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第二章第32話 とあるプリーストの昔話

「ミィ、最近何かあったのですか?」


彼女の笑顔に違和感を覚えたのはいつだったか。

私や他の同僚と話しているときはいつも通りの優しい笑顔を向けていた。

だけど話の環から外れるとその笑顔に陰りを覗かせている。

同じ孤児院で小さい頃から一緒に育った幼馴染みとして、苦楽を共にした大事な親友として、教会暗部という特殊な職場で背中を預ける大事なパートナーとして、彼女の変化に気付かないわけがなかった。

私の問いかけに一瞬戸惑った顔をするけれど、すぐいつもの笑顔に戻っていつも通りの優しげな笑顔で微笑んだ。


「特になにもないですよ」


彼女が嘘を付くときは、必要以上にニコニコと微笑む。

そんな機微な癖も知ってる私に隠す悩みとはなんだろう。

深く追求しなかった後悔は後々私の重い十字架になるなんてこの時は思いもしなかった。


「悩みがあるなら何でも話してくださいね。 私たちはいつだってそうしてきたじゃないですか」


彼女は私の顔をまじまじと見つめ、そして微笑んだ。


「うん、気持ちの整理がついたら話すね」


そう言って、彼女は自分の部屋に帰っていくのを見送った。

それが彼女とゆっくり話す最後のチャンスだと知らずに………。



「………え?」


レンが言った言葉の意味がいまいち掴めず、私は聞き返した。


「……ミィが抜けた」


意味がわからない……。

ミィが抜けた?

どこから?


「そして教会禁書を持ち出したようだ」


教会禁書って、教会の教えに背く本っていう認識しかもってないけど、一体何の本だろう。

そんな意味のわからない本を持ち出して逃げる?


「それでお前に禁書の奪回とミィの討伐命令がでている」


「…とう……ばつ?」


「酷な任務ということはわかっている。 だがお前がやらないとダメなんだ」


この人は何を言っているのだろう?

誰が誰を討伐?

私がミィを?

冗談じゃない。


「その任務、私を外してもらっては駄目ですか?」


始めての任務拒否。

今まで教会のやり方に疑問を抱かなかった事はないが、孤児だった私を保護してくれた恩に報いるため、殺しすら辞さずにやってきた。

だけど、さすがにミィを殺してこいという命令は遂行したくない。


「それは出来ない」


「なんでですか?!」


「上からお前も共謀していると疑われてるんだ……」


「え………」


「お前の身の潔白を証明するにはこの命令に従うしかない」


本来ならば私はミィとの共謀を疑われて即拘束されていたんだ、と簡単に想像できる。

それを回避するためレンが上に進言し、私がミィを討つことで私の疑いが晴れるという図式がいつの間にかなりたっている。

任務の拒否は即拘束され、教会裁判にかけられるということか。

教会内部の人間である私が言うのもなんだが、教会裁判という裁判は一見公正の様に見えて反教徒や、異端分子を神の名において処刑台に送り込む便宜上の手続きみたいなもの。

教会裁判にかけられるというのは死刑が確定しているということになる。


「辛いのは判る。 だが、やるしかないんだ……」



そして、ミィを討伐する任務に就いた私はターゲットを捜索しながら、見つけたくないと思うようになっていた。

ミィ、お願いだから私の前に現れないで……。


「やっぱりそうなっちゃったか……」


「え?」


最も会いたくて、最も会いたくない人が目の前に現れてしまった。


「ゴメンね、エル……」


「ミィ!!」


ミィの討伐命令が出て三ヶ月。

久しぶりの再開だった……。


「エル、援護する……」


信じられないほど冷たい声でレンは言った。

レンの目に映っているのはかつての仲間ではなく、敵。

既にレンはミィを敵として認識している。

レンは名目上、私のサポートとして帯道しているが、実質上ミィとの共謀を疑われている私への監視役。

レンの目は早くミィを討てと告げていた。


「冷たいね、レン。 久しぶりに会うのにつれないねぇ」


「黙れ、異端。 貴様には我らが神の代わりに神罰を与えん!!」


「今のあなたに今の私を討つことができるかな?」


そう言うとミィは一冊の分厚い本を取り出した。


「禁書!?」


「あなたの目的はこの生者の書よね?」


生者の書?

聞いたことがある。

死者をアンデッドとして蘇らせる悪魔の本。

なんでミィがそんな本を?


「答えもわかっているし、聞いても無駄だということはわかっているけど、一応聞くね。 私を見逃して?」


「断る」


レンは即答し、ミィの心臓を抉りとるべく手刀をミィの胸めがけてつきだす。

しかしレンの手刀はミィの胸に届かなかった。


「なに!?」


ミィを守るように、ミィの回りには数匹の亡者が現れた。

レンの手刀は、ミィの胸を貫かず、一体の亡者の胸を貫いただけだった。

胸を貫かれた亡者は、何事もなかったかの様にレン目掛けて殴りかかってくる。


「亡者浄壊(ターンアンデッド)!!」


ターンアンデッドは、対不死者用に開発された強制成仏の教会魔法。

無限の再生を繰り広げるアンデッド種と呼ばれる魔物を一瞬で浄壊させる効果のある魔法だった。


「他の人間ならともかく、俺たち教会暗部にアンデッドをけしかけるとは無駄なことをするものだな」


勝ち誇ったような口調でレンは高笑いをしながら言った。

でも私は違和感を覚える。

他の人間ならともかく元同僚だったミィがその事実を知らないわけがない。

となるとこのアンデッドたちは何らかの布石?

