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第二章第21話 外の動乱

「ピィのお友達です」


「そうなんだ、宜しくね、カイちゃん」


 なんだろな、この軽いノリは……。

 どうやって姉やロベルトを説得するか必死で考えていた俺がバカみたく感じるのは……。

 ピィは俺のそんな苦悩にいつもの、


「ミエルお姉ちゃんなら大丈夫です!」


 の一言で俺の苦悩を一蹴してしまった。

 さすがの姉もピィの時と違って竜の状態を知らないからカイはどうみてもそこら辺の幼女にしか見えない。

 ピィは楽観的すぎると思いながら帰宅して今の会話があるわけで。

 言及されない事は助かったが、それでいいのか、っと突っ込みたくなるのはもはや仕様だ。


「え? ク、クラブ……くん?」


 階下に降りてきたロベルトは俺を幽霊でも見るかのように見つめる。


「ああ、只今帰りました」


「あ、ああ……、お、おかえり……。 とりあえず詳しい話を聞きたいから僕の書斎にきてくれないだろうか?」


 いつまでたっても帰還しない俺らのパーティーは不慮の事故で全滅した、そう思われても仕方ない状況だったし、ロベルトの反応もダンジョンを管轄するアカデミーの教師として当然だろう。


「ええ、わかりました」


 というわけでピィとカイの事を伏せながら詳細にダンジョンであったことを説明した。


「そんな区画があったなんて知らなかったよ……。 でもクラブ君、君が犯した罪はわかるね?」


 あの場でのパーティーリーダーは俺だ。

 聡明なリーダーなら、不測の領域に足を踏み入れる愚は犯さない。

 自分一人ならまだ自業自得ですむが、パーティーメンバー全員を危険に晒したという罪にあたる。

 パーティーメンバーの誰かが俺を訴えたならば、俺は冒険者を廃業しなければならないほどの重責を犯したわけで。


「君の話を聞く限りだとみんなとりあえず無事だということがわかって僕は安堵したよ」


 まあ、範囲転移でひじりらは脱出したので転移後までは知らないけど。

 ひじりの事だから多分大丈夫だろ。


「ロベルトさーん、お客様ですよー」


 階下で姉がロベルトを呼んでいる。


「ああ、そうか。 今日だったか」


 窓から下をみて、ロベルトはニコニコしながらいった。


「クラブくんも来たまえ。 僕の友人の娘を紹介してあげるから」


「友人の娘?」


「明日からアカデミーで君と同じクラスになるんだから面倒みてやってくれよ」


「明日から?」


「クラブくん、早く早く」


 ロベルトはせかすように俺を呼んだ。

 そして応接室を勢いよく開けている。


「ようこそ、ユイくん。 道中大変だったね」


「相変わらずですね。 ロベルトおじさんもおかわりなく」


「しかし災難だったね。 ファラスだっけ?」


「ええ、ファラスに入るのが1日早ければ出ること出来なかったからこれは悪運が強かったといわざるえないです」


 災難?

 ファラスに入るのが1日早ければ?

 聞く限り不穏な単語を拾ってしまう。


「クラブ、お客様にお茶お持ちしてね」


「了解」


 姉からお茶を受け取り、応接室をノックして中に入った。

 中にはロベルトと栗毛色の髪をツインテールで縛った俺と同じくらいの年の娘が行儀正しく座っている。

 で、その隣に見覚えのある奴が座っていた。


「クラブ!?」


「やあ、ひじり。 なんでお前さんもいるの?」


 俺はロベルトたちの前にお茶を置きながら言った。


「そりゃこっちの台詞だよ。 お前無事だったんだな?」


「ま……、そうだな」


「?」


「ああ、紹介しよう。 彼はクラブくん。 僕の妻の弟だよ」


「クラブです」


「はじめまして、ユイ=エコンジストです」


「エコンジスト?」


 エコンジストって確か勇者由来の姓。

 つまりこの娘は勇者由来の一門か。

 ん?

 そういやロベルトは昔の知り合いの娘がくるとか言ってたな。

 ってことは、ロベルトは元勇者のパーティーメンバー?


「クラブくん、彼女も明日からアカデミーに通うから面倒みてやってくださいよ」


「了解」


 そんなことより気になる話があるわけで、俺はそれを聞いてみた。


「ファラスでなんかあったんですか?」


「うん、ファラス魔法軍の若手将校がクーデターを起こしたらしい。 ファラスでは厳戒令が敷かれてるとのことだ」


「厳戒令……」


 てことは水軍中夫であるリーズ兄も巻き込まれているということか。

 ま、死にゃしないだろ。

 そう簡単にあの兄が死ぬわきゃないし。

 それにあんまり手を上げて喜ぶことは出来ないが、ファラス魔法軍といえば俺を追っていた組織。

 俺にかまけている暇はなくなったと見ていいかも知れないな。

 油断はできないけど。


「騎士団と水軍が鎮圧しているそうだから長くかからないだろう。 でも鎮まるまで出国できないからね。 多くの冒険者や旅人がファラスで足止めを食らっているらしい」


 しかし魔法軍のクーデターか。

 なんとなく嫌な予感がするので多恵さんに連絡をとってみた。


「まあ、その不安は当たらずとも遠からずです」


「やっぱりですか」


 俺の依頼した情報操作の余波の可能性を鑑みて確認をとってみるとそんな回答が帰ってきた。


「でも勘違いしないでくださいね。 クラブくんの件も一因ではありますけど、それはオマケみたいなものです」


「オマケ?」


「今回の事の発端は騎士団が魔法軍を挑発したからこうなったわけです。 騎士団団長のシャアプルが魔法軍の勢いを危惧して謀ったって話はもう色んな界隈に流れている話ですし」


「相変わらず腐っている国だな」




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