第二章第42話 VSカメレオン1
リグウェイの中心部にそびえ立つ時計塔。
リグウェイに古くからそこにあり、リグウェイの住人に言わせれば象徴というべき建物だった。
そここそカメレオンの本拠地だった。
「本当にここがカメレオンの本拠地なのか?」
「ええ、間違いありません。 私ら黒一門の情報網を舐めないで頂きたいものですね」
えへんと胸を張る金套。
「それともなんですか? この情報を疑うとでも??」
「い、いや……、そうは言っていないが……。 でもなんていうか敵の本拠地にしてはあまりにも手狭というか、なんというか……」
あんまり釈然としないが、自信満々に金套が言うのならば間違いはないのだろう。
「で、クラブさん、そろそろ仕掛けますか?」
「俺はいつでもいいよ……。 はじめるならはじめよう」
「了解です。 では、始める前に確認事項を」
「? 確認事項??」
「はっはっはっはっは。 まさか爆破して終了とかそんな阿呆な事言いませんよね? もしそんな気だったなら無恥無謀、馬鹿阿呆腐れですよ。 そんなんで終わるなら苦労はしません」
爆破して終わらせる。
ぶっちゃげ俺の案はまさにそれだった。
「……んと、じゃあ確認しようか」
「はい、復習は大事です。 と言っても言った記憶はないのでこの場合、復習になるのか微妙なところですが……。 さて、クラブさん。 私たちの勝利条件、これはなんですか?」
「勝利条件? カメレオンを壊滅させることだろ?」
「そのとおりです。 ではどうやって壊滅に追い込みますか?」
俺の爆弾で吹っ飛ばして粉塵にしてしまう……。
なーんて答えたらこの金套のことだ。
またニコニコと笑顔で強力な毒を吐きまくるに違いない……。
なので……
「つまり腹案があると?」
「ええ……。 物理的に叩き潰しても氷山の一角を削り取っているに過ぎません。 ここ、リグウェイの本拠地を失うだけでまだまだカメレオンという組織は頭を変えて再生してしまいます」
金套はニヤリと笑いながら俺の反応を待つ。
まったくいやらしい性格だ。
銀蝶……、たしか銀太と言ったか。
奴の苦労がなんとなくわかった気がする。
「ふうむ、ここまで言ってわかりませんか? リーズ中夫の弟とは思えない理解の遅さですね、正直失望しました」
なんとなくムカツクが、ぐっとそれを堪え
「要はどうすればいい?」
「何。 カメレオンという存在が瓦解するような醜聞を掴めばいい。 そういうことですよ」
「醜聞? 例えばどんな?」
「カメレオンって組織、勢力を拡大しようとして教会に接触をしています。 この情報は知っていましたか?」
それは確かレンから聞いた……。
しかしそれのどこが組織を瓦解させるためネタになると?
「まあ、カメレオンにとってそこはあまり大きな事案ではありません。 しかし、それが発覚してしまうと困る人もいるんですよね。 カメレオンと教会のパイプ役になっている奴が教会の内部にいるわけです。 それもそこそこ教会内で権力を有してる方がね」
「ふむ」
「で、カメレオンってどんな組織か覚えてます? いわゆる闇組織。 そんな組織と繋がっているってのが発覚してしまうと聖職者の職に就く彼にとってどれだけのダメージになると思いますか?」
「まあ、信者からの信用なくなるよな……」
「当然、今いる地位を追われ、最悪教会から教会裁判かけられてしまうでしょうね。 彼のやっていることは明らかに神の教えを背いた行為ですから」
「うん、それはわかるがそれのどこがカメレオンの壊滅に繋がる醜聞なんだ?」
「流れをよく読んでください。 そのパイプ役とカメレオンという組織、一蓮托生なんですよ」
「一蓮托生? なぜだ?」
「パイプ役は金に目がくらんだ小物です。 当然一人で禊を払おうとする殊勝な心がけは皆無でしょう。 となると責任を転嫁しようとする……。 どこに? 決まっています、この話を持ちかけてきたカメレオンに押し付けようとするでしょうね」
「は? 話を持ちかけてきたって言ったってそれを了承し乗った時点で責任転嫁もクソもないと思うけど」
「もちろん、教会の審議委員会も同様の回答を出すでしょうね。 まあ、溺れる者は藁をも掴む。 少しでも自分の非を下げようと無い頭で考えるでしょうね」
「ま、そのパイプ役は自業自得の末路をたどるのはわかったけど、もともとカメレオンは闇世界の組織。 教会と敵対したところで何の問題が?」
「カメレオンって組織、ただの闇組織って認識事態間違いはありません。 でも彼らには表での顔もあるということです」
「表………、ははあ……、なるほどね」
だんだん読めてきた。
「カメレオン幹部の表の顔。 武器商人やら冒険者と、表の顔はみんなそれなりの顔役です。 裏ではカメレオンの幹部だということを教会によって告発されてしまっては商人は客がいなくなりますし、冒険者の場合も当然どうなるかわかりますよね?」
「まあ、除名だろうな……」
「害虫(教会)が害虫を浄化する素晴らしい浄化装置だと思いませんか?」
「なるほどねぇ……。 てなると、まずはカメレオンとパイプ役が繋がっているという物的証拠。 これを押さえればいいってわけか」
「そういうことです」
「でも具体的にはどんなものならいいんだ?」
「そうですね、こういう場合一番確実なのはそのパイプ役の印鑑でも入ってる手紙でも押さえれば御の字でしょうが、これだけ大々的に悪事やってる奴らがそんな危険な証拠品後生大事に保管してるとは思えません。 読後焼却くらいはやっているでしょう」
「そうだな……」
「ならば偽造すればいいんです」
「……はい?」
「ん? クラブさん、耳が悪いんですか? ならもう一度言いますよ、偽造すればいいんです」
「偽造って、どうやって?」
「私がします」
「……どういうことだ?」
「おやおや……。 私の能力、モモさんに見破られているから知っているでしょう? 私の能力は模倣。 偽造なんて朝飯前です」
「………とことんチートな、お前」
「銀太、いや銀蝶ほどじゃないですよ。 私のは弱点だらけですからね」
「偽造が出来るんなら乗り込む必要はなくないか?」
「だから話を最後まで聞いてください、本当に察するて能力が足りない人ですねえ……。 確かに偽造は今すぐにも可能ですよ。 ですがそのパイプ役が書いた内容が分からなければ偽造しようがありません。 字体や印鑑は今すぐにでもできますが問題は内容。 書いた記憶のない手紙など簡単に偽造と見破られるのは当然でしょう?」
「まあ、確かに……。 自分が書いた内容、書いた字、押した印鑑を突きつけられたら焼却漏れだと観念するだろうなあ……」
「だから今回の突入、第一目標はそのパイプ役が書いた内容の奪取ということになります」
「でもどうやってそれを?」
「何、至極簡単です。 その手紙を読んだ人間を締め上げればいい、そういうことです。 ですので間違えても爆破なんてしないでくださいよ?」
「………気をつける」
どうもー、最後の投稿が2011年…。
2年も何をやってたかとか突っ込まいでください(汗
どこぞの冨●先生なみのサボりっぷり……。
もう読んでくれてた人はいないでしょうね、流石に。
まあ、そりゃ自業自得だから仕方ないっすね。