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RAT DANCE  作者: 華街
再始篇
7/22

祝福の代償

前回のあらすじ:ダニエルが倒れた

〜楽しみの代償〜


「ダ、ダニエルーー!!!」


 ダニエルが地面に倒れたまま動かない!

 やばい、この場に回復できる人はダニエルしかいないのに!その回復役が倒れてしまった。

 これが祝福の代償かぁ…………(小並感)


「ま、部屋で寝かせておけばいいだろ」


 Bが愛想ないことを吐き捨てる。

 

「そうだな」


 リーダーもそれに同意している。なぜ?

 あんたらの大事な幹部なんだろ?

 しかし、ダニエルはいつもお酒飲んで酔っ払っているらしい。 

 ならもう慣れっこなのか。

 しかし俺は入団初日なため慣れるとか関係ないわけで。

 

「ダニエルさん大丈夫ですか?」


 それなりに心配をしてしまう。

 俺は軽く肩を揺さぶってみる。

 しかしダニエルの意識は深淵にあるらしく、むにゃむにゃと眠ったままだ。


「あ、今敬語使ったー!腕立て10回!」

「今そんな場合じゃないでしょ」


 そう、俺は入団初日なため、気が抜けるとつい敬語になってしまうのだ。そんな俺の敬語をなくそうという理由で敬語を言ったら腕立てふせを10回させられる『sin of Keigo』が流行ってしまったというわけだ。

 ボタンはみんなの前で敬語を使ってるのになんで俺だけ?と聞いたら


「私の家柄はとても厳かだったので家でも敬語を使っていたんですよ。だからその名残です」


 とちょったした地雷に触れてしまったような回答を教えられた。


 ___ていうか改めて名前聞くとどういうこと?安直すぎない?


「ダニエルは私が部屋に戻しておきますから」


 そういってボタンがダニエルをかつごうとする。

 だがしかし、ボタンの華奢な体では支えきれなかった。

 ダニエルがボタンに覆い被さるように床に一緒に倒れてしまった。


「うぅ……助けてくださいー……」


 ボタンが涙目になりながら助けを乞う。

 そんなボタンの上にはふにゃふにゃした顔のダニエルが寝たままだ。


「おい!23歳!起きろ!そろそろ本気でおこ……」

「それは言っちゃダメだよ〜……」


 Bの叱咤と失言が聞こえたのか、ダニエルが深淵から這い上がってきた。

 そんなダニエルの開かれた目は、やはりいつもの頼もしい瞳ではなく、寂しげな涙が浮かんでいた。

 

「起きたか!じゃあ部屋行って寝ろ!」


 Bには慈悲がない。

 涙を浮かべている女性(酔っ払った最年長女性)にBはそう言った。

 そこからはダニエルが泣きながらふにゃにゃしたままボタンの上を離れなかった。

 5分くらい経ってボタンがピキって、それをみたキメラが大慌てでダニエルをどかした。


 その後の流れは、Bがダニエルを担いで部屋に寝かしに行き、ボタンがその間皿洗いをして、俺とキメラが風呂に入ることになった。

 風呂に入る時間はおおよそ決まっているらしい。

 今日はいつもより色々なこと(酔っ払いおばちゃん誕生)があって遅くなってしまったため、20分で全部済ませろとBに言われた。

 もしかしてここの保護者枠ってBなの?

 そんなこんなでキメラと一緒に入ることになった俺は、空き部屋となっていた部屋に向かう。

 そこには他の部屋と同じように扉の前に『ミイラ』と名前が書かれた札がかけえられており、中を開けるとベッドもタンスも時計も色々な家具がいつの間にか置かれていた。

 タンスの中には服や下着が入っていた。

 ___え?この短期間で家具全部あるんだけど、なんで?

 一瞬怖くなって、部屋に戻っていたリーダーに助けを求めた。

 すると


「それやったのは私だ」


 と驚きの回答が出てきた。

 なんでも、俺たちがダニエルに研修を受けていた時にリーダーの黒驢丸(こくろまる)の【反転】で倉庫にあった家具と部屋に続く道の所々に置いたペンと位置を入れ替え続けて家具を全部設置したらしい。

