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第二章第5話 実技試験3

 どうも、はじめまして。 私はポシューマスアカデミーの一学年に在籍するエルミエルといいます。

 只今、進級試験といいますか、追試といいますか、二学年に進級するための大事な試験をしています。

 恥ずかしながら、学年末の試験結果が芳しくなく、進級できるか出来ないかの瀬戸際なのです。

 私の追試験での課題は受験生の実技試験での評価。

 私のターゲットは受験番号777番のクラブ君と、受験番号1203番の千冬さん。

 試験内容はアカデミーが要所要所で設置した罠を回避し、目的地につくことだそうです。

 で、私の試験内容は受験生にバレないよいついて行き、評価を教師に報告することなのです。

 事前連絡を受けていた罠を発動すらさせず、次々と回避していきます。

 危険回避能力がすごく高いですね、あの二人。

 この道を選んだのはどっちの子かわからないけどかなり運が強いみたいですね。

 ただ気になるのは女の子の方がたまに私の方を向くわけです。

 なんといいますか、私のこと気付いている節があります。

 ヤバいです、ヤバいです。

 バレたら私、留年確定です。

 ただ、なんとなくですが、あの女の子は私の方の事情を察してくれてるぽい節もあります。

 そうだとしたら高評価です。

 二人は原っぱを突っ切って森に入ろうとしています。

 あそこの森から私の仕事が始まります。

 あそこの森は罠てんこ盛りですから、いくら運が強くてもどれか引っかかってくれるでしょう……。

 ふと、二人の前に巨大な蜘蛛が立ちふさがっています。

 あんなトラップありましたっけ? ええ〜と……。 ん〜〜と……。

 私が考えていると蜘蛛の目からピンク色の光が女の子めがけて放たれました。

 男の子がとっさに女の子を突き飛ばし、女の子のいた地点を光が突き抜けて、地面を抉っております。


「〜〜〜〜!?」


 あんなのアカデミーのトラップなわけありません。

 試験ではないです。 あれは異物です。 アンノウンです。

 あんな危険なトラップ、授業ならいざ知らず入試試験に投入されるわけありません。

 そしてあの蜘蛛、間違いなくあの二人を殺傷することを目的に行動しています。

 助けなきゃ。

 でもあの蜘蛛、私じゃ対処できないですね……。

 私、自慢じゃないですが、かなりの落ちこぼれを自負していますから……。

 ………………。

 自分で独白して凹んでしまいました。

 そんな暇はありません。

 私の後輩になるかも知れない子たちのピンチです。

 ここは虚勢を張ってでも助けなきゃ!

 私は自分に一時的に身体能力を向上させる神聖魔法を唱えました。 この魔法はブレッシングという名称なのですが緊急事態なので詳しい説明は割愛させていただきます。

 そして、神聖魔法のキリエレイソン。 私の身体に物理攻撃を遮断するバリアを張り、蜘蛛の注意を引きつけるための神聖魔法で私が使える唯一の攻撃魔法、ホーリーライトを放ちます。

 ホーリーライトは蜘蛛に当たるには当たりましたが、全くダメージが通りません。

 受験生の二人に私は


「私がこれを引きつけるから逃げて下さい!」


 と、言いました。 しかし、二人とも逃げてくれません。

 ……なんで?


「逃げれるならとうの昔に逃げてますよ、先輩」


 男の子が私に向かってそう言いました。

 というか先輩?

 女の子にはつけていた事は気付かれていたと思っていましたが、まさか男の子の方にも気付かれていたとは!?

 いくら何でも私未熟すぎやしませんか?

 しかしすごく気になる事を男の子は言いませんでしたか?

 逃げられるならとうの昔に?

 ふと気付くと、蜘蛛の目は私を捉えていました。

 それに気付いた瞬間、レーザーが私に向かって放たれ、レーザーはキリエレイソンで張ったバリアを破ってしまいました。

 その衝撃で多少私もダメージを受けてしまったので傷を治療する魔法ヒールを使い、改めてキリエレイソンを張ります。 ヒールとキリエレイソン、そして私は基本的に回避や詠唱速度に特化した支援ではなく、耐久に特化した支援です。

