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第二章第7話 合格発表

 結果発表当日。

 実技試験があんな風になったのでかなり不安だったが、とりあえず合格していた。

 おめでとう、俺。

 ありがとう、俺。

 こうして俺の長かった戦いは無事合格という最高の結果を残した。

 これから始まるアカデミー生活を期待に胸を膨らませる。

 これからがクラブの冒険の始まりだ!


 長らくご愛読ありがとう御座いました。提督立志伝……………完!!

 ふじぱんの次回作、「探偵91、事件にでしゃばってしまったばっかりに名誉毀損罪で送検」を乞うご期待下さい


「いきなり打ち切りネタはないと思いますよ?」


「読心術でもあるのか、君は……」


「お互い合格したようですね」


 今唐突に会話を始めたのは千冬と名乗る少女。

 実技試験の時のパートナーだった。


「合格おめでとう。 んじゃ、新学期!」


「え? どこに行くんです?」


 用件は済んだしとっとと帰ろうとしていたんだが、問題でもあるのか?


「聞いてないんですか? 合格者にはこれから説明会があるって話」


「説明会?」


「説明会に出ないと入学辞退と見なされますよ?」


 提督立志伝第2章、主人公説明会に現れず入学辞退になったので話が進行不能に陥ったため、これで完結します。 長らくのご愛読ありが………。


「そのネタついさっきしませんでしたか?」


「繰り返しはギャグのお約束だ」


「ところでクラブさん」


「ん?」


「ちゃんと魔力鍛錬しているんですね」


 は?


「まるで大魔法を撃った後みたいに消耗していますけど、やりすぎは逆に毒ですよ」


「何……の話?」


「隠す事ないですよ。 私なんて合格発表まで緊張して何も手がつけれなかったですが、クラブさんはいつもの習慣を崩さず鍛錬を欠かさなかったんですよね?」


「いや、俺は魔力鍛錬なんかした事ないぞ? そもそも魔力鍛錬のやり方なんか知らないし」


「え?」


 千冬はキョトンとした顔で俺の顔を見る。


「ん〜〜……。 ではクラブさんはなんでそんなに魔力を消耗しているんです?」


 昨日寝れなかったから夜遅くまで遊んでいて寝不足だからか?

 いや、魔力というものは使わないと消耗しないし、寝不足で魔力が抜けてしまうという理屈は聞いたことがないな。

 そういや千冬は結界感知とか魔力の流れを読む力があると言っていた。

 その千冬が会った時と比べて魔力が消耗していると言う。

 千冬に会ってそして再会するまで何があったか頭の中で思い返してみる。

 特別なイベントといえば、ピィが産まれたくらいか。

 それが原因か?


「千冬さん」


「千冬でいいですよ?」


「………そっちは呼び捨てを拒否した割に自分は呼び捨てにしろ、と?」


「宜しくお願いします」


 千冬はにっこりと笑って答えた。


「ともかくその話は後でするとして、そうだな……、人の魔力を食べる鳥とかいる?」


「いますよ」


 あっさりと千冬は答えた。


「使い魔の類は魔力を糧にします。 一般的に犬や猫を使い魔にする魔法使いもいますし、鳥を使い魔にする人も当然います」


「使い魔以外だと?」


「使い魔以外で人の魔力を糧にする鳥ですか? ん………」


 千冬は考え込み、そして思い出したようにいう。


「神鳥や魔鳥の類なら……」


「それって赤い鳥とか?」


「赤い鳥といいますと、やはり一番に頭に浮かぶのはフェニックスですね。 不死鳥とも死を喰う鳥ともいいますか。 でも、フェニックスっていうのはあくまで伝説ですよ」


「?」


「フェニックスというのはそれ単体で絶対神に次ぐ神格ですし、実際見た人はいないんじゃないですか?」


「見た人はいない?」


「ええ。 そもそもフェニックスに類似している精霊とかいますしね。 実際に火を体に纏い火を扱う鳥の精霊をフェニックスと呼称して、フェニックスの定義を幅広くしてしまっている風潮ありますし。 そういう意味では赤い鳥=フェニックスになってしまいますね」


 俺の頭の中でピィピィ言いながらピィが踊っている。

 あの脳天気極まりないバカ鳥が絶対神に次ぐ神格のフェニックスなわけがない。

 ありゃただ赤いだけの鳥だわな。

 ところで俺はなんで魔力を消耗しているのか、とそこに疑問がいくわけだが。

 正直、言われるまで魔力が消耗している事に気がつかなかったし、実生活ではなんの支障もない。

 てなわけで、その問題はひとまず放置することにした。

 お約束? 主人公補正?

