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第二章第41話 教会の黒いプリースト

「スマンな、呼び出して」


 寝静まった裏町の狭い通りに佇む男がそう呟いた、。

 漆黒の纒をしたプリースト。

 顔見知りと言うなら顔見知り。


「…………何。 殺り合おうってわけじゃない。 そんなに警戒するな」


 漆黒のプリーストはそう呟き、タバコに火を付ける。


「あんた、確かレンって言ったか? 先輩でなく、俺に用があると?」


「まあ、そう邪険にするなというのが無理か……。 少なくとも今はお前に危害を加える気はない」


 クラブは漆黒のプリーストを警戒しながら、様子を窺っていた。

 リグウェイに来る道中、この男と敵対し、一戦を交えただけにその言葉は意外かつ、すぐには信用できない一言だった。


「あれだけ啖呵切っておきながら、その言葉信じろと?」


「まあ、そういうな。 そもそも今はまだ貴様を泳がせておいた方が便利なんで仕掛けないだけだ……、という理由で満足か?」


「便利?」


「お前ら、カメレオンってゴミ組織を攻撃するつもりだろう?」


 カメレオンの単語がでた瞬間、クラブは警戒体制から臨戦体制に移行する。


「お前は勘違いをしているようだな。 俺はカメレオンを潰してほしいと願っている一人でね。 カメレオン側の人間ではない」


「それを信じろと?」


「カメレオンと癒着する神の敵がいる。 神の名を汚す大罪人を滅すのが俺の使命でな。 今回はたまたまお前らとバッティングしたに過ぎない。 ……ここまで言えば満足か?」


「い~や、逆に不審だね。 お前ら教会暗部がペラペラ任務内容喋ってる時点でな」


「ふむ、一理あるな」


 漆黒のプリーストはくすくす笑った。


「信じろ、というのは無理な話だな。 ならば貴様に等価の情報を提示しよう」


「?」


「俺に吐かせたい事がある、と先の戦いで言っていたな。 それに答えてやろう。 機密に触れない程度の事ならな」


「…………偽りを言わない保証はないだろう?」


「疑い深いな。 ならば、我が主神の名に置いて、嘘偽りは話さないことを誓おう……。 これで満足か?」


 神に仕えている者にとって神の名は絶対なる存在。

 いくらこの漆黒のプリーストが暗部の人間とはいえ、神の名を引き合いに出した以上、偽りは背信に値する。

 教会関係者にそこまで言われてしまうと信じる他なかった。

 クラブは臨戦体制を解き、漆黒のプリーストの瞳をじっと見た。


「んじゃ、答えて貰うぞ。 ヒノはどこにいる?」


「ヒノ? 俺の記憶にある名ではないな。 そいつがどうした?」


「とぼけるな、教会暗部。 お前らがヒノを連れていったことくらいは調べがついている」


「……いつごろの話だ?」


「?」


「そのヒノとやらが我々に連れていかれた時期だ」


「6年前だ」


「6年前? 連れていかれた場所はファラスか?」


「そうだ」


「ふむ。 小僧、役に立てなくてスマンが、それは俺の知る範囲に無い」


「なに?」


「お前は我々執行部を一個の組織と捉えているのかもしれんが、我々は地区によって個々の組織として存在する。 ファラス近郊は俺と違う組織なんでな。 連中が何をやってるかなんて俺ごとき末端が知る術があるわけない」


「っく……」


「だが、条件次第では探りをいれないでもない」


「!? …………条件次第だと?」


「俺がお前に問う回答次第だ」


 漆黒のプリーストはタバコを投げ捨て、吸い殻を踏み潰す。


「なんだ?」


「エルをお前は守れるか?」


「……は?」


 クラブは予想外の問いかけに目をぱちくりさせる。


「エルをお前は守ることが出来るか、と聞いている」


「何の意図があってそんな問いが出てきた?」


「先に答えよ、ファラスの爆炎」


「……先輩は俺らの仲間だ。 仲間である以上、見捨てるわけあるかよ」


「ふ……ふふふふふ、ふわはははははははははは!」


 漆黒のプリーストは笑いだす。


「な、なんだよ?」


「いや、なに。 そこまではっきりと青臭いことを宣言できるってことにな。 羨ましくもあり、愚かしくもあり、ってとこだ」


「……悪いかよ?」


「いや、悪くはない。 若いという特権か。 ならば俺もお前との約定を果たそう」


「なんだ、お前は。 わざわざこんな夜半に呼び出しておいて俺をバカにするするだけバカにして終わりか?」


「気にするな、ファラスの爆炎。 なに、エルの立場、お前が考えているより悪い方向に向いている。 それをお前が認識していれば良い」


「……まあ教会暗部抜けなんて無茶してればそりゃ立場悪いだろうな」


「別に我々執行部を抜けただけじゃそこまでやばくはない。 俺の権限による封殺も可能な範囲なのだよ」


「封殺?」


「俺はエルに死んでほしくないと願っている。 ならば死んだことにして報告すればその問題は終わり。 だが、上層部はエルが所持している爆弾を恐れていてな。 とてもじゃないが俺では抑えきれないのだよ」


「もったいぶって話すのが好きなのか、お前は。 先輩の持つ爆弾って何の事だよ?」


「生者の書と言ってわかるか?」


「!?」


「知っているということか。 そう、あれが今エルの手元にあるということが何よりも不味い。 教会の管理下にあるのならば問題はないが、今やエルは教会自体を抜けてる身。 上層部は躍起になってエルの身柄を確保しようと動いている」


 漆黒のプリーストは札を取り出す。


「ファラスの爆炎。 お前がエルを守れ」


 そう言い残して、漆黒のプリーストの姿は闇夜に消えていった。


「どう思う?」


 クラブはボソっと呟くように言った。


「あの聖職者が言ってることに偽りはないと思います」


 クラブの呟きに、虚空から現れたモモが答えた。


「エルニエルさんから感じていた闇の波動。 あの呪われた禁書から流れていたということで説明がつきますし」


「そういや、先輩の魔術適正は闇だったな。 聖職なのに属性が闇って変だなとは思っていたけどそういうカラクリだったということなんだな」


 学園入学の時に魔術測定玉でエルニエル先輩が闇だったことを思い出す。

 あのときは深く考えなかったが、教会は光を信奉している。

 光の両極にある闇属性のまま聖職スキルを得ることを教会が許すわけはない。


「ま、考えてもしかたないか……」


 若干、モヤモヤするが今は置いておく。

 明日はカメレオンと一戦交えるのだから、余計なことを考えてる余裕はない。

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