 とても便利なのがわかったが、その……なんというか……


「【能力】って色々な使い道があるんですね」

「皮肉か?」


 バレてしまった。

 でも、この人は寛大なのか、それともそう言うネタが好きなのか、リーダーは微笑んでいた。

 その笑みは、なぜか知らないが温かく、安堵のようなものが見えた。

 俺はリーダーにありがとうございますと感謝を伝えてその場を去ろうとした。


「なあミイラ、本当に記憶はないのか?俺のこと、何も覚えていないか?」


 リーダーが背中からそう俺に尋ねる。

 一人称が『私』から『俺』になっていた。


「本当に、何もないですよ。俺の記憶も、俺と関わった全ての物。全部ないです。」


 リーダーに振り向いて、俺はそう言う。

 

「そうか、すまんこんな事を言って

 ああ、そうだそれと……」


 リーダーが何かを思い出したらしい。

 ___なぜかわからないがリーダーは笑っている。


「腕立て40回」

「…………この雰囲気でやるの?」


 リーダーがニヤけながらこくりと頷く。俺は天を仰いだ。


 キメラと会ったのは、リーダーが俺が腕立てふせをしているところを隣で暗黒微笑しながら見ていた時だった。その時にキメラは微妙な顔をして、でもそのすぐ後に笑いやがった。

 それからはキメラと風呂に入っていた。

 銭湯に行った記憶はないが、俺は銭湯がどう言う物なのかはわかる。ここはまさに『THE・銭湯』と言う感じだった。露天風呂はないが、それでもサウナだったり水風呂がある。

 ただ、あるだけでそれらは機能していない。キメラからの話によると


「どうせ誰も使わないからってBが機能しないようにしたんだよ」


 だそうだ。

 実際、キメラも体を洗って浴場に入るだけだ。

 ここに慣れたらそのようになれるだろうか?

 だが俺は慣れた者ではないので、ここの大浴場にすっごい興奮していた。

 キメラのその興奮ぶりに引いたらしく、


「ミイラ、そういうの好きだったんじゃない?」


 そう言われた。

 確かに、俺は記憶がなくなる前、白井玖人だった時はこういう建築関係などが好みだったのかもしれない。

 

 俺は、大浴場で色々なことをキメラから教わった。

 リーダーが本当に中学一年生だったこと、ダニエルが本当に最年長なこと、Bがこの中で一番家庭的で仕事もできると言うことも。そして、キメラとボタンが幼馴染だと言うことも教わった。


「俺とボタンはね幼稚園から一緒だったんだよ、そして高二の今でもこうやって一緒にいるの」


 そう、屈託のない表情で言った。

 キメラの笑顔には人を惹きつける魅力がある。

 そこで、俺は気になっていたことを思い出した。


「そういえば、執務室でキメラが『任務以外の仕事』がどうこうって言ってたけど、それって何?」

「あ〜それね そういえば言ってなかったね」


 キメラがお湯を掬い自分の肩にかける。

 こういう綺麗な動作はボタンにそっくりな印象を受けた。


「俺たちは『【異常】の沈静化』を主にしてるんだけど、その任務だけじゃ俺たちは賄いきれないんだよ。だからそれ以外の仕事を副業としてやっているってわけ」


 なるほど。【異常】は頻繁に出るわけでもないし、それの沈静化の依頼なんて報酬の額以前に数もないだろう。考えてみれば当たり前だ。

 

「じゃあ、その『任務以外の仕事』っていうのは?」


 キメラが答える。


「BがDJの仕事 これは電話で依頼されてその地域に吹っ飛んでいくってやつだね。Bはすごいらしくて、その界隈では『BPM様』って呼ばれているらしいよ」


 そうなのか、あの自信はやはり虚構から生まれかものではなく、ちゃんとした実績があるみたいだ。


「そしてダニエルがお祓いの仕事 これも電話だね。ダニエルの【加護】は悪霊のお祓いもできるらしくてねとても便利なんだよ」


 さすが『女神様の加護』を扱えるという【能力】だ。あれは神秘っぽさを感じる。


「そしてボタンは絵を売ったり、絵を依頼されて作ったり、とにかく絵の仕事をしてるよ。ミイラも見たでしょ?あの絵 素敵だよねー!」


 ボタンはその才を生かして絵師をしているらしい。若くしてそこまで翼を広げられるのは大した才能だ。いや、それに加えて本人の絶え間ない努力の結晶か。


「そして?」

「いや?他はもうないよ」


 ___へ?


「俺とリーダーはそれ以外の仕事をしていないね。」

「まじ?」

「おおマジ」


 おおマジだったか〜…………


「でも、館に留守番をするのは悪いことじゃないよ?普通の仕事以外の任務がきたときの対応する人も必要だし」

 

