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第二章第10話 入学

「新入生の諸君! 入学、おめでとう!」


 などというテンプレートな入学式は省略し、一応学園もので外せないのがクラスわけ。

 掲示板に張り出されているクラスわけの紙を凝視しながら自分のクラスを探す。

 ああ、そうか。 言い忘れていた。

 やあ、みなさんお久しぶり。

 久しぶり主眼のクラブです。

 あの事件以降、俺の主眼抜きで進行したため、主人公降格したかと思われたかもしれないけど、そんな柔ではこんな作者の登場人物は務まらない。

 というか、俺そっちのけでもしっかりちゃっかり進行してしまいやがったので抗議の降板は意味をなさないと悟り、今に至るわけです、はい。

 人の秘密を他の奴主眼で暴いてくれた作者様、あとで便所でお待ちしております、というのはひとまず置いといて、俺の名前を見つけた。


「一年一組……」


 割と普通なクラス名。

 ユニコーン組とか、ドラゴン組、フェニックス組とか想像していたが、それは流石になかったらしい。


「クラブさん、やっぱり同じクラスですね」


 と、声をかけてきたのは千冬。


「千冬さんも一組?」


「はい。 一年間、宜しくお願いします」


 といってぺこりと頭を下げる千冬。


「担任の先生は、どんな人なんでしょうね」


 ひとまず義兄ロベルトでないことは確かなのでほっとしていた。

 ここはテンプレートに乗っ取り美人教師であることを願うのは思春期の男として当然ではないだろうか?


 そして教室に入ると、知っている顔が一人いた。


「先輩、何してんの?」


「……………よりにもよってお二人ともこのクラスですかぁ?」


 絶望したような顔で呻くのは、実技試験で俺らの試験官をしていたエルニエル先輩。

 なんか、なんとなくだけど、先輩と呼ぶとやばめな雰囲気を感じるのは俺がKYではないという証拠ってことで。

 机に突っ伏したまま、先輩はうなだれている。

 ここは聞かずにそっとしておくべきなんだろうな、と察した。


「なんか〜、あえてスルーしてくれるのは有り難いんですが〜、なんとなく惨めになるのは気のせいでしょ〜か〜?」


 桜咲く桜色の季節。

 しかしここだけどんよりとした色調なのは気のせいということで……。


「まあ、回り道するのも人生じゃて……」


「は?」


 声をかけてきたのは白髭だけは立派なちんちくりんな爺さん。


「お嬢ちゃん。 人生急いでもいいことは無い。 ゆっくり、まったりするのも人生じゃわな。 ほっほっほっほっほ……」


「………………」


 さてと、この爺様、誰?

 アカデミー指定の制服着ているのはなんだろう?


「おぅおぅ……、ワシとしたことが自己紹介がまだじゃったな。 ワシはロブと呼んでおくれ、級友」


 OK、把握。

 この爺さん、級友らしい。

 つか、アカデミーの制服着ていなかったらどこぞの庵で隠居している爺さんにしか見えない件は置いておくべきであろう。


「クラブです、宜しく」


「ほぅほぅ、クラブくんかえ。 こんなじじいじゃが宜しくの」


 どっこいせ、と声を出して席につくロブ爺さん。

 まあ、異様ちゃ異様だが、あの年で学ぶ意志があるという事にある種の敬意を感じるのは俺だけだろうか?


「お、クラブ?」


 なんか聞き覚えのある声が聞こえた。


「やっぱりクラブだ。 君もアカデミーに来たんだ」


「ひじり……」


 こいつは酒木原ひじりという名前の冒険者で、カメレオンをぶっ飛ばした時とかファラス魔導軍施設をぶっ飛ばした時、ハウスの仲介で一緒に組まされていた奴。

 厄介ごとな依頼を受ける時は、なぜかこいつと組まされる時となっており、俺的にはこいつと会うと面倒なのに巻き込まれるというジンクスになったやつだ。

 本人曰わく、薬師とか言っているが、戦士並みに卓越した剣技を見たことがある俺にとってこいつは後方支援者の布を被ったバリバリの前衛。

 名前でわかるとおり、東方の民族、倭人である。


「あ、クラブ……、なんなら今君が思った事当ててみようか?」


 こいつは一見人の良さそうな外見をしていて底意地悪い。

 ついでに面倒な事で、俺の通り名であるファラスの爆炎を知ってるやつだったりする。


「で、なんでひじりがアカデミーにいるわけさね?」


「じっちゃんの跡を継ぐためだよ」


「じっちゃん?」


「俺んち薬師なんでね。 東方の薬学はじっちゃんから学んだからいいんだけど西方の薬学は無知に近い。 だからアカデミーで西方の薬学を学びにきたんだよ」


 などとそれらしい事を言う。

 ただどこかテンプレート的な理由と感じる。

 これが普通のやつならなる程、孝行なやつだ、って納得するんだが、相手がこの酒木原ひじりなら話は別だ。


「で、何を企んでるんだ?」


 ひじりは俺の問いにキョトンとしたが、


「何言ってんの。 そういうクラブこそ、アカデミーに何しに来たかと問われたら濁す癖に……」


 などと言ってきた。

 触れられたくないなら触れるなという意志。

 わかった。

 俺も触れないからお前も触れない。

 ひじりとはこういう謎めいた紳士協定を何度か結んだ仲だった。


 そんなこんなで、アカデミー最初のホームルームがチャイムと共に始まる。

 で、やってきた我らがクラスの担任といえば……。


「席につけぃ!!」


 鞭をビシバシ振り回し、全身これ筋肉の大男。

 スキンヘッドに真っ黒なサングラス。 んで、メタルなバンドな方が身につけていそうなトゲトゲの黒い服。

 まさかあれが担任とかいわないだろうな?


