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第二章第13話 武器屋一幕

ーーークラブサイド


 さて、明日はなんでもアカデミーが管理する訓練所と呼ばれているダンジョンに潜るらしいので、各々潜る準備をとのことだが、一点問題点が浮上した。

 ファラスの爆炎という通り名を隠すつもりの俺としては、長年用いている爆弾を使うわけにもいかない。

 鋼鉄の蜘蛛に襲われた前例みたいなことがあるので、念のため最小限は持ち歩くが常に使うのも考え物だ。

 で、武器屋をはしごしているわけなのだが、困ったことにピンとくる武器がないわけだ。

 逆に種類も多すぎるのでまずどの種類の武器にするかも決めてからくるべきだった。


「というわけでアドバイスが欲しいんだけど、だんまりってどうよ?」


 と、アドバイザーのつもりで同行を求めたひじりは終始無言だった。


「明日の間に合わせだろ? なんでもいいと思うけど」


「いや、出来れば暫くその種類の武器を使うんだ。 適当に決めてしまって後悔するのも悔しい」


「クラブに向いていると思われる武器はあるんだが、明日使うとなると大分考え物なんで沈黙してるんだけど」


「ん? 俺向きの武器?」


 ひじりはとある武器を取る。


「これだろ、お前の性格やセンスを考えるなら」


「これかよ……」


 二人揃ってその武器に目を落とす。


「これは、使いモノになるまでやっぱり時間かかるしな。 これは今から修練するとしても明日使うのは好ましくないよな」


「いや、てか……。 うん、これはさすがにないだろ……」


 ひじりの手にある、ある武器をマジマジと見つめる。


「これを使うって、熟練になるか、再起不能になるかのどっちかしかない究極のギャンブル武器じゃないか」


「クラブ向きだろ、こういう武器。 あんだけ多彩な爆弾をタイムラグなしに使うんだ。 クラブの根は神経質だからこの武器が最適と思うが……」


「神経質……ねぇ」


「爆弾だって両刃の剣だろ。 爆発調整ミスったら自分の爆弾の爆風で吹き飛ぶことも有り得るんだから」


「だけど、これは……なぁ」


「この武器の特徴としてさ、自分の事を過大評価する奴が好んで選ぶ武器だけど、そういうやつは軒並み再起不能になる。 けど、逆に慎重すぎる自己を過小評価する奴ほど大成できるんだ」


「へ〜〜……。 つまり石橋叩いて叩いて叩きまくって、それでも渡らない究極のヘタレほど大成するのか…………って俺はそこまでヘタレじゃない!」


「そんなヘタレはこんな武器持たないさ。 今のクラブのようにビビって」


 ビビる。

 その言葉にむっとなるが、正直言えばビビっている。

 使いこなせるようになれば近距離はおろか中距離、達人にでもなれば遠距離いずれも対応可能な武器だ。

 使い手はまさに無双の世界。

 ただ、扱いを少しでも誤ると自分はおろか味方まで再起不能にしてしまう。

 そんな無責任な事は出来ない。

 そういう訳でビビっている。


「ビビっているのは否定しないさ。 この武器はなぁ……」


「爆弾も似たようなもんだろ」


「どこがだよ?」


 爆弾は爆音と爆風、そして炎。

 気温、湿度、時間の変化によって様々な効果を見せてくれる気分屋。

 爆裂する音はまさに爽快。

 今にも破裂しそうな火薬の匂いはまさに芳醇。

 爆風の突風はまさに豪快。

 それ全てがこの武器にはない。


「……クラブは爆弾使いというより爆弾狂だな。 俺からしたらこの武器も爆弾も大差ないと思うんだが」



ーーーひじりサイド


 間違い無くクラブならこの武器を使い果たすだろう。

 この武器は冷静かつ正確な判断力、そして針の糸を苦もなく四、五本同時に通すような繊細かつ大胆な感覚がモノをいう武器。

 その両方を兼ね揃えているクラブ。

 聞けば爆弾は全て自家製という。

 あんな危険物の塊をのうのうと調合制作するあたり、かなり繊細かつ大胆な感覚を持っている証拠。

 爆弾が爆発するまでの時間予測やその爆弾の爆発規模、特にクラブが得意とする連鎖爆発を引き起こすための投下角度や最適距離の算出を瞬時で計算してそれを実行するあたり冷静かつ正確な判断力の証拠。