 確かにその通りだ。そのために『応接室』があるんだから。


「でも留守番する人数も増えたことだし、新しく仕事を始めるってのもいいかもね」

「留守番が増える? なんで?」


 そう聞くとキメラが俺に指を刺す。

 一瞬なんのことかわからなかったが、想像がついた。

 そうだ 俺は無職だ。


 名残惜しかったが大浴場を出て、女性陣ボタンだけへとバトンを渡す。


 そこで俺は疑問に思ったことを口にする。


「そういえば なんでリーダーとBは一緒に風呂に入らなかったの?」

「それはね、どっちとも1人で入りたいらしいんだよ。たまにリーダーは俺と入る時もあったけど、Bは今までで一度もなかったなー」


 キメラが思い出したように言う。

 リーダーはわかるが、面倒見のいいBがなぜ1人にこだわるのだろうか?

 よくわからないな。

 そう思いながら廊下を歩き。部屋の前でキメラと別れを告げる。


 1人で部屋にいる。

 記憶をなくした俺にとって、それは初めての感覚だった。

 俺は寂しさを感じていた。

 それと同じように、俺は『懐かしさ』を感じていた。

 この部屋に対するものではないだろう。この『1人の時間』に、俺は懐かしみを覚えていた。

 白井玖人だった時の記憶だろうか。白井玖人はずっと1人だったのだろうか。

 俺にはわからない。ただわかるのは、今感じている『懐かしさ』だけだ。

 俺はふらりと机の上に視線を落とした。

 

「ペンとノート……」


 そう呟く。

 何も不思議なことじゃない。普通な机だ

 椅子に座り、ペンを握り、ノートを開いた。

 何かを思い立つ。


「日記を書こう」


 日記を書く。唐突に思いついた。

 思い出したの方が正しいだろうか。

 おそらくまた、玖人の時の記憶だろう。

 前の俺は日記を書いていた。毎晩、それを寝る前のルーティーンとして書いていたような気がする。

 確証なんてない。玖人が本当にしていたのか、わからない。

 でも、俺は少しでも前の俺の情報が欲しい。


「……結局 過去に囚われているな」


 苦笑が混ざった独り言は、むなしく部屋に鳴く。

 反響するでもなく、聞こえたのはただその一度だけだった。

 俺は止まっていた右手を動かす。

 今日生きた印を、このノートに書き綴る。

 前の自分の真似事のように、ただ断じて真似事だけではない。

 俺の意思で、俺は俺の印を書き始めた。


 7月23日。その文字から始まる文章は、俺の気持ちが詰まっていた。


 視線を時計に移す。

 短針はすでに11の数字を通り過ぎている。

 俺はノートを閉じて、ペンをペンケースに戻し、椅子から離れた。

 そのまま、ベッドに身を委ねる。

 天井が、俺を見つめていた。

 足をベッドの上に乗せて、寝る姿勢へと移した。

 そのまま目を瞑る。

 瞼の裏には今までの数少ない、それでいて膨大で、『異常』な経験の数々が蘇る。

 前の俺は『普通の日常』にこだわっていた。

 でも今の俺は、明らかに『異常な日常』を過ごそうとしている。


「それもありだな」


 目を瞑りながら、そう呟く。

 その言葉は、俺の中で何度も響いていた。

 どうもこんにちは筆者の華街です。

 今回の後書きは流石に設定じゃないよ♡

 設定厨おじさんは封印しました。

 でも、その、あれだな

 設定喋らないと枠が埋まらないな。

 私お話の話題作るのが超苦手なんですよね。

 誰か私のフリーダイヤルにかけて、私の相談に乗ってください。


 フリーダイヤルなんてねえよ。


 と言うことでまた次回お会いしましょう。華街でした〜

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