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RAT DANCE  作者: 華街
再始篇
4/22

己の覚悟

〜己の覚悟〜


 美術室を出た俺たちは、その階から一つ上に移動している。


「あの〜…俺たちはどこに向かってるんですか?」


 今は上の階、4階に登る為の階段を登っている。

 歩いている最中、誰も口を開かなかったものだから、耐えきれず声を出した。

 だが、その言葉はどこにもぶつからず彼方へと飛んでいく。

 とてつもないオーラを感じる。十中八九、あの話しのせいだろう。

 俺がこの団に入るのか、それともただの客としてこのまま去るのか。

 ……心構えをしといたほうがいいだろうな。


 俺はこの団に入るつもりはない。それを伝えるために。


 階段を登り終えて、目に入ったのは大きな扉だった。

 重厚そうな、あまりにも異様な雰囲気を漂わせていた。

 否、俺は『神聖さ』を感じていた。


「玖人 準備は良いか?」


 リーダーが重い扉に手をかけながら、俺の方を振り向く。

 リーダーの横顔が少しニヤけたように見えた。

 扉は軋む音を立てながら、重々しく開かれる。


 手前から奥まで幾何学模様が描かれた豪勢なレッドカーペットが敷かれている。

 その脇には木の長椅子が正面に向かい、並べられており、それが列を成している。

 壁にはイオニア式の柱が建てられている。

 窓は色彩豊かなステンドガラスが張り巡らされている。

 ここには、神聖さ、可憐さ、豪華さを感じられた。

 そう、ここは……

 

「『大聖堂』だ」


 煌びやかな装飾が前を歩く団員達を照らす。

 そこから感じられる強さに、俺は心を打たれた。

 団員達がレッドカーペットの上を歩み始める。

 陽が落ちてきているらしく、左側に陽は当たっていないおらず、陰になっていた。

 右のステンドグラスから差し込まれた光が色を持ち、その光が大聖堂の床に映る。


 リーダーが前を歩きながら話し始める。左腰に携えた刀の柄に手を置きながら。


「私たちは特別な仕事を生業としているんだ。その仕事を一言で表すとしたら『【異常】の沈静化』だ」


 団員達の歩幅はバラバラだ。それでも、その一つ一つに重みがある。

 

「だから、団員は多い方が助かるんだ 危険な仕事だからな。」


 レッドカーペットを一歩一歩踏み締める。だが、気持ちだけはどこか落ち着かない。


「私はな 玖人を団員に迎え入れたいんだ」


 リーダーは振り返らず、言葉だけを俺に向ける。


「私はお前の反応を見ていると気づいたんだよ。お前は全部の記憶を失ってるんじゃなく『自分自身の記憶だけ』を失ってるんじゃないか?」


 心臓の鼓動が早くなる。でも、その変化は恐怖からじゃない。

 

「お前には、それらを、自分の『過去』を知る義務がある。いや 違うな。お前は、それらを知りたいと思っている。」


 リーダーが歩みを進めたまま、こちらを振り返る。


「お前は、【リベリノーティス】に入りたい。そうだろ?」


 俺は咄嗟にその言葉を否定しようとする。俺が求めているのは『普通の日常』だからだ。

 俺はリーダーの言う通り自分についての記憶を全て失っている。

 それでも、目が覚めてから思ったのだ。

 『普通の日常』に戻らなくてはと。

 俺はそれが何なのか、わからない。

 でもそれは自分に残された唯一の過去の自分の記憶だ。

 俺に与えられた『過去の自分』からの【使命】だと。そう思ったのだ。

 だから、俺は『普通の日常』に戻らなくてはならない。【リベリノーティス】に入ったら、入ってしまったら、それとは無縁になる。一生戻れない気がする。


「図星のようだな。顔が笑っているぞ」


 図星(・・)?それに笑っている(・・・・・)?俺が?

 ありえない。あっていいはずがない。

 俺は、この【使命】に従わなければならない。それが自分を知るきっかけになると思うから。

 でも何故だ?俺の心が、それを否定している。

 

「【リベリノーティス】は、過去に囚われた者、それらから逃げてきた者達だ。俺だって例外じゃない」


 団員達の顔は見えない。でも、その背中が表情を物語っている。

 団員全員の背中に、弱さは見られない。


「お前も同じじゃないのか?お前も自分に残された少しの記憶の断片を感じ、過去の自分に囚われているんじゃないか?」


 リーダーが振り返り俺の顔を正面から見つめる。

 その瞳は力強く、寛大だった。


「玖人、お前は何をしたい。何を求めている。そこには、その心には何がある。」


 俺は何をしたい?俺は何を求めている?

 そうだ、俺は____知りたいんだ。

 【使命】以前より、『過去の自分』を知りたい。

 俺に刺されたあの針の正体はなんなのか。俺は何故撃たれたのか。【能力】とはなんなのか。俺は何故記憶を失ったのか。


 俺は、何者なのか。


 俺は、全てを知りたい。この何もない、無色の自分に色をつけたい。


「____答えは決まったようだな」


 大聖堂の最奥に着き、全員が歩みを止める。

 前には、巨大な像と煌びやかなステンドグラスが飾られていた。

 そのステンドガラスには、一本の巨大樹とそこに横たわる1人の少女が描かれていた。


 団員達が振り返り、俺を見つめる。

 全員が、優しい笑みを浮かべていた。


「じゃあ、コールネームが必要だな。」


 Bが後頭部に手を組みながら口にする。

 ダニエルさんが話す。


「コールネームは私たちが使う偽名のことよ。なるべく呼びやすい名前でお願いね。」


 それを聞き名前を考え、すぐ思いつく。


 俺は何もない自分と、それでも生き延びた自分への皮肉。そして、過去の自分のことを知り、元の自分に戻れるように願いを込めた名前を口にする。


「__『ミイラ』 俺は ミイラだ!」


 俺はここに【使命】を捨てた新しい自分の誕生を宣言する。


「ようこそミイラ、お前も今この瞬間から【リベリノーティス】の一員だ」

 どうも作者の華街です。

 ついに白井玖人、改め『ミイラ』が一員になりましたね。

 やったーー!!!よかったね!!

 何よりやっと物語が進んだのがよかったね!


 と言うわけで、今回の後書きは主人公『ミイラ』の設定ですね。え?前回で反省したんじゃないのかだって?そんなものするわけねえだろ。

 と言うことで設定でーす。


ミイラ:

 身長171cm 体重64km 年齢16歳 誕生日(ミイラとして宣言した日)7月23日(白井玖人の誕生日も7月23日)

 少し細身ですが、まあまあ体格はいいです。筋肉も人並み以上にはついている感じ。運動系部活に入っている人と同じくらい

 白髪です。綺麗な白髪です。

 今は病衣ですが、後々に誰かと買い物に行って服を買う予定です(ネタバレ)

 

 設定としてはこんな感じですかね。

 では次の話で!華街でしたー

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