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第二章第8話 お約束

 皆さんこんにちわ。 ピィといいます。

 なんでも私のパパ、クラブが作者に愛想を尽かしたとかなんとかで主観するのを全力で拒否したので代わりましてピィが僭越ながら努めさせて頂きます。

 はじめてなので緊張していますが、ご愛嬌ということで見逃して頂けると助かります。


「あれだろ、俺が死ぬ寸前、俺、この戦い終わったら結婚するんだ、とか言わせる気だろ!」


 それは死亡フラグとかいう、有名な呪詛ですね。 パパは物知りです。


「ヤバい、ヤバい! 姉にどう説明してもわかって貰えない展開になるのは明白だ。 そして、そして俺は幼女を連れ込んだという誤解を植え付け俺をボロボロにするという典型的なお約束王道パターンじゃないかああああああああ!」


 これはあれですね。

 喋る事が出来るようになったピィと会話遊びをしてくれるための前振りですね。 ピィは自慢ですが頭いい子なので分かります。 ふふふ……。


「パパ、ミエルお姉ちゃんはそんな人じゃないと思います」


「は? てかパパ禁止! それまたいらぬ誤解生む!」


 パパはテンパっています。 おもしろいです。


「え〜〜? いっつもパパって言ってるのになんでダメなんですか?」


「いつもピィとしか言わないだろ!」


「いわゆるあれです。 鳥の時はどんな言葉を喋ってもピィと変換されるんですよ?」


「んな事わかるかあああああああ!」


「何騒いでるの、クラブ?」


 ドアの向こうでミエルお姉ちゃんの声がします。

 その声を聞いたパパの顔は顔面蒼白になっています。


「な、何でもない。 すぐ降りていくからちょっと待っ………」


 カチャリと。

 ドアを開けるミエルお姉ちゃん。


「!!!」


 オワタとパパの顔に書いています。

 オワタてなんだろ?


「おはようですよ、ミエルお姉ちゃん」


「おはようございます………んと?」


 私を見てキョトンとするミエルお姉ちゃん。

 そうでした、この姿で会うのはお初です。 ちゃんと説明がいりますね。


「ピィはピィですよ」


 完璧な説明です。


「ああ、ピィちゃんなんだ。 変わったね」


 説得完了です。 ミエルお姉ちゃんはやっぱりミエルお姉ちゃんでした。


「ち、ち、違うんだ、姉。 これはピィであってそこら辺から連れ込んだ幼女ってわけじゃ……」


 パパは解決しているのにまだ狼狽えてます。


「何言ってるの、クラブ?」


「ピィちゃん、朝ご飯はサンマだけど大丈夫?」


「ピィ、サンマ大好きです! あ、でもミエルお姉ちゃんのご飯どれも好きですよ?」


「ありがとう、ピィちゃん。 おかわりは沢山あるからね」


「わぁ〜〜い!」


 ミエルお姉ちゃんはやっぱり優しいです。


「クラブもピィちゃんも早く降りてきなさいね」


 そういって、ミエルお姉ちゃんは出ていきました。

 ふと気付くとパパは茫然としています。

 どうしたんでしょう。 ピィ心配です。


「なんであれであっさり納得するんだ?」


 なんだ、そんな事ですか。


「ミエルお姉ちゃんだからです」


 ピィの言葉を聞いたパパはキョトンとした顔をして、そしてお腹を抱えて笑い出すパパでした。


「そうだよな、確かにあれが姉だわ」


 ふと、机の上に一枚の紙があります。

 興味本位で見てみました。

 そこにはパパの顔を書いた絵と、パパの名前。 そして冒険者登録証という文字が書かれています。


「パパ、これなんですか?」


「ああ、出しっぱなしだったか。 これ今日中にコピーしてアカデミーに提出しなきゃいけない大事な書類なんだよ」


「パパの名前が書いてあります」


「うん、そうだ……よ…………、ってピィ、読めるの!?」


「読めますよ。 冒険者登録証、クラブ=アルフォンツ。 冒険者ランクB。 あれ? パパ、セカンドネーム違うですよ?」


 パパのセカンドネームはエンセンツのはずです。 アルフォンツって誰でしょう?

「まあ、簡単に言うなら冒険者としての俺の名前だよ。 本名を登録しなきゃいけない決まりはないしな」


 ハウスって組織は適当なところなんだなぁ、って思いました。


「ということはピィはどっちのセカンドネームを名乗るべきですか?」


「はい?」


「ピィはパパの娘ですよ? パパのセカンドネームを名乗るのは世間一般的に当然だと思います」


「ピィはピィじゃダメなの?」


 む。

 わからないパパですね。


「パパ、いいですか? セカンドネームというのは家族であるということを示す大事な名前ですよ。 それともピィはパパのセカンドネームを名乗っちゃダメな理由とかあるんですか?」


