10話異界激震!~毛むくじゃらの来訪者とモフモフの呪い~
異界激震!~毛むくじゃらの来訪者とモフモフの呪い~
第一章:毛むくじゃらの迷子
「あー、マジ平和すぎて眠いんだけど。滝夜叉サマ、なんか面白いこと起きないわけ?」
茨木童子が欠伸を噛み殺しながら地面に寝転んでいた。隣ではぬりかべが石壁を日除けにして、穏やかな風に身を任せている。
「はーっはは! 茨木よ、贅沢を言うでない。この平穏こそが妾の求めた……ん? なんじゃ、あの塊は?」
滝夜叉姫が黒髪を揺らし、草原の向こうを指差した。
そこには、人ほどの大きさがある「巨大な毛玉」が、コロコロと転がりながらこちらへ向かってきていた。
「……あれは、けうけげんでありんすか? 随分と立派な毛並みでありんすね」
紅葉が煙管をくゆらせ、目を細める。
毛玉が一行の前で止まると、中から「ひょこっ」と、フードを被るように毛にくるまった、一人の愛らしい女の子が顔を出した。
「……あ、あの。ここは、どこですかぁ? 私、じいちゃんと一緒に旅をしていたんですけど、お金を落とすし、嵐にもあうし、もうヘトヘトで……」
潤んだ瞳で訴えるその少女に、滝夜叉姫の世話焼き魂が火を吹いた。
「おお、それは難儀なことじゃな! 安心せよ、ここは妾の國。迷い人は皆、家族じゃ! お主も、じいちゃんもこの國でゆるりと過ごすがよい!」
「……本当ですかぁ? ありがとうございますぅ」
少女は殊勝に頭を下げた。だが、その伏せられた瞳の奥で、彼女の口端がニヤリと吊り上がったことに、誰も気づいてはいなかった。
第二章:じいちゃんの正体と、神代の妖力
「おーい、じいちゃーん! 優しいお姉さんたちが、お家に入れてくれるってぇ!」
少女が空に向かって叫ぶと、天から巨大な入道雲のような、凄まじい毛の塊が降り注いだ。
ドォォォォン! という地響きと共に現れたのは、少女の何十倍もの巨体を誇る、文字通り「生ける毛の山」――白髪けうけげんのじいちゃんだった。
「ほっほっほ……。こりゃあいい場所じゃ。霊気が満ちておる。孫娘よ、よくやったわい」
その声が響いた瞬間、隠神刑部の背筋が凍りついた。反射的に拳銃を抜こうとするが、指先が痺れて動かない。
「……ッ、こいつ、ただの妖怪じゃねえ。神代から生きている、太古の化生だ!」
「はーっはは!面白い! じいさん、お主、なかなかの妖力を持っておるな! 歓迎するぞ、共に楽しもうぞ……」
「いいえぇ、滝夜叉様」
少女の声が、冷たく響いた。
「じいちゃんと相談して決めたんです。ここ、私たちの『毛の國』にしようって」
第三章:全住民、強制もふもふ化!
「なっ……!? お主、何を……」
滝夜叉姫が叫ぶより速く、じいちゃんが巨大な毛の袖を振るった。
「すねこすり・もふもふの呪……ッ!」
刹那、異界を真っ白な毛の嵐が吹き荒れた。
「ちょっ……ウチの右腕がっ! 柔らかくなって力が入んないんだけどーっ!?」
茨木童子の角が消え、耳が丸くなり、気づけば体長三十センチほどの、毛むくじゃらのすねこすりに変身していた。
「ぬ、ぬりりーーー!?」
ぬりかべの左右に浮いていた石壁が、ピンク色の柔らかいクッションのような毛玉に変わり、本体もモフモフの小動物に成り果てた。
「あちきの着物が……これでは歩け、ありんせん……」
紅葉も、清姫も、のっぺも。
さらには、あの武闘派の隠神刑部までもが、軍服を突き破って溢れ出した毛に包まれ、丸っこい「すねこすり」の姿へと変えられていく。
「な、なんじゃこりゃああ! 妾自慢の黒髪が……全身毛だらけではないかッ!」
滝夜叉姫も例外ではなかった。あの誇り高き艶やかな黒髪も、今は全身を覆う白いムクムクの毛に飲み込まれ、彼女は巨大な「すねこすり國主」へと成り果てた。
「ほっほっほ。壮観じゃのう。これでこの國は、ワシらの毛を梳かし、磨き上げるための楽園となったわけじゃ」
「おじいちゃん、すごーい! みんな可愛くなっちゃった!」
けうけげんの少女が、足元で「きゅー」と鳴く滝夜叉姫(すねこすり形態)を、ぬいぐるみのように抱き上げた。
第四章:モフモフ國の危機
國の妖怪全てが、攻撃能力ゼロの「すねこすり」に変えられ、ただただ相手の足をこすって甘えることしかできない存在にされてしまった。
新坂東、絶体絶命!
「きゅ、きゅぅ……!(妾としたことが……)」
抱き上げられた滝夜叉姫は、少女の腕の中でジタバタと暴れるが、その姿はただただ愛らしい小動物でしかない。
「さて、次は誰から洗ってあげようかなぁ?」
けうけげんの少女の不敵な笑みが、モフモフに占領された草原に響き渡る。
國を守るべき英雄たちが全員マスコットに変えられた今、この「毛の王国」の野望を止められる者はいるのか――!?
けうけげんのイメージは鬼太郎5期第28話の毛羽毛現です。目玉親父と仲良くなり、全てを太古に戻そうとするが意見が合わずに、妖怪を全て恐竜に変えてしまう。圧倒的妖力の持ち主。結局は皆の前から姿を消してしまう孤高の存在。
すねこすりは一般的イメージは猫ですが、実は犬のような表現をされている事もあります。
犬も猫も飼っていましたが、足元をガシガシこすられてこけた事がある。こういうところから生まれた妖怪とでも、いうのだろうか、、、。




