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第二章第40話 銀

 宿屋の一室にて金套と一人の少女が話し込んでいた。

 金套は少女に慇懃無礼な態度をとりながら、少女は特にそんな金套の様子を気にした様子もなく、ノートのようなメモ張をパラパラ見ながら時おり金套に問いかけ、納得し、また問いかけを続ける。


「把握した」


 金套の横で一冊の本を読んでいた巫女服の少女が本を閉じそう呟いた。


「で、金次はもう掴んでるんでしょ、カメレオンとか組織の本拠地。 なんでまだ乗り込んでないの?」


「調べていくうちにちょっと厄介な問題が浮上しまして……」


「厄介な問題?」


「薄々そんな気はしていたのですが、どうやらバックに教会が一枚か二枚噛んでいるみたいなんですよね。 カメレオンという一組織程度なら今すぐにでもクライアントに突っ込ませますが、教会が噛んでるとなると無為無策で突っ込ませるわけにはいきませんからね」


 金套はチクチクと裁縫をやりながら自分の肩に寄りかかっている巫女服の少女の問いに答えていた。


「遥や銀太の調査じゃ教会は真っ黒なんでしょ? いずれ敵対するんだから問題はないんじゃない?」


「私ら黒一門はそれでもいいですが、それは黒一門だけの話。 クライアントを巻き込んでしまったら私らの信用問題に関わるんですよ」


「じゃあクライアントのリーズさんの依頼どうするの? 受諾してしまった依頼を反古したりしたらそれこそリーズさんへの信用なくなるでしょうに」


「……大陸で教会は絶対です。 姫が毘沙門天を信仰する様に大陸の住人のほとんどが教会の掲げる光神を信奉しています。 教会を敵に回すということは世界を全て敵に回すことになりますからね」


「私はあの二人と違ってあまり表に出ていないから教会の実態をまだ把握していないんだけど、そんなに強い発言権があるってこと?」


「先にも言いましたが大陸の人間の多くが光神という神を拝んでいます。 なんで一宗教が大陸全土に分布されたかというのもひとえに教会という宣教師団体が長い年月をかけて広めていったからです。 光神は善を尊ぶ存在。 全ての罪を赦す存在として広く知れわたっています。 人は生きるだけで何らかの罪を背負うもの。 それを赦す神は民衆の罪悪感を払拭する存在ですからね」


「話を聞く限りじゃ優しい神様だね。 で、なんでそんな神を奉る教会が真っ黒なの?」


「人が集まればそれだけ濁りやすいとでも言うんですかね。 人が集まれば纏める人が必要となる。 最初はカリスマがある人が纏めていればよかったでしょう。 だけど常にカリスマのある人がいるわけではない。 そうなるとどういった人種が上に立つと思います?」


「権力欲旺盛で、なおかつ狡猾で非常な手段を躊躇なく取れる人でしょうね」


「その通りです。 組織が大きくなれば大きくなるほどどんどん派閥ができていくのは姫自身、上杉家を治めて痛感したでしょう? 100人みんな仲良しこよしなんて組織は洗脳集団でもない限りあり得ませんよ」


 二人がため息をつく。

 組織の不文律を認識し、軽く笑うしかなかった。


「銀蝶さん、ちょいといいです……か……」


 クラブが銀蝶を訪ねてやってきた。


「やあ、依頼人のクラブくん」


 金套はクラブに向かってニコリと微笑みながら言った。


「ああ、彼がリーズ中夫の弟さん?」


 金套はうなずく。


「あの、銀蝶さんは?」


 クラブは姿の見えない銀蝶の所在を金套に聞く。


「話せば長くなるので色々省略しますが、彼女も銀蝶なのです」


「は、はあ?」


 クラブはすっとんきょうな声を上げる。


「複雑な理由があるのよ、……ははは」


 桜は苦笑いをしながらそう答えた。


「どうしようかな。 銀蝶さんに用があったんですが」


「銀に用?」


「ええ、ちょっと銀蝶さんの先読みの能力でカメレオン守兵の配置とか確認しておきたかったのですが」


「ああ、それならすでに掴んでいるよ」


 と、桜は言って、ノートをクラブに見せる。


「私と入れ替わる前に先に読んでいたみたい。 読んだ内容を記して私と変わったみたいね」


「本当ですか? 助かります」


「えーと、クラブくんだっけ?」


「はい?」


「これは明日の深夜の配置図。 仕掛けるなら明日なんだけど明日は私じゃなく遥なんだよね」


「はるか?」


「もう一人、最後の銀蝶。 銀太、私、遥の三人が銀蝶なのよ。 で、明日は遥の番なんだけど、……あの娘、大人しそうなタマしてて猪突猛進な所があって、金次じゃ止めれない可能性があるのよね」


「(ボソ)姫がいいますか」


「なんかいった?」


「いえ、なにも」


「ま、そういうわけで、出来るだけ遥が危ないことしないように見張っててね」


「は、はぁ……。 まあ、俺も気を付けておきます」


「うん、お願いね、クラブくん」


 桜とクラブのやりとりをニコニコみつめていた金套は、真顔に戻り


「明日、攻撃ですか?」


「ええ、それを予定しています」


「めんどくさい憂いは明日で決着つけましょう。 それが私どもの依頼者、リーズ水軍中夫の望みでもあります」


「……、小兄にはあいかわらず恩をうけてばかりだな。 うん、明日は頑張るさ」



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