 いくら作者がお約束大好き人間でも俺にここまで独白させたんだ。

 それに作者の性格上、美少女擬人化の お約束とかしそうだ。

 朝起きたらピィが女の子になって寝ていて俺を起こしにきた姉に見つかり………。

 やめてくれよ、マジでそれだけは。

 想像するだけでも怖いのに、実際にそんなことにしやがったらこんな駄作の主人公降りるからな。


 そんな事を思っていたら入学説明会は終了した。

 つまんない事考えながらしっかり必要な情報は拾ってある。

 入学式の日程に入学までに揃える物。

 学費関連に入寮可能な条件。

 学費に関してはある程度貯えがあるので、なんとでもなる金額だった。

 入学前に揃えるものも関しては、自身が得意な武器とか、揃えるのにそんなに手間いらないからこれも良い。

 入学式の日程は来週頭。 これも問題ない。

 入寮可能な条件がちと厄介だ。

 今は姉やロベルトの家に世話になっているがさすがに卒業までいるのは無い。

 姉あたりは気を使うなとか言いそうだが、それは無理である。

 もともとポシューマスでは一人でやっていくつもりだった。

 そもそも姉がポシューマスにいることはイレギュラー。

 今まで甘えてしまったが、やはりこのあたりはしっかりする必要がある。

 差し当たり当面の生活費はあるので、アカデミーに通いながらハウスの依頼をこなしていくつもりだ。

 ハウスって何だって?

 ハウスというのは冒険者や傭兵の仕事をクライアントを介して仲介してくれる所だ。

 簡単に言うなら冒険者ギルドと傭兵斡旋所が合併したようなもんである。

 ついでに情報屋やら、冒険に必須な武具道具の販売やアルバイトの斡旋などもやっている。

 また、宿や酒場も揃っておりここがミッション終了の帰還場所となっているので、冒険者たちは皮肉と親しみを込めてハウスと呼称し、それが定着したそうだ。

 で、俺は冒険者ギルドに登録している。

 傭兵の方も登録しようと考えたこともあるが、アカデミーに通うための資金集めに使用しているため、遠征や徴集で長期間強制的に拘束されるのでアカデミーの合否が出るまで見合わせていた。


 どうやら話が脱線した。

 話の脱線はどうやら血筋らしい。

 リーズ兄もしょっちゅう話を脱線する。

 リーズ兄もメロンパンとあんパンはどっちがうまいと言う話から古代ファラス文明の王朝のハーレム話にいつの間にかなっていたりするし……。

 だから話を脱線するなっての!


「クラブさんの家にかけられた呪いの類なんでしょ、その脱線癖は」


 千冬はコーヒーを飲みながら先ほどの感想をもらした。


「ん?」


 ふと気付くと俺は千冬と喫茶店でコーヒーを飲んでいた。

 さっきまで俺はアカデミーの入学説明会の会場にいたのに気付いたら外の喫茶店で千冬と一緒にくつろいでいる。

 なぜ?


「えっと……、私がコーヒーでもご一緒にどうですかと言ったらこうなりましたよ」


 果てしなく俺、待て。

 つまり何か?

 考えごとしてる時、拉致監禁されていても気付かないのか?


