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第二章第22話 ファラス内乱

 ファラス魔法軍のクーデターは失敗し、その残党はファラス魔法軍の施設などに立て篭もり未だ抵抗を続けていた。

 ファラス水軍五番艦艦長、リーズは陸戦隊を引き連れて、魔法軍残党の立て篭もるレッペルサンド魔導研究所を包囲していた。


「中夫、攻めないので?」


「……………」


 レッペルサンド魔導研究所に立て籠もるのはわすが300ほど。

 リーズが引き連れている陸戦隊は1000。

 数は圧倒的に有利だった。

 しかしリーズは研究所を包囲するだけ包囲して一切動かずただ座って研究所を見上げているだけであった。


「ここを落とさなければ手柄はたてられませんよ?」


 副将を勤める五番艦の副長エクセル小夫は動かない大将に問いかけた。


「手柄を焦るな、副長」


「ですが」


「手柄立てても何も変わらない」


 ここで手柄を立てたとしても、その手柄はリーズではなく、上層部に行く仕組みになっている。

 失敗したら責任はリーズが取らなければならないのだが。


「それに今攻撃しても無駄に血が流れるだけだよ。 だから向こうが諦めるまで待とうじゃないか」


「諦めるなんてことありますかね? 降伏しても待っているのは国家反逆罪で処刑台送りですよ」


「………………」


 確かにそう言われてしまえばその通り。

 彼らは勝算があると踏んでこその決起であって負けた時までは考えていなかっただろう。

 敗色濃厚になってしまった時から統率が乱れていった。

 予想していなかった敗戦が彼らが大人しく降伏という道を選ぶとは考えにくい。

 リーズはレッペルサンド魔導研究所所長の首で降伏を受け入れる旨の書簡を送ったが未だ何の反応もないままだった。

 所長の首さえ取れれば上層部を納得させれるだけの話術をリーズは兼ね揃えている。

 しかしそれを魔導軍が信じるに値する証がない。

 そんなところで現在の膠着状態になっている。


「水軍でもあまり目立ってない艦長の提案を素直に受けるほど冒険は冒せないでしょ。 私が相手さんでも研究所を枕に討ち死にを考えますよ」


 全くいい得手妙だ。

 リーズが話術に長ける面を公にしていないからこそこの度の膠着状態を招いているといってもよい。

 ファラスという国柄上、目立つ事にデメリットはあってもメリットはないので、平時はのほほんと三流士官を演じている。

 が、こういう時にそれが仇となってしまっているわけで……。


「書面だけじゃ信頼されんわな。 仕方ないから行ってくる」


「どこへ?」


 リーズはエクセルの問いにレッペルサンド魔導研究所に指を指す。


「正気ですか!? 殺してくださいって言ってるのと同義ですよ、それ!」


「まあ、一個間違えたら死ぬわな」


「いやいや、生存出来る率なんて皆無でしょうが。 艦長が研究所に行くって虎の口の中に飛び込むのと同じですよ。 そんな状況下でどうやって生存率弾けるんですか!?」


 リーズはニヤニヤ笑い、エクセルに言った。


「まあ、任せとけって」


 そう言い放ち、リーズは馬に飛び乗る。


「考えがないわけじゃないから黙ってみていなって」


 エクセルが反論を唱えるより早く、リーズを乗せた馬は研究所に向かって走り出していった。


「知らないですよ、ほんとに!!」



 レッペルサンド魔導研究所。

 城門の前に立つ一騎に城兵全ての視線が集まっていた。

 そこにいるのは水軍の制服を着た上級士官がただ一騎、開門を唱えている。

 今、自分達を囲んでいる水軍の中で上級士官服を着れるのは水軍中夫のリーズのみ。

 リーズはこの研究所を囲んでいる水軍陸戦隊を率いる総大将なのだ。

 それが共を連れずただ単騎で城門の前に立っているのだから無理はない。


「開門、開門〜〜」


 やけに間延びしたイントネーションで開門を要求する様はある意味毒気抜かれてしまい、撃つに撃てず、城兵に困惑を招いていた。


「貴公!!」


 城門の上で士官クラスの将校が叫ぶ。


「あなた指揮官? なら話は早い。 ひとまず話し合いにきた。 開門してくれ」


「話し合いだと!? 我らを愚弄するか!?」


「ボクをこの場で殺すのも、話を聞いて殺すのも労力は対して変わらないよ。 話聞くだけ聞いてみてもいいと思うけど?」


「…………話というのは書状にあった議か!?」