 そして先も言った通り、これだけのものをもっておきながら自分が出来るわけがないと自己過小評価。

 稀代の使い手は皆全てを持った人だった。

 この先ほどから話題に上がっている武器は鋼糸。

 ほとんどの武器は想定対人数は1。

 稀に5とか10と戦う戦法もあるが、鋼糸に関しては、100人を相手しても圧倒的に有利な局面に持ち込むことができる万能であり無双の武器。

 明日いきなり使うのは自殺行為だからこの場では勧めなかったのだが……。


「クラブが使うなら最も適した鍛錬法教えることが出来るよ」


「は? ひじりこれ使えるの?」


 残念な事に酒木原ひじりという男は不器用に分類される性分なため、鋼糸を使うには適していない。

 使える見込みがあるならすでに主流武器として使っている。

 強いとわかっていながら使わないのはそういう理由だ。

 だけど、俺の知識にはこれの使い方に関する情報はある。


「鋼糸の達人フリエックの著した指南書を読んだことがあるんでね」


 フリエック。

 500年前、人間と悪魔の間に起きた7度目の戦争、通称第七次聖魔大戦で有名になった鋼糸の使い手。

 大悪魔と呼ばれる格の悪魔を次々退け人間に勝利をもたらした英雄。


「フリエック? おとぎ話の人間だろ」


「実在した人物だよ」


 世間の認識ではあまりに無双すぎて、実在していない架空の人物という定説がある。

 フリエックの存在を確かなものとして証明する品物は現存していないのがその訳だ。

 だがフリエックは実在した。

 それは間違いない。


「OK。 フリエックが実在したことは100歩譲って認めよう。 で、なんでひじりがフリエックの書いた指南書を読んだことがあるんだ? そんなものがあったら歴史的発見だろ?」


「フリエックは実在しているわよ」


 クラブの問いを横から遮るように声をかけるもの。

 アマリリスだった。


「は?」


「こんばんは、ひじり君とクラブ君」


 突然現れたアマリリスはニコニコと笑顔で答える。


「そしてひじり君がフリエックの書を持っている事も事実。 だって彼のセカンドネームがそれを証明しているもの」


「おい、ひじり」


 クラブは俺にしか聞こえない程度の声で呼ぶ。


「この人、だれだっけ?」


 まあ、初対面だわな。

 一応クラスは一緒なんだが、入学式は昨日だし。

 それに俺はアマリリスの今世の名前を知らない。

 だからクラブの問いにどう答えればいいのかわからない。


「アマリリス」


「は?」


「アカデミーで二人と同じクラスよ。 私の名前はアマリリス。 宜しく」


「は、はあ……?」


 クラブが怪訝な顔をする。

 俺も同様だった。

 アマリリスという名前は有名だ。

 人間と悪魔の幾たびの戦争……、聖魔大戦で人間と敵対していた一人の大悪魔の名前。

 普通の親なら悪魔の名前を子供につけるなんてことはしない。

 敢えてつけるとしたら悪魔を信仰する狂信者くらいなもの。

 クラブが怪訝な顔をしているのはこういったところか。

 だけど俺は別の観点から怪訝な顔をしている。

 しかし納得した。

 アマリリスの転生先の親をアマリリスは支配しているというわけだ。

 悪魔アマリリスは石化、魅了などを得意とした魔眼の悪魔。

 今世の転生で魔眼を持ち込み、誕生と共に親を支配したというわけか。

 で、アマリリスという名前を今世で名乗っているわけなのだろう。

 あくまで推測にすぎないがおそらくそんなとこなんだろう。



ーーーアマリリスサイド


 明日の準備のため、武器屋に立ち寄るとよく知っている顔を見つけた。


「フリエック? おとぎ話の人間だろ」


「実在した人物だよ」


 フリエックとはまた懐かしい名前。

 500年前の私の仇敵が名乗った名前で、私を破った鋼糸使い。

 現在は酒木原ひじりと名乗る彼の、確か12代前の名前だ。

 彼は三千年の時を繰り返し生きた転生者。

 彼には三千年の経験は転生の度に喪失しているが、知識は残っている。

 だからこそ、毎代人間離れした達人になるのだけどそれは置いといて。


「OK。 フリエックが実在したことは100歩譲って認めよう。 で、なんでひじりがフリエックの書いた指南書を読んだことがあるんだ? そんなものがあったら歴史的発見だろ?」