 ですので魔法の源の精神力が枯渇するまでなら耐える事ができるみたいです。


「先輩!」


 男の子が駆け寄ってきます。


「私は大丈夫です。 だから早く逃げて欲しいんですけど」


 なかなか逃げてくれない後輩に苛立ちますが、敵は待ってくれません。

 新たなバリア、キリエレイソンを張ります。

 そのタイミングで男の子が手に持っていた何かを私に向かって投げつけてきました。

 私の方に飛んでくるのは導火線に火がついた爆弾。


「え? え!? ちょ!!」


 爆弾は私の目の前で豪快に破裂しました。

 私は爆発の瞬間に目を瞑りましたが、爆発の衝撃はいっこうにありません。

 そぉ、っと目を開けると、私の周りに青いもやがかかっています。 そして、私の張ったバリアの層が普段に比べ三倍程の厚みになっているではないですか。


「こ、これって……」


 男の子はすでに蜘蛛の方を向いており、野球ボール大の麻袋を蜘蛛に向かって投げつけました。

 麻袋は、蜘蛛の体に当たると同時に袋の中に入っていた小麦粉のような白い粉が巻き上がりながら出てきます。

 男の子はニヤリと笑い、導火線に火のついた爆弾を蜘蛛に投げつけました。

 爆弾は蜘蛛の頭上で爆発。 そしてその爆発に連鎖するように蜘蛛の身体の周りを覆っていた白い粉が炎と爆音と共に爆発を繰り返しています。


「今だ!」


 男の子の声に反応した女の子は双銃で蜘蛛の頭部の一点を寸分狂いなく同じ場所に弾を撃ち続けます。

 やがてパカン、と頭部が爆発した蜘蛛は動かなくなりました。


「凄い精密射撃だな……」


「クラブさんこそ、爆弾なんて危険物いつも持ち歩いているんですか?」


「俺は剣も使えなければ銃も使えないがこいつの扱いだけには自信があるんでね」


 今年の新入生は本当にレベルが高いんだなぁ、っと感心しました。

 私がカッコつけて出てきた割には一番役に立っていないのはさておいて……。


「先輩出てきてくれたおかげで反撃できましたよ、ありがとうございます」


 男の子がぺこりと頭を下げる。


「い、いえ……。 私何もしてないですよ?」


「先輩があの蜘蛛を引きつけてくれたおかげでこっちへの注意がそれたんで反撃できたんですよ。 正直二人じゃ防戦一方だったからいつかこっちが力尽きてやられてました」


 んと。

 それって私が囮になったから反撃出来た、って事?


「ところで先輩」


「は、はい?」


「出てきて大丈夫だったんです? 俺らの試験官でしょ?」


「そ、それは……、だってあんなの……」


「やっぱりこれはアカデミーの張った罠ではない、って事ですね」


 女の子がテンパる私の代わりに言った。


「だよな……。 いくらなんでもこれは人を殺傷する事を目的とした兵器のようだし」


「兵器? こんなのどこの誰が作ったんですか?」


 女の子は蜘蛛の残骸を調べながら言う。


「ウェンデスの科学かな、とも思ったけどウェンデスは何の目的でこんなのをここに配置したのか……」


「つまりこれはウェンデスの兵器ってことです?」


「半々……。 いや、やっぱり限りなくその可能性は低そう」


「う〜〜ん……。 考えても結論は出そうにないですね」


 男の子と女の子は蜘蛛を調べながらうんうん唸ってます。

 私は座り込んでそれを眺めていた時。


「エルニエル君」


「え?」


 声をかけられ、声の方を向くとロベルト先生が立っていました。

 そういえば私、救難信号を出していたんでした。 それをキャッチして駆けつけてくれたのでしょう。


「………………う〜〜ん。 エルニエル君、状況の説明をしてくれないかな?」


「えっとですね……」


 私はとりあえず今までの事を説明しました。


「…………ふむ。 解せない事は多々ありますが、目の前の残骸をみる限り信じるしかないようですね。 しかし、結界内にこんなのが現れるとは……」


 ロベルト先生は男の子の方に近付いていき声をかけました。


「やあ、試験は順調かい?」


「ロベルト……先生?」


「災難だったようだね。 しかし、こいつを君たちだけで破壊したのかい?」


「ええ、まあ」


「ふむ。 とりあえず君たちはアカデミーに戻っていいですよ。 ゴールに行くまでもありませんから」


「それってまさか試験俺ら落ちた!?」


「いえいえ……。 こいつを倒すだけの身体能力があることがわかったんです。 今更試験する必要もないでしょう。 それにこれに関して幾つか聞かなければいけないこともありますしね」


 今気付いたのですが、私の追試はどうなるのでしょうか?


四話の失態の言い訳……


まあ、エルニエルというキャラクターがクラブたちのピンチに登場する予定だったんですが、書いているうちに、エルニエルの出番必要ないのでは、と思い至った訳です。

しかしエルニエルは第二章で高頻度で出番のある予定のキャラクターなので出さないわけにもいかず、第四話をぶつ切り終了とかいう事態をやらかした次第です。

いくら言い訳した所で私の文章構成力が上がるわけでもないですので見苦しい言い訳はこのあたりで(汗

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