壁が美しい赤塗りの鳥居へと姿を変え、茨木童子が運んできた巨岩が社となった。のっぺは狐たちの顔を模した提灯を作り、夜の帳を照らし出す。


「……ふふ。あちきも少しだけ、華を添えましょうかねぇ」


紅葉が扇を振ると、社の周囲に、一年中散ることのない黄金の稲穂と、淡いピンクの桜が咲き誇った。

こうして、異界に新たなる國、稲荷の國「瑞穂みずほ」が誕生した。

国主は天狐。そして、彼女を支える相談役として、白狐阿古町がその隣に座した。


終章:ふたつの國、ひとつの絆


「滝夜叉様。本当に……ありがとうございましたわ。貴女様の國が、私の帰るべき場所を教えてくださいました」


天狐は、新しく完成した社を背に、滝夜叉姫の手を優しく取った。

滝夜叉姫は黒髪を誇らしげに揺らし、最高に快活な笑顔を見せた。


「何、お主の國は妾の國の兄弟分じゃ! 困ったことがあれば、いつでもがしゃどくろを貸してやるぞえ! はーっはは!」


「……それは、お断りしておきますわ。私の國は、静かさが売りですから」


天狐の柔らかな笑い声が、瑞穂の國に響き渡る。

現世で命を散らした阿古町も、今は天狐の隣で、穏やかな陽光を楽しんでいる。

新坂東と瑞穂。

ふたつの國は、異界の風に吹かれながら、これからも固い絆で結ばれていくのであろう。

阿古町様。伏見稲荷の白狐社に阿古町様がいらっしゃいます。また、三ノ峰白菊大神の眷属。白狐の中では最高位でございます。

(白狐社は千本鳥居を上がる前に3つほど社が並んでいる1番左、目につきにくいので一般参拝者はすぐに千本鳥居を潜ろうとされるが、必ず私は阿古町様を参拝してから千本鳥居に向かうようにしている)

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