「いや、ダメな理由はないけど」


「じゃあ、アルフォンツとエンセンツ、どっちを名乗ればいいですか?」


「…………じゃあ、アルフォンツでお願いします」


「はい、ピィはピィ=アルフォンツって名乗ります!」


 さて、ご飯です。


「おはようですよ、ロベルトさん」


「あ、ああ……、おはよう。 ピィくん」


「おはようですよ、ルゥさん」


「おはよう、ピィ」


 ロベルトさんは困惑していますが、ルゥさんは普段通りです。

 ロベルトさんは新聞を読んでいます。

 行儀が悪いですね。

 ロベルトさんが読んでいる新聞の見出しが見えたので読んでみました。


「ファラス王国、内乱終結宣言発表」


 読めますが意味がわかりません。

 お忘れかもしれませんがピィは、生まれたてホヤホヤです。

 世情に関しては無知です。


「………は?」


 ロベルトさんはポカンとしています。


「ク、クラブくん。 ピィくんは文字が読めるの?」


「そうらしいです」


 パパは何かを悟ったような顔をしながらご飯をパクパク食べています。

 魚は焼き魚に限ります。

 大根おろしに醤油をちーーっとかけてアツアツ炊きたてのご飯で食べるサンマは最高です。


「ピィ、あなた年の割に渋いわね」


 黙々と食べながら私の嗜好に突っ込みを入れるルゥさん。


「ミエルお姉ちゃん、おいしいですよ」


「ありがとう、ピィちゃん」

 そうして、おいしい朝ご飯は終わりました。


「あれ、パパ。 どこか行くんですか?」


「アカデミーに書類を提出に行って、その後ハウスにでも顔をだそうかと思っているけど」


「おでかけですか。 ピィも準備するから待っていてください」


「準備? って、待てピィ!」


「はい?」


 準備で忙しいのに一体何事でしょう?


「お前、まさかついてくる気か?」


「ついていきますよ。 ピィはパパと遊ぶ約束したはずです」


 そんな約束なんかしていません。 捏造です。

 パパはそんな約束したっけ、と考え込んでいましたが、なんか観念したような顔をして


「約束したのなら仕方ない。 だけど、アカデミー始まったら付いてきちゃダメだぞ?」


「なんでです?」


「アカデミーというところは試験に合格しないと入っちゃいけないんだよ。 ピィ、試験受けてないだろ?」


「どうやったら試験受けれるですか?」


「早くても来年までは待たなきゃな」


「編入試験という手もあるけどね」


 横からさっくりと助言をしてくれるロベルトさん。

 パパの顔がなんか複雑な顔をしています。

 余計な事いうな、このKY、って顔に書いています。

 KYってなんでしょう。


「ロベルトさん、KYって何ですか?」


「ん? KYと言うのはね、空気読め、と警告する時、または空気を読めない人を侮蔑する時に使うのが一般的かな。 綺麗と言い難い言葉だからピィくんは覚える必要ないよ」


「なる程、勉強になりました」


「そんな勉強必要ない、必要ない」


「ピィくんが望むのなら編入試験受けて見るかい?」


「はい!」


「マテソコ!」


 パパはピィとロベルトさんの話に割って入ります。

 これが世にいう突っ込みですね。

 さすがパパです。 ボケから突っ込み、何でもこなす万能型です。


「止める気かい、クラブくん」


「ああ、断固として反対させてもらう」


「いいかい、クラブくん。 アカデミーというところは学びたいという確固たる意志を持つ物を年齢が適していないとかいう意味で拒否はしないところだ。 学びたいという意志と意欲さえあれば誰だって受け入れる場所だ」


「なら試験などいらんだろ?」


「試験というものはね、学びたいという意志と意欲を見極めるものさ。 アカデミーで学びたいのなら、それに適した意欲が必要だからこそ、みんな真剣に勉強するんじゃないかな」


「ピィは学びたいんじゃなくて、俺にまとわりつきたいだけなんだよ!」


「羨ましい話だ。 僕とてミエルさんと終始一緒にいたいから助手としようと申し出たことはあるが、勉強なんてめんどくさいからイヤですの一言で一蹴された僕の気持ちなんか、クラブくんにわかるものか!」


 ダメだ、この中年。 早くなんとかしないと、とパパが呟いています。

 面白い環境です。


「てなわけでピィくん。 入学するためにはハウスの冒険者登録証が必要だ。 さっそく登録に行こう!」


「はい!」


 ロベルトさんはいい人です。

 パパはなぜか茫然としていましたが……。

「そういえばロベルトさん」


「なんだい、ピィくん?」


「ピィもパパみたいなランクになれるですか?」


「修練あるのみだよ」


「分かりました。 ピィも修練あるのみです」


「うん、いつかBランクにいけるからね」


「は?」


 素っ頓狂な声を上げ、パパはロベルトさんを見ます。

「な、なんで俺がBランクって知ってるんだ?」


「なんでって……、普通の人が努力の果てに辿り着けるのはBランクといいます。 それについ最近、ファラスの爆炎がポシューマスに渡ったという話が情報屋界隈で賑わっているし。 彼のランクはBですしね」


「いつから気付いた?」


 ロベルトさんはニヤリと笑う。


「冒険者としての勘かな」


「勘だと?」


「そんな話が情報屋界隈で聞こえだしてその時期にファラスからやってきたからね。 そりゃ僕でなくてもそうなのかって考えるさ」


 うん、話についていけません。

 わかることといえば、なんとなく場の空気が凍りだした事でしょう。

 こういう時、どうすればいいのでしょうか?

 ピィでは思いつかないので、成り行きを見守る事にしました。



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