 確か彼はクラブとかいった名前だったか。

 アカデミーのクラスメート。

 彼はフリエックの存在はおとぎ話の中だけの人物だと思っているらしい。

 ひじりと名乗る彼、……ややこしいので以降はひじりで。

 フリエックの存在の否定はひじりという存在の否定。

 私は個人的な理由でそれは許容できない。

 なのでクラブとやらを納得させることにした。


「フリエックは実在しているわよ」


 と、話に割り込んでみる。

 二人は私の方を見る。

 クラブはキョトンとしている。

 ひじりは、妙に警戒しだす。

 まあ、ひじりと私の場合、幾たびも争った仲だ。

 寂しいけど、こういう反応も仕方ないか。


「こんばんは、ひじり君とクラブ君」


 私は敵意は無いことをひじりにアピールするため、極めて普通のテンポで挨拶をする。


「そしてひじり君がフリエックの書を持っている事も事実。 だって彼のセカンドネームがそれを証明しているもの」


 彼のセカンドネーム、酒木原。

 フリエックと共に私たちと戦った酒木原風生という男がいた。

 彼が転生した先は風生の直系ではなく分家の末端か、風生の名字にあやかってひじりの祖先にあたるものが酒木原を名乗っているのかとかどうでもいいことだけど、都合のいいネタなので、引き出させてもらった。

 クラブは怪訝な顔をして、本来ならまず私に聞こえない音量でひじりに


「おい、ひじり。 この人、だれだっけ?」


 と、聞いていた。

 一見するとクラブはひじりに話しかけていないような素振りで普通なら聞こえないどころかまず気付かないが、あいにくと私は元悪魔。

 地獄耳である。

 元悪魔ナメルナ。


「アマリリス」


「は?」


「アカデミーで二人と同じクラスよ。 私の名前はアマリリス。 宜しく」


「は、はあ……?」


 二人揃って怪訝な顔をしている。

 クラブの方は私の名前が悪魔と同じ名前なんで私の親の常識とかを疑って、親を選べなかった私に対しての妙な同情をしている模様。

 ん〜〜、基本的にクラブはいい奴なのかな。

 で、ひじりの方は、前世と同様の名前を名乗ったことでいろいろ考えていることだろう。

 前世の私は魔眼持ち。

 それをいろいろ考えたあげく魔眼で親を支配下においたのだろうと納得したっぽい。

 事実は違うけどね。

 私には一応カチュアという今世の名前があるが、色々めんどくさいのでアカデミーではアマリリスと名乗っている。

 魔眼?

 そんなもの、転生で持ち込めるわけがない。

 その辺は誤解したままにしておいた方が後々のためには最良っぽいのでそのままにしておこう。


「クラブくんは鋼糸を使うの?」


「ああ。 クラブは鋼糸を使うぞ」


 と、私の問いにひじりが答えた。


「は?」


 当事者のクラブはキョトンとしている。


「じゃあ私がいいものをあげる」


 私は鋼糸の手入れに使う油瓶をクラブに渡した。


「え……、なんでこんなの持ってるの、アマリリスさん」


 持ってた理由。

 私も鋼糸を使おうとしたけど、どうもこの身体はドン臭くて鋼糸は無理と先ほど判断したからだ。

 道具一式はあるけど使い道がなくなった……、ただそれだけの理由。

 まあ、そんなこと言っても自分の恥を晒すだけだから言わないけど。


「私には無用なものだから、クラブくんが使うといいよ」


「良かったな、クラブ」


「は? 俺これを使うの確定?」




三人の視点。

うまくまとまらずごちゃごちゃしてますね。

精進あるのみ、そしてここ最近寝不足で仕事きつい思いしているんだから寝ろよ、自分。

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