「その言い方だと私がクラブさんを拉致監禁している犯人に聞こえますね?」


「OK。 ちょっと整理しよう。 なんで俺がここにいるのはわかった。 で、なんで千冬さんもいるんですか?」


「ですから私の呼び方について入学説明会の前に後で話すって流れになりましたよね?」


「はい?」


「だから私の事は千冬と呼んでください」


「それは無理な相談だな」


 一度言ったが、基本的に異性を呼び捨てで呼ぶのは恥ずかしいものがある。

 実の妹ですらそうなのに赤の他人を呼び捨てに出来るほど俺は図太くない。


「硬いですね」


「千冬さんには負ける」


 こういうのを世にいう平行線という。

 埒があかないので話をすり替えよう。


「そういえば千冬さんはハウスの登録すでにしてるの?」


 入学準備にハウスの冒険者としての登録というのがある。

 入学までの日数を考えると今すぐ行かなければアウトだ。

 ハウスに登録するにはやはり簡単な試験と検査がある。

 それの選定に時間がかかるのだ。


「私は家柄上、もう登録しているんですよ」


「家柄?」


「ハウスの冒険者証明書って早い話パスポートみたいなものですからね。 持ってなければ入国出来ない国とかありますし」


「じゃあ依頼とかは受けたことないんだ?」


「何度かはありますよ。 私冒険者ランクEです」


 冒険者ランクとはG→F→E→D→C→B→A→AA→AAA→Sの10段階ある。

 ランクによって受けれる依頼が変わってくるのだ。

 まずみんなGから始めてクエスト達成を積み重ねてランクを上げていくシステムといえば伝わるだろうか?

 ついでにどうでもいい話だが、S以上のランクもある。

 S以上はSS、SSSって感じでSが増えていく。

 本当にどうでもいい話だった。 申し訳ない。


「ランクEって事はそこそこやってるじゃないか」


「小さな依頼をコツコツですよ。 姉と一緒に」


「姉? 千冬さんにも姉がいるんだ」


「おっかない姉ですよ。 私にとっては恐怖の対象ですね」


 などと、ほんわかしながら言う。

 口では憎まれ口を叩くがそんな姉が好きなんだろう。

 だから俺も言った。


「うちの姉はかわいいぞ」


「かわいい?」


「なんていうか、一応姉なんだが、感覚的には妹みたいだな。 天然だし」


「天然?」


「姉の事を話せば一晩話してもまだ足りない。 そんだけ逸話のある人だから」


「そうだね」


 と、男の声が肯定で帰ってきた。

 振り返るとそこにはロベルトがいた。


「やあクラブくん、デートかい?」


「んなまさか!? 千冬さんとコーヒー飲んでただけですよ!」


「それを世間一般でデートと言うんじゃないかな?」


 俺の認識でもそういうことになる。

 だがそれは千冬に対して些か失礼だろう。

 リーズ兄の欠点である無神経なほどあっちこっちにフラグを乱立しまくるという所は似ていないと自負している。

 さすがにあれは一般人の見地としてはダメダメだろう。

 ありゃ真似しちゃいけない。

 だからエルゼさんのような悲劇が起こるんだから。

 エルゼさんって誰だって?

 話すと長くなるんで気が向いたら序章の35話〜42話参照のほどお願いします。

 さて、この憎たらしい中年をどうしてくれよう……。

 いつの間にか俺の隣に腰かけてるし。


「君たちはハウスの登録終わっているのかな?」


「はい。 私もクラブさんも登録終わっています」


「クラブくんも? そりゃいい」

 

 何がいいんだ?


「君もエンセンツ商会の息子だからわざわざ冒険者登録せずとも食べていけるだろうに」


「え? クラブさんってエンセンツ商会の人なんですか?」


 ちょ!

 待て、そこの中年!