嫌な予感がしたと共に初期化(ディスペル)の術式の準備を整えておく。

結果からいってっその判断は正解だった。

ミィの持つ生者の書が急激な魔力の流れが高まっていく。

生者の書がひとりでにペラペラとページが捲られていき、あるページでぴたりと止まる。


「生者の書47ページ、無力の矛」


ミィは呟くようにそう言った瞬間、レンの周りを覆っているマナが急激に消える。


「生者の書67ページ、死者の香」


「ぐ!?」


レンは喉を押さえ、その場で硬直する。

急激に周りの酸素が別の物質に変換されていく。


「初期化(ディスペル)!!」


何もかもを初期化する教会魔法秘、ディスペル。

解呪の理論から派生し、昇華した何もかもを元通りにしてしまう究極魔法。

別の物質に変換された酸素はディスペルの影響下によって酸素の形に戻る。


「ディスペルみたいな高位魔法を一瞬で展開……か。 エルが味方の時は頼もしかったけど、やっぱり敵に回すと驚異だなあ」


ミィがそういうと、いつの間にか出現していた巨大な矛の矛先が私を向いていた。


「エルはこの手にかけたくなかったけど、仕方ないかな」


ミィは本気だ。

本気で私を殺す気だ……。


「ごめんね、エル。 苦しまず殺してあげるのがせめてもの情けよね」


矛先がこちらを向いてじりじり詰め寄る。

殺らなきゃ殺られる。


「禁を解きます……」


私は右手の指にはめていた指輪を外す。

その瞬間、私の中の魔力が猛るのがわかる。

放置していたら一瞬で枯渇してしまいそうな魔力の放出。

ミィから放たれた巨大な矛は私の心臓目掛けて突き進んでくる。

このまま放置すれば10秒後には私の心臓を穿つ。

それを回避するには同出力のエネルギーを生成し、矛を相殺する。


「天昂の槍!!」


私が禁を解いた状態でのみ発動することのできる聖属性の槍の具現。

教会騎士の基本装備槍の100倍の出力。

この槍でなら相殺は可能!!

相殺後の次の手の準備。


「エル、あいかわらずあんたは詰めが甘いね」


ミィの言葉で気付いた足になにかが絡み付く違和感。

見ると、私の足には亡者ががしっと掴んで離さないように絡み付いていた。

レンも同様に足を絡まれて身動きが取れない。


私の槍と、ミィの矛が相殺していく。

しかし、私の天昂の槍はミィの矛とすべてを相殺しきれなかった。

相殺しきれなかった矛が私目掛けてゆっくりと進んでくる。

私はありったけの硬度の壁を緊急展開する。


「ぐ……、うぅぅ………」


天昂の槍で相殺しながらこの圧力。

とても人智で醸し出せる威力じゃない。

でも諦めるわけにはいかない。

ミィの話を聞くまでは!!

私は4重で同硬度の壁を展開していく。

第一層が音を出して崩れ第二層目の壁に衝突。

魔力のぶつかり合いが蒸気として具現化し、辺り一面白い濃度の濃い霧で覆われていく。


「ミィ、どうしてですか!? どうして私に相談してくれなかったんですか!!」


ミィの真意が知りたい。

その一心でミィに問いかける。


「私は、私はミィにとって相談する価値の無い女だったんですか!?」


私は思いの丈をミィにぶつけた。

壁の第二層が砕かれ、第三層に到達する。

威力は弱まっているけど残りの二層で無力化できるとは思えない。

この最後の二層が私の命綱。

それが破れるまでに彼女の真意が聞きたい。


「だって、エルは反対したでしょ?」


「そんなの、そんなの聞いてみなきゃわからないじゃないですか!!」


「たぶんエルなら、ひょっとしたらわかってくれるかもしれないと思ったよ。 でもね、エル、……きっとあなただって私の決断に反対している。 私の造反はあまりにも身勝手すぎる理由だから」


「身勝手?」


「私が任務中殺しちゃった子をこれで生き返らせて、その子に謝る」


ミィのいう殺しちゃった子に私も心当たりがあった。

ミィと心を通わせた笑うとき八重歯を覗かせる男の子。

彼は何事にも一生懸命で、失敗してもへこたれず、夢に向かって真っ直ぐな……。

だけど彼の夢を奪ったのは私たち教会暗部だった。

彼の住んでいる村は反教会勢力の隠れ蓑だった。

それで村の住人を残らず殺さなきゃならなくなって、そして……。

彼に手をかけたのは他でもないミィだった。


「あれは仕方なかった! ミィが一人で抱え込む罪じゃない!」


「私は謝らなければいけない。 あの子の夢を奪ったのは他でもない私なんだから!!」


そうか。

ミィは、それで生者の書を持ち出したのか。

でもミィは知っているの?

