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RAT DANCE  作者: 華街
廃夢篇
16/22

忘れ去られたものは

前回のあらすじ:マボロシと仲良くなった(?)

〜忘れ去られたものは〜


「……【鍵】?」


 俺はそうボタンに怪訝に聞き返した。


[そう、【鍵】です]


 今度はボタンは自信ありげに応える。

 ……いや、それはわかってるんだ。なんでこの会話で【鍵】が出て来るかを知りたいわけで、


[あ、そういうことですね 答えは簡単です。私の【能力】がそういうので最適だからです。そういえばミイラくんには言ってませんでしたね 私の【能力】]


 言われればそうだ。俺が知ってるのはダニエルの【加護】とリーダーの刀の【反転】の能力だけだ。そう考えたら俺ぜんっぜん団員の能力知らないな。時間があったら聞いてみよ。


[私の【能力】…それは【実現】です]


 聞いてみれば、ボタンの【実現】とは『絵に描いたものをそのまま現実に呼び出せることができる』らしい。例えば小鳥の絵を描けば小鳥が出てくるし、湖の絵を描けばそこに湖ができる。ただし、それらは現実に長くはいれないらしく、絵がうまいほど持続時間は長くなるのだとか。また、〇〇が〜〜をするっていう誰かを操るような絵は描けないらしい。

 【鍵】を見つけるのは【実現】の応用で今回のような場合だと、この廃屋をできる限り詳細に絵を描いて、別の紙に内装を描いて、別の紙に今俺が言ったマボロシの姿・性格、次にマボロシの過去……と対象の絵を描いてそれを実現させることで対象を簡易的に呼び出し、見ることで【鍵】を探すらしい。

 廃屋の写真をすっごい撮らされたのはそういうことだ。ちなみに撮った写真はリアルタイムで館の応接室にある機械で現像されるらしい。それもそれですごい。

 いやでも……いやいやいや……


「めっちゃ大変じゃない!?」

[そう めっちゃ大変です]

 

 そう簡単に返されましても……ほんとにとてつもない苦労をしてる。


[私がやりたことなんですよ 私の【能力】を使って役に立てれるんなら惜しみなく努力をします♪]


 なんだこの誠実な子は。純粋無垢。まだなにも汚いことを知らなそう。ガラスのような子だ。

 とりあえずめっちゃ感謝の意を述べておいた。心の底からの尊敬も添えて。


「なにかずいぶんと話しているようだが……なんだ?」


 眼の前のマボロシが尋ねる。いかにも怪しんでるような感じだ。


「大丈夫大丈夫。怪しいことじゃないから」

「そのセリフを聞いてますます怪しくなったぞ。まあいいが……」


 そのときだ


[よし!できました! いまから【実現】を使ういます!!]


 耳元からボタンのでかい声が響く。どうやら絵が描き終わったらしい。

 そして、今【鍵】を探している。


[はいはいはい……おや? これは…… カプセルに近いケーブルの中で何かが光ってる……ミイラくん 探してみてください]


 俺は促されたとうりにケーブルをかき分けて探してみる。すると


「なんだこれ?」


 ペンが出てきた。黒いボディに金色の装飾がされてある。だが決して高そうなものではなく、どっかのスーパーに売ってそうな平凡なペンだ。

 確かに平凡なペンだ。正しく言うとこのペン自体は平凡、となるだろうか。

 このペンは、ここに落ちている(・・・・・)。それ自体に大きな『異常』があるのだ。このペンは……おそらくマボロシを管理していた者のペンだろう。

 マボロシを見放した者、忘れ去った者のペンだ。


「待て、それはっ」


 マボロシが俺に走り寄る。否、ペンに走り寄る。

 ケーブルに足を取られ盛大に転ぶ。だが、すぐに走り始める。

 瞳には、何が映っているのだろう。

 瞳には、何を捉えているのだろう。

 マボロシは、ただただ駆ける。

 大事なものを追いかけるように。


[おそらく、それでしょうね]


 ボタンはすでに【能力】を解除しているらしい。それほど確信しているのだろう。

 俺も同意だった。

 これがマボロシの【鍵】


「これは、あの人のか……懐かしい、懐かしいな」


 マボロシはペンを両手で大事に持って、額に当てている。両目は見えない。


 忘れられ去られたモノは、いつまでも忘れた者を思っている。

 その心が恨みであっても、懐かしみであっても、愛であっても、


「マボロシ、今からあんたをそのペンに閉じ込めて沈静化する。いいか?」

「……一緒にいられるのなら、本望さ」


 いつまでも、思い続けるのだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 俺は今帰路についている。

 廃屋での、幻想世界での戦いは幕を下ろし、その後のカーテンコールでマボロシを沈静化した。

 胸ポケットにそのペンを入れている。


「……それにしても あっついなぁ」


 空は入道雲が悠然と浮かび、蝉の鳴き声が夏を謳う。

 商店街を抜け出し、今は見晴らし良い田舎道を歩いている。

 周りは田んぼばかりで、少し遠くに山とその麓に神社が見えた。

 太陽が真上に昇っている。真っ昼間だ。

 色々なことが短時間で起きて頭がバグりそうだが残念、まだ真っ昼間だ。

 こんなきれいな景色を眺めたいが、そんな余力は無い。

 うつむいて歩いていく。

 地面を見るのもワルクナイナー。


[両替機!]

[霧]

[だーー!またりかよ!]


 ほら、Bとダニエルが暇すぎてしりとりしてるよ。

 こっちは大疲れだってのに。

 なんなら帰りは【加護】とかもなく完全徒歩だから時短とかも全くできない。

 交通機関も試そうと思ったが元々お金を持ってないため、やむなく徒歩だ。

 やむなく徒歩だ!!!


「……ねえリーダー」

[なんだ?]

「もうゴールしてもいいよね?」

[できるもんなら]


 っは! 人の心!


 暇を持て余したため、こっちもどっかで水浴びでもしようかと周りを見渡す。

 すると少し遠くから人が走ってくるのが見えた。

 髪を後ろで結んでおり、だいぶ髪が長い。走るのに応じて髪も振られている。

 その人がどんどん近づいていく。

 俺はそこであることに気づいた。

 その人は俺に向かって(・・・・・・)走っていることに。そして、

 その人が刀を構えていることに。

 どうもこんにちは。作者の華街です。

 いやー、廃夢篇(はいむへん)終わりましたねー。

 あ、もしかしてこの呼び方今知りました?

 まあ言ってないですもんね。

 ちなみにこれは『廃屋+夢(幻覚)』と家とかの『ハイム』と掛けてます。

 さあそんなこんなで最後にとんでもないもんが映ってきましたね。

 誰何だこいつは!?ということで次回に移ります。

 次回からは変わって氷牢篇(ひょうろうへん)をお届けします!

 それではまた次の話で 華街でした!

 …………名前がほぼネタバレだな。

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