「いや、エンセンツ商会の三男だからなんの権限もないんだから、お願いだからロベルトさん、その話はやめてくれ」


 言い終わった後、いかに支離滅裂な事を言っているか理解する。

 焦りすぎ、俺。


「すまない。 僕もクラブくんの気持ちがよくわかるのに、ついついはしゃいでしまった」


 と言って頭を下げるロベルト。

 そうだった。

 こいつもユハリーンの豪商の息子で、家に縛られるのが嫌だから冒険者になった俺と似た者……。


 なんとなくシンパシーを感じる……。

 だが、こやつは姉をかすめ取った張本人。

 気を許すわけないだろ、コンチクショウ。


「ところで、知り合いなんですか?」


 千冬は察してくれたようで、話題を切り替えてくれていた。 いい娘や。


「うん。 僕はクラブくんのお姉さんの旦那です。 一応アカデミーの講師をしています。 名前はロベルト。 宜しくお願いします」


 とかいけしゃあしゃあとほざく中年。


「千冬です。 宜しくお願いします」


 お互い頭を下げ合っている。


「まあ話を戻すけど……」


 ロベルトのセリフに警戒する。

 またエンセンツ商会がどうのこうのと……。


「千冬くんは高ランカーだったりする?」


 全く関係ない話でした。


「いえいえ、私はまだEの駆け出しもいいところですよ」

「いや、Eなら上級のクラスに配属されるから、僕の授業で受け持つ事になるね」


「そうなんですか?」


「上級のクラスに配属されるのは経験者のクラスだからね。 E以上のランクはみんな上級クラスだよ」


「私的にはまだまだ駆け出しのつもりですから上級クラスとか言われると萎縮しちゃいますね」


「そういえばクラブのランクはいくつなんだい?」


 二人の視線が一緒に俺に向く。

 俺はニッコリ笑ってコーヒーに口をつけた。

 いわゆる黙秘権発動というやつだ。


「クラブさん?」


「クラブくん?」


 空気の読めない連中だ。

 てか、間違い無くこれ答えたら空気読めないやつになるだろ。

「わかった、当ててみろってことだね」


 なんでそうなる。


「ヒント下さい、ヒント」


 ノリノリな千冬嬢。


「私より上ですか?」


 ニッコリ黙秘。


「ヒント無しとは厳しいね。 よし、じゃあ……D?」


 ニッコリ黙秘。

 いずれバレる事だけどこの場で公表する気はない。


「なるほど……。 答える気サラサラないらしいね?」


 当然。


「っと……。 もう日が暮れようとしていますね。 早く帰らないとミエルさんが拗ねる。 僕はそろそろ帰るのでクラブくんは千冬くんを送っていくこと」


 そういってロベルトはそそくさと席を立って去っていった。

 ロベルトのいう通り、日が暮れようとしている。

 千冬を送ろうと声をかけるも、


「ああ、私は大丈夫です。 姉たちが迎えにきてくれるので」


 たち?

 まあ、どうでもいいか……。

「じゃあ、入学式で」


「はい、入学式で」


 そう挨拶して千冬と別れた。



 そしてその夜は特に事件は無くぐっすりと眠った。

 そして朝……。

 俺はゆさゆさと体を揺すられている。


「パパ、朝ですよ。 ピィと遊んでください」


 ………………。

 うん、寝ぼけているんだろ、俺は。

 ピィが喋るわけない。

 おそるおそる目を開けると、七歳くらいの女の子がこともあろうに俺を揺すっていた。


「ピィ?」


 半信半疑……。 いや、ある程度把握してしまっているが信じたくないので聞いてみる。


「はい、おはようですよ、パパ」


「…………………」


 お約束じゃねえかあああああああ!!


「OK。 擬人化までは認めよう。 で、なんでお約束的な女の子なの?」


「女の子も何もピィは女の子ですよ?」


 プツンと、怒りがこみ上げてくる。

 いや、ピィに怒っているわけではない。

 やめろといったのに素知らぬ顔でお約束をやりやがったヤツに怒っているわけである。

 覚えてやがれ、コンチクショウ。

 ヤバいくらい書いてて楽しい作者自己満足の話です。

 リーズにしろ、銀太にしろいじりにくい主人公ですのでこんなノリにできなかったのですが、クラブは作者ふじぱんにとっていじりがいのあるキャラクターです。

 読者置いてきぼり感強いですが、それでもふじぱんはクラブをいじるでしょう。 だって楽しいし。

 お約束大好きふじぱんです。


 さて、話は変わりますが、本当はもっと早く第7話を投稿できるはずでした。

 本来の第7話は、合否前にピィと遊びまわるクラブだの、6話ででた鉄の蜘蛛のその後だのを書いていたんですが、アカデミー編なのにまだ7話で入学すらしてないとかどんだけ引っ張る気か……という結論に至りまして、ボツにしました。

 鉄の蜘蛛に関しては後々語ると思います。 書くスペースを確保できなければお久しぶりの外伝にでも。

 投稿時に余裕がある場合は、あとがきにでも簡単な設定解説でも載せようか思案中です。

 え? 不要? 外伝で書け?

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