「よぉし、ガキ共。 俺様こそこの一年一組の担任、デジデド=ニッキーア様だ!」


 俺のバラ色のアカデミー生活はこの肉だるまの発言のため崩壊を開始した。

 どこのDQNだ、あれ?


「専攻はアイテム知識。 基本的にどのカリキュラムでも必須科目なんで俺様の授業に縁のない奴はいないはずだ」


 専攻がアイテム知識とか学術的科目をバカにしているとしか思えない筋肉だるま。

 戦闘実践とか、武器学とか肉体派系科目専攻に見える容姿をしておいて、インテリ科目を専攻とか言ってらっしゃる。

 肉だるまは持っていた鞄からビー玉サイズのガラス玉を取り出し、生徒一人一人に配っていく。


「これは魔法系統を計るマジックアイテムだ。 お前等がどの属性に適しているか今から計る。 これで一年時必修科目の魔法の授業方針の参考にすると言うわけだ」


 肉だるまは黒板に文字を書いていく。

 火は赤。 水は青。 土は黄。 風は緑。 光は白。 闇は黒。


「わからない奴の為に説明するとだ。 人間、誰しも例外を除き、この六属性の何れかに属している。 基本的にこの6つの色のうちこの魔術測定玉がどれかの色で光から光った色を申告するように。 それの使い方はだいたい五分ほど手のひらで握っているだけでいいので光った奴から申告にこい」


 と肉だるまは説明を終えた。

 俺は一回これを馴染みの錬金術師の家で使った事があり、その時は黄の光を放った。

 黄、って事は土か。

 そういえば馴染みの錬金術師も俺は土属性だとか言っていたな。

 個人的偏見になるのだが、土って他の属性に比べればなんとなく地味な印象があるため俺はあんまり魔法に深く関心を持たなかったのだけれど……。

 っと、周囲でビー玉が光り始めた。

 ひじりは、緑。 風か。

 千冬は、青。 水。

 エルニエル先輩は黒。 闇ね。 ん? プリーストなのに闇? まあ、深く突っ込まないでおこう。

 ロブ爺さんは赤。 火か。

 なんかどんどんみんな光っていっているのに俺のだけうんともすんともいわない。

 はて? 黄に光るはずなんだが、どうしたんだろ。


「ん? 一人だけ申告がまだの奴がいるな。 クラブ=アルフォンツ、お前は何色に光ったのか?」


「いや、何色も何もまだ光ってすらいないんですが……」


「は? そんなはずないだろ」


 そういって近付いてくる筋肉だるま。


「ん? 光ってないな……。 故障か?」


 そういって別のビー玉を渡す。

 しかしそのビー玉も無反応。


「お前、今魔力カラみたいだな」


「は?」


「今お前の身体には全く魔力がないって言ってるんだ。 どっかで呪いを受けたとかないか?」


 筋肉だるまの質問で考えてみるがそれに思い当たる節は残念ながら出てこなかった。


「仕方がない、ほれ」


 といって筋肉だるまは青い液体の入った瓶を渡してくる。

 それは消費した精神力を一瞬で一定量回復するためのドリンク。

 なんか正式名称が長いので見た目から青い水と一般的に呼称されていた。

 筋肉だるまから青い水を受け取り、それを飲み干す。

 う〜〜ん……。 ヌルッとして甘酸っぱい。

 あんまり好きじゃないんだけど。


「ほれ、試してみ?」


「へいへい」


 で、ビー玉を改めて握ってみるがそれでも反応なし。

 はてな?


「…………やっぱりお前、どこぞで呪を受けてるんじゃないのか?」


 そう言われると不安になってくるのが心情ってなもので、生まれてから今日までの出来事を掘り返して掘り返して……。

 結論からいうとそれらしいものはまるで心当たりがなかった。


「ま、調べてみるか。 お前もこのままじゃ不安だろ」


 と、顔に似合わず優しい言葉をかけてくる肉だるま。

 肉だるまは別名呪い探知機と呼ばれている白い水晶を俺の目の前で振り子のようにぶらぶら垂らす。


「ん……、反応なし。 呪じゃないということは間違いないみたいだ」


「それで結論をいいますと?」


「お前に魔力はないって事だな」


「はい?」


 人間には必ず微量なりとも魔力は宿っているものである。

 それが俺には全くかけらもないとの事。

 つまり俺は人間じゃない、って事で解決してしまったのか、この筋肉だるまは……。


「まあ、そう落胆するな。 人間必ずしも六属性のどれかに該当する、ってわけじゃない。 先も言ったが例外も存在する。 お前もその口じゃないのか?」


「はあ……」


 とりあえず俺は土属性っていうの前もって知ってるし例外に当てはまることはないんだが……。

 ま、気にしてもしゃーない。


「さて、この属性に関しては魔法の先生に参考資料として渡しておく。 明日はオリエーテーションを兼ねた実地訓練があるから装備は整えておけよ」


 実地訓練ってアカデミーの発祥は元々冒険者養成機関だからか。

 そんなサブイベントも用意しているらしい。

 そういうのは入学前にお腹いっぱいになるくらいやったから正直めんどい。

 しかし、ファラスの爆炎という通り名を捨てたい以上、武器は爆弾以外になんかを用意しておいたほうがいいだろう。

 帰りに武器屋でも覗いてかえるか……。

 なんかいろいろ前途多難な感じもするがアカデミー生活は始まったのだ。

 心機一転、頑張らないとな。


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