「ああ、読んでくれていたんだ。 つまり貴公がこの研究所の長だね。 言いたい事はまさにあの書状に書いていた通り。 返事が聞きたいから来たんだよ」


「確かに我が首一つで城兵300の命が助かるなら喜んで我が首を差し出そう。 しかし、城兵全て国に謀反を企てた身! 如何に国家反逆罪から逃れる事叶おうか!」


「城兵300、まさか現隊復帰とか考えているわけじゃないよね?」


「それこそ不可能であろう!」


「うん、現隊復帰はさすがに無理だ。 でも、助命はいくらでもやりようがある」


「如何に!?」


「上層部が欲しいのはあんたの首とここが使いモノにならないくらい廃墟になること。 城兵は国外にでも逃げればいいさ。 そうすりゃ城兵全て研究所を枕に討ち死にしたといって上層部を誤魔化すことができる」


「そんなもの、廃墟となったここを調べればすぐに発覚してしまうだろが!」


「調べる? 誰が?」


 リーズの予想外の切り返しに士官は困惑する。


「調べる……。 まあ、調べる前提で話をしよう。 いつ、どのタイミングでここを調べる? 確かに調べれば脱走を図ったものがいる可能性に気付くかもしれない。 しかしこの辺境のさらにいうなら規模的に小規模の研究所を調べる価値がある? さらにいうならその研究所の地下に300じゃきかない無念の怨霊が埋まっているはずだけど?」


「!? ……貴公、どこまで知っている?」


「ファラスの爆炎がぶっ飛ばしたのは氷山の一角。 そもそも考えれば魔導軍が研究していた事の元を正せば我が主君、もしくはそれに近しいモノが絡んでいることは少し考えればわかる。 となると勅命として魔導軍全体でやってた研究だとおおよそ察しはつくさ」


「貴公、何者だ……?」


「人工生命……。 ホムンクルスの研究。 確かに実用化されれば我が国の魔導技術は他国を凌駕するさ。 だがその研究は神の教えに背く禁忌。 背徳ともいえる神への裏切り……。 良識あるやつは普通ならば拒否するさ。 だが我がファラスには勅命に逆らう事は死を意味する。 ……だからこその反乱」


「…………」


「嫌々ながら研究をしていた。 それをファラスの爆炎に公の元に暴かれた。 そしてその研究を命じたものは魔導軍の暴走と発表し魔導軍を悪者に仕立て上げることで自らに降りかかる火の粉を払った。 そりゃ反乱したくなるわな」


「そこまで水軍はわかっていながら何故我らを討つ!?」


「水軍がわかってるというのは誤解だ。 水軍でこの事実を知るのは多分ボクだけだろう」


「はあ?」


「我が国は隠密を嫌う風習。 隠密で得た情報を公開してボクになんのメリットがあるやら……。 だけど情報を得るのに彼らほど手段として相応しいモノたちはいないわけでね。 そんなわけで個人的に興味を持った程度のことくらいでは使わせてもらっているわけだな」


「では、貴公は我が主君の暴走を知りながら未だファラスに仕えているというのか!?」


「ファラスで生まれ軍に入るという選択肢しかない以上、そうするしかないのは貴公らも一緒ではないかな?」


「…………貴公、名はなんという?」


「リーズ=エンセンツ。 ファラス水軍中夫の位に位置するものです」


「そうか……。 貴公なら我が旗下300の命運、託すに値する人物とお見受けする。 我が部下300、貴公にその命運を託そう。 約束違えぬ事、宜しくお頼み申す!」


 そういって城門の上でリーズと問答を繰り広げていた研究所所長は腰につけていた短刀を抜き、自らの心臓を貫いた。

 心臓を貫き、そのままゆっくりと崩れていく。


「見事です……。 しかと城兵300の命運、お預かりします……」


まだまだ修羅場な仕事ですが、ひっそりこっそり書いています。

できれば週一で投稿したいんですが、なかなか執筆に時間を割けません。

まあ、リーズ視点です。

第二章ではリーズによる視点も随所であります。

今回あんまりアカデミー陣かかわっていないですが、序章、一章で既に書いています通りいずれアカデミー陣とリーズがどんぱちします。

しばらく先になりそうですが、要所要所でリーズ視点になるため提督立志伝本来の主人公として第一章よりは影が薄くなることはない……とも断言できなかったり……。

第一章よりはマシだと思いますが……。

え?リーズが主人公だって今知った?

それに関してはすんませんとしか言いようが……。

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