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召喚余剰人員の為、魔王は任せて異世界満喫(元祖)  作者: -冬馬-


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第10話 初めての城壁外

 富裕層エリアから中級層エリアに戻ってくると、ほっと肩の力が抜けた。さっきまでの緊張が嘘のように和らいでいく。やはり自分の身の丈に合った場所が一番落ち着く。


 そのまま街の外に出るために、山側の城門を目指して歩いた。


 中級層から城門に向かう道中には貧民街を通らなければならない。歩いているうちに、徐々に街並みが変わっていくのが分かった。建物は古く、道も舗装されていない土の道に変わる。人々の服装も質素になり、中には着古した服を着ている人もいる。道端で遊んでいる子供たちの中には、裸足の子さえいた。


 そんな貧民街を歩いていると、突然前方で騒ぎが起こった。


 一人の男性が路地から出てきた人物とぶつかり、尻もちをついた。出てきた人物は、元は白であっただろうボロボロのフード付きマントを羽織っており、そのフードをかぶっていた。ちらりとこちらを見たその人物と目があった。15歳ぐらいの少年のようだった。目が合ったことにはっとした表情を見せ、彼はすぐに走りだした。


「待て!」


 男性が立ち上がって叫んだが、少年はあっという間に路地の奥へ消えてしまった。


「大丈夫ですか?」


 俺は男性に駆け寄った。


「ああ、ありがとう。怪我はないが……財布を取られてしまった」


 男性は困った顔で(ふところ)を探っている。


「1万イエンほど入っていたんだが……」


 俺は少し考えてから、自分のアイテムボックスからお金を取り出した。


「財布はありませんが、これ、使ってください」


「え?でも、君は悪くないのに……」


「困った時はお互い様です」


 俺は1万イエンを男性に手渡した。男性は驚いた顔をしたが、深々と頭を下げた。


「本当にありがとう。必ずお返しします」


「気にしないでください。お身体に気をつけて」


 男性と別れた後、俺は複雑な気持ちで城門に向かった。貧民街の現状を目の当たりにして、何かできることはないだろうかと考えずにはいられなかった。生活に困って盗みに走る子供。遊んでいた子たちの服装。この格差社会を少しでも改善できないものだろうか。


 何かしら考えてみよう。そう思いながら城門をくぐり、いよいよ城壁の外へと初めて足を踏み出した。




 バルトさんに教えてもらった通り、目の前には大きな山があった。そこから流れる川はすぐに見つかった。水は透明で冷たく、周りには木々が生い茂っている。人気のない静かな場所で、お風呂を楽しむには最適だが、城門から近すぎる。戻れる範囲で、少し離れた所まで歩いてみた。


 ここがベストだなと思う場所を見つけた。城門からは見えることもない場所で、それなりに(ひら)けている場所だ。山の方を見る限り、本当に危険な虫や動物や魔物は現れないんだよね?と不安になる。信じてますよ、バルトさん!


 さて買い物をしよう。俺はスマホを出して通販アプリを開いた。


 まずはテントを検索。一人用の簡単なテントが3,000イエンで見つかった。次に、お風呂用の道具を探す。温度調節ができる魔道具はないかと検索すると、なかなか良いものが見つかった。


「液体温度調節器」と直訳されていそうな商品名。温度計のような形をしていて、-10℃から100℃まで設定可能。くるくるとダイヤルを回して針を動かし、設定したい温度のメモリに合わせる。液体に先端が触れると、一瞬で設定温度に変わるという優れものだ。


 ただし、価格は50,000イエン。


「うーん、なかなかの値段だな……」


 明日クリスフォード家での依頼が成功すれば報酬が入るから大丈夫だろう。そう自分に言い聞かせて購入ボタンを押した。


 釣りはしたことがないので、今日はズルして魚を3匹イエンで購入し、焼き魚用の串とチャッカマンと塩を善行ポイントで購入した。所持アイテムを全てアイテムボックスに入れた状態だと10枠埋まってしまう。アイテムボックスの空きも気にしなければならない。


(おはよう、オラクル。アイテムボックスがいっぱいの時に通販で買い物はできないの?)


『おはようございます、携太さん。いいえ、購入は可能です。保管されずに目の前に出てきてしまう為、先に支障のない物を取り出す必要がある場合がございます』


 早くレベルが上がって枠が増えることを願おう!


 買い物を終えて、俺は川辺にテントを設営した。夕日が山の向こうに沈み始め、空がオレンジ色に染まってきた。急いで(まき)になる木を集めた。後は(まと)めて写真でコピー。相変わらず便利すぎる。


 さっそく(まき)にチャッカマンで火をつけ、串に刺した魚を焼き始める。塩を振って香ばしい匂いが立ち上ってくると、なんだか本格的なキャンプをしている気分になってきた。


 一匹目が焼き上がり、熱々のまま口に運ぶ。


「うん、美味しい~!最高だ」


 元の世界ではやったことないことが出来ていて、充実していると感じた。


 一匹目を食べ終えてから二匹目を焼き始めた。すると、茂みの中からガサガサと音がした。


 俺は串を持つ手を止めて、音のした方向を見つめた。


(何だ?鳥か?それとも……まさか魔物?)


 バルトさんは安全だと言っていたが、やはり城壁の外。何が出てきてもおかしくない。心臓がわずかに早鐘を打つのを感じながら、俺は息を殺して様子を(うかが)った。


 茂みにいるのは、いったい何だ……?——

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