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第十二話  婚約者候補

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 エステルスンド王国の第一王子であるマルティンは、朝からうんざりした面持ちで頭を抱えていた。


 エステルスンドでは王族の婚約を子供の頃から決定することはなく、18歳から22歳の間に決めれば良いとされている。今年18歳となる王子はそろそろ、自分の結婚相手というものの目星をつけていかなければならないのだが、正直に言ってこれという令嬢が見当たらない。


 高位の貴族の令嬢たちは精霊の加護を持つ者が多いのだが、精霊の加護が強ければ強いほど、王族以外の伴侶を先に見つけてしまう傾向にあるのだ。自由を求める傾向が強くなるため、王族となることに息苦しさを感じるらしい。だからこそ、さっさと伴侶を見つけてしまうらしいのだ。


 今まで王子という立場でありながら売れ残り状態となっていたマルティン王子だけれど、今年15歳となってデビュッタントを迎える令嬢たちの中には、マルティンの妻となりたいと考える加護持ちの令嬢がそれなりの数、揃えられていた。


 彼女たちは自らを婚約者候補であると主張し、争うようにマルティンに取り入ろうとしているのだが、その中でも一番強烈なのが、

「マルティンさま〜!」

 淑女とは思えない駆け足でマルティンのところまでやってきて、ぶら下がるようにしてマルティンの腕に自分の腕を巻きつけたバーグマン侯爵家の令嬢シーラは、瞳をキラキラさせながら、豊かな胸を押し付けるようにしてマルティンの顔を見上げたのだった。


「今度のデビュッタントのパーティー、シーラ、とっても楽しみなんです!」

 元々侯爵家では庶子の扱いだったシーラは、精霊の加護が認められて以降、侯爵家の嫡出子扱いとして認められることとなったのだ。


 そのため、正妻とその娘は離縁されて生家に返されることとなり、その後釜にすっぽりと収まることになったのが、シーラとその母親のビルギットということになる。シーラの母親は数多の貴族令息たちを虜にしたという有名な美人であり、それが故に、高位の貴婦人たちは正夫人を叩き出した阿婆擦れと蔑んでいる。シーラのことも阿婆擦れの娘と呼んで嫌っている者は多い。


 そんな状態だからこそ、高位の貴族の集まりの中では仲間はずれにされるようで、一時、その姿が憐れにも見えた為に特別に声をかけたりしたのだが、それが変な勘違いを生むことになったようで、

「私!マルティン様のお嫁さんになりたい!」

 と、勘違い娘のシーラが宣うようになってしまったのだった。


 仮にも精霊の加護を持つ令嬢に対して、冷たい態度を取ったり、冷遇することなど出来やしない。三代前の王であるハルスラン3世が加護持ちを虐げたことで、王国に未曾有の危機をもたらしたのだ。扱いは慎重にならざるをえない。


「シーラ嬢も今年はデビュッタントになるんだったな」

 自分の腕に巻き付くシーラの手を剥がしながらマルティンが答えていると、

「マルティン様は、今度の舞踏会では誰をエスコートされるのかしら?」

 もちろん、私は殿下にエスコートして頂きたいと思っておりますのよ?という眼差しを向けながらシーラが問いかけてくる。


「私はクリスティーナのエスコートをすることになる」

「まあ!妹姫様のエスコートをされるのですか?」

「クリスティーナは今年デビュッタントだからね、兄である私がエスコートをすることは五年も前から決まっていることだよ」


 本当は五年も前から決まっている訳ではないのだが、五年も前から決まっていると聞いたシーラは不服ながらも納得せざるを得ない。


「殿下、そろそろお時間なのですが」

「うん、それじゃあ行こうか」

「まあ殿下!何処にいらっしゃるの?」

「修道院に付属する孤児院に慰問で訪れる予定なのだ」

「この雨の中をですか?」


 ここのところ毎日のように雨が降り続いているのは、王家としても頭を悩ませることだった。どうやらこの雨には精霊が関わっているようであり、対応を検討するために精霊都市から賢者を呼ぶ予定となっている。


「雨の中だからこそ、街には不具合が溢れ出している」

 大勢の貴族令息たちを誑かした母親によく似た顔立ちのシーラを見下ろしながら、

「シーラ嬢も下町の慰問に行きたいのかい?」

 と、マルティンが問いかけると、シーラはブルブルと首を横に振りながらパッと手を離したのだった。



 シーラのように媚びへつらう令嬢が多いことに辟易としているマルティンが最近、貧困街の視察を増やしているのは、追いかけてくる令嬢たちを上手にかわすことが出来るから。


 貧しい人々を助けるのは貴族の義務ともされているのだが、本気で慰問に取り組もうと考える令嬢が少ないのは間違いない。雨が降りしきる中、マルティンが護衛の兵士と侍従を連れて修道院を訪れると、いつもはにこやかな修道女長が、顔を強張らせながら言い出した。


「殿下、今日は殿下にどうしても話を聞いて貰いたいと言っているご令嬢が居るのです」

「うん?」

「どうやら、この長雨の原因が分かるかもしれないと言っている者なのですが」

「長雨の原因だと?」


 長雨の原因の一つは、現在判明している状態なのだが、それ以外にも長雨に関わる原因があるのではないかと王宮では言われている。原因究明のために多くの者が奔走しているような状況でもある。


 普段であれば話があると言われてノコノコ話を聞きくようなことなどしないのだが、

「分かった、少しの時間なら融通することが出来るだろう」

 マルティンはそう言って、その令嬢を連れてくるようにと、修道女長に言ったのだった。



文字が読めないシンデレラ、毎日16時に更新していきます!!最後までお付き合い頂ければ幸いです!!

ただいま『緑禍』というブラジル移民のブラジル埋蔵金、殺人も続くサスペンスものも掲載しております。18時に更新しています。ご興味あればこちらの方も読んで頂ければ幸いです!!


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