純白と氷塊
前回のあらすじ:え、だれぇ?
〜白井捌守〜
「君はあの組織に、【G.D.】に所属していた。そうだろ?白井捌守」
[…!]
リーダーが息を呑む。
[まさか、そこまで知っている?いや、間違っている事があるな……うん、そうだな。おいミイラ、ピジョンの側面を4回タップしろ]
「え…うん、わかった…?」
俺は言われるがままにそうする。言われるがままにしかできない。
俺は今、考えることを放棄しているのだろう。
衝撃な事実を聞かされ、もう受け入れる事ができない。
「おい、聞こえるか」
「…?何だこの声は。ああ、それからか」
ピジョンからリーダーの声が発せられる。
その声は今までの聞こえ方とは異なり、まるでピジョンの外側から聞こえてきた。
スピーカータイプ。そんな単語が頭をよぎった。
「聞こえているみたいだな。おい蒼海薔薇、お前の発言で間違っていることがある。まず1つ目、こいつは白井捌守じゃない。2つ目、こいつ自身は【G.D.】に関わっていない。先に言っておくが、白井捌守はこいつの父親の名前だ。」
衝撃の新事実が淡々と知らされる。
なぜリーダーはそんなことを知っているのか。
「だが、合っていることが1つある。
白井捌守は、確かに【G.D.】に所属している」
……なん、だって?俺の父親が、【G.D.】に?
「いや、所属していたが正しいかな。ミイラが生まれる前に白井捌守は既に死んでいる。」
「リーダー!待って!待ってくれ!!俺も知らないぞそんなこと!?それに、なんでリーダーがそんなことを知っているの!?」
「おいそのリーダーとやら、君の言っていることが本当だとしたら私は嘘を掴まされたということになるが?」
渚が切先を下に向ける。そして、俺を、否、ピジョンを睨みつける。
「第一、私の依頼主は【G.D.】の者なんだぞ!」
渚はリーダーの言葉を信じようとしないらしい。
「なんだ?私が、私達が騙されたというのか?」
……刀が震えている
「まだ、私達は騙されないといけないのか??」
それが、怒りからだけではないとわかった。
恐怖だ
「蒼海薔薇家は、まだ搾取されないといけないのか???」
「違う、そういうことじゃ!!」
「うるさいうるさい!!そいつが私達を、蒼海薔薇家を没落に陥いらせたのだ!!」
切先が獲物を狙う。背中に嫌な汗をかいたのがわかった。
渚は高ぶった感情のまま、戦闘を再開させる。
右足で正面に飛び、刀を横薙ぎに払う。
俺はそれを両腕で必死で防ぎ、また間合いを空ける。
「私達を!父上と母上を壊したんだ!許すことはできない!!」
その顔は怒りに満ち、刀は震えている。
「おい!話しを聞くんだ!」
「うるさい!もういい、生きたまま捕らえてほしいと言われたが、もう我慢ならない!」
渚の周りに、氷ができる。
「あんたも【能力者】か!?」
「私の能力は【氷塊】。お前を凍てつかせる刃の名だ!」
渚の頭の上の空中に6つの氷柱ができる。
その氷柱は俺に先端を向ける。
「まずい!避けろ!」
ドヒュンと音をたてて氷柱が俺に襲いかかる。
「『拾参人ノ踊ル狂傀儡》』!!」
分身を壁になるように出す。13体の中で5体が当たった。
氷柱が胴を貫通し、一瞬にして全身を凍らせた。
外れた一つは俺のすぐ左の田んぼに刺さり、その水をスケートリンクに変える。
脳が全身に危険だと信号を送る。
残った8体を渚に向かわせる。
相手は強敵だ。しかし、1人であるには変わらない。
渚を囲み、一気に攻撃を仕掛ける。
数の力で相手を制圧する。
だが、それは叶わなかった。
「『氷華乱々咲』!」
渚は刀身に力を溜め四方八方に刀を振るう。
それらは冷気の刃となり俺の分身を凍らせた。
その舞が青薔薇のように見え、美しく可憐に感じた。
だが、結果は悲惨なものだ。俺の分身全員が凍らされてしまったのだ。
出せるのは13体のみ。凍らされているため溶けることもできない。
完全な、敗北を意味していた。
「……嫌な目だ。まだ諦めていないのか。分身はもう出せないだろう!」
「諦める?…その手もあったな、だが、残念ながら俺の心の炎はまだ燃えているもんでね」
分身は凍らされたままだ。だが、俺の凍らされた分身は渚を取り囲んでいる。
「動けよ!俺!!」
分身を纏っていた氷にパキパキとヒビが割れていく。
そして、13体全員の氷が砕けた。
「俺の心でこいつらはパワーアップするんだ。残念ながら、そう簡単に諦めねえよ」
「なら何度も凍らせるのみ!」
そして渚は刀を振るう。分身と交戦をする。
分身が渚に蹴りをいれる。それを刀で受け止める。が、しかし勢いは止まらない。渚は後方へ飛ばされる。
「厄介だ…」
渚は見事に着地をし、すぐに駆けてくる。
氷柱を出現させながら、冷気を飛ばしながら、また続々と分身を凍らせていく。
そして段々と俺との距離を詰めてくる。
[ねえ、このままじゃジリ貧だよ]
[おいミイラ、お前の能力の使い方は分身を出すだけじゃないだろ もっと自由に考えてみろ]
「そんなこと言ったって!能力はイメージだ、俺がイメージできないものはできねえよ!」
[だがこのまま分身を出し続けたら負けるだけだ 今度はお前自身を強くしてみろ]
「急に言われても!」
[冷静になれ、今までの数少ない記憶の中から突破口を見つけ出すんだ]
「ああもう!やってやるよ!」
記憶を遡る、あのマボロシとの戦闘を。
……そうだ、俺は一瞬腕を複数作り出し青い羽を掴んだんだ。
腕を…複数。
部位を……複製させる。
俺ははじめに腕の数を6本に生やしてみる。
だが、これじゃ近づかなきゃいけない。
そして俺はその腕の手のひらにに更に腕を生やす。リーチを伸ばす。
[その調子だ。次はそれに近しいものをイメージしろ]
腕が6本あるもの……いや、それじゃ限定されすぎてる。
もっと自由に、腕がたくさんあるもの……
[ねえ!敵がこっち向かってるよ!]
「ッチ!くそ!」
分身は3体を残してほとんどが凍らされている。
俺はその3体を溶けさせて、すぐさま俺から増殖させる。
……増殖……3体……阿修羅!
いや、それだけじゃたりないっ!もっと、もっと手数を増やせるような!
不意に、渚が刀を鞘に収め居合の姿勢を構える。
俺はそれに本能的に命の危険を感じた。風が強く吹き、砂煙が舞った。
「『氷華一閃輪』!」
渚は姿勢を低く、足に力を入れ、目にも止まらぬスピードで俺に斬りかかる。
胴に激しい打突を受け、凍らされてしまった。
どうも作者の華街です。
え、え、ミイラ負けちゃった!?
嘘でしょ!?主人公!?この先、どうなっちゃうのー?
次回 ミイラ死す
デュエルスタンバイ!!