生者の書で人一人生き返らせるための贄を。

贄は術者の命だということを。

いや、知っている。

そしてその贄になるのをミィは一切恐れていない。

だけど、そんな方法じゃあの子に謝るというミィの目的は達せられないじゃない。

術の行使後、ミィは死んじゃうんだよ?


「人を生き返らせるなんて既存の魔法や魔法科学、科学どの方法でも無い。 でも私はあの子に謝りたい。 あなたの夢を壊してごめんなさいって、そう言いたいだけなの!!」


「でもそれじゃ、ミィも死んじゃうんだよ?」


「構わない」


「私の汚れた魂を贄にするだけであの子が生き返るなら私の命なんて一向に惜しくない!!」


第三層の壁も容赦なく叩き割れる。

終演も近い。

そのとき、ふとこの状況の打開策が頭によぎる。

でもそれは……。

ミィの放った矛は最終層までたどり着いている。

もう迷ってる暇はない。


「全反射(リフレクト)」


物理攻撃ではない現象ならば跳ね返すことのできる魔法障壁。

カウンター魔法だった。


「え……」


ミィの矛が私を経由してミィに向かって跳ね返る。

防御障壁の心得もないミィにそのまま矛が牙を剥いて襲いかかる。

勝負はその一瞬で決した。





「エル、痛いよぉ……」


胸を貫かれたミィは涙ながらに呟いた。


「ごめん、ごめんね、ミィ」


私も涙ながらに答えた。


「私、私……なにもできなかった、あの子になにもできなかったよ……」


ミィの口から流れる後悔の声に私は耳を傾ける。


「ミィはバカだよ。 なんで私に言わなかったの?」


「ごめんね、ごめんね、エル。 私、わたし、エルには嫌われたくなかった。 エルにだけは嫌われたくなかった。 こんな自分勝手なわたしを嫌うのがわかってて、怖くて、怖くて……」


「ミィはバカですよ。 嫌いになるわけないじゃないですか……」


「エル……、寒い、寒いよぉ」


私はだんだん冷たくなっていくミィの身体をぎゅっと抱き締めた。


「わたしを見くびらないでください。 わたしはミィと一緒ならなんだって付き合いました。 本当ですよ」


「………」


「ミィ?」


「…………」


「ミィ!!!」


「よくやった、エル。 任務達成だ」


レンが冷たい口調でそう告げた。


「ミィをどうするんですか?」


レンが大きな刃物を取り出して近づいてくる。


「上はミィの首を要求している」


「ミィの首を斬るんですか?」


レンは静かに頷いた。


「な!? 乱心したか、エル!!」


気付くと私は、レンに向けて神昂の槍を向けていた。


「ミィは絶対に渡しません」


私は何を言っているんだろう。


「それは教会への背信だぞ? わかっているのか?」


「わかっています。 でもミィはわたしの大事な友人です。 友人の亡骸を決してあなたたちに渡せません」


「な……」


「お世話になりました、私はミィと共に抜けます」


「正気か!?」


レンが臨戦態勢になるのがわかる。


「戦闘力で私に劣るあなたがたった一人で向かってきますか?」


「む……」


今の禁を解いた状態ならレンごとき容易く破ることはできる。

それはレンもわかっているはずだ。


「後悔するなよ!!」


レンはそう言い残して立ち去っていった。


私は何をやってるんだろう。

いくら私が上位の教会暗部構成員だったとしても教会暗部の恐ろしさは知ってるのに。

でも、ミィをやつらに渡したくなかった。

私が殺しちゃった親友。

せめてこれ以上彼女を汚したくなかった……。

携帯をIS01に買い換えポケットWIFIにしてみました。

ダメだこりゃ。メール投稿にしろ直接サイトで入力にしろやりにくい。

てか原因不明のエラーってなんだよ、東芝さん。

ページが読み込めませんでしたってなんだよ、Eモバイバルさん。

どんだけの文字が喪失したと……。

まだ携帯で入力した方が早かったなあ、と。

いや、確かに入力速度はこっちのほうがはやいんですよ、実際。

でもですよ、エラー一個で今までの文字が水の泡って。

試しにワードやらメモ帳に書いてみてコピペ機能が無い?

どーーやって貼り付けんだ、まさか時間の無駄だった?

ハイ、私の仕様把握不足です。

こりゃ、ただでさえ遅い更新がさらに遅くなる予感ですな。


ちなみにこの話最初は外伝に貼る予定でしたが、更新の遅さに自ら絶望してこっちに張ってみました。

ただいきなり話とんでしまったのは宜しくないですね。

次話には話の軸戻りますのでそれまでの閑話として本話をご覧くださいませ

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