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RAT DANCE  作者: 華街
廃夢篇
15/22

忘れ去られた夢

前回のあらすじ:奥の部屋に入ったよ

「ようこそ『私』へ」


 その声はどこか悲しげで、苛立ちを含んでいるように思えた。

 マボロシの表情は、見えない。


[これは……なかなかだね]


 この狭い部屋の床から天井までに伸びた巨大なカプセルは、まるで「この部屋の主は私だ」とでも言わんばかりだった。

 そこから鉄の管や太いコード、電線がむき出しになったケーブル等が張り巡らされている。

 それらは床にも天上にも壁にも這っており、この部屋を埋め尽くすほどだった。

 足の踏み場が殆ど無い床を慎重に進んでカプセルの眼の前に立つ。

 眼前のガラスの向こう側には緑色の液体が詰まっていて、コポコポと気泡が立っている。

 中央にある紺色のキューブを近くでみてみると、立体パズルのようにいくつかの縦長な直方体がはめ込まれて、一つの立方体となっていることがわかった。

 そのカプセル内部の上下からコードが伸びており、キューブに差し込まれている。


「これが、私の本体だよ」


 このカプセルとキューブは先程マボロシが言っていた【G.D.】での出来事を語っていたときのものだろう。

 でも……だとしたら……


[なんで、ここにあるのかしら]


 ピジョンからダニエルの疑問が聞こえた。

 そう、その通りだ。

 マボロシが本当のことを言ってるのだとしたらなぜここにカプセルがあるんだ?【G.D.】から持ってきたのか?

 それとも……!


「まさか、この廃屋(はいおく)自体に【G.D.】と関係があるのか!?」


 振り返ってマボロシの様子を伺うと、うっすら笑みをうかべている。


「安心しろ 少なくとも最近は組織の人間は出入りしていない。」

「あ、そうか……」


 静寂


「……ん!? まて最近ってことはこの廃屋に【G.D.】の人間が来たことがあるのか!?」

「ああ」

[ええ!?]

[嘘っ!]


 マボロシからの急な告白にピジョンから団員全員の驚きの声が聞こえる。無論、俺も声を上げて驚いていた。

 その後、俺とマボロシは床の少ない隙間にあぐらをかいて話を始めた。

 この廃屋の元の家主は『金枝(きんし)』と言い、今の4世代ほど前にこの家を手放したこと。

 『金枝(きんし)家』は、回数は少なくとも組織の人間と交流があったこと。

 組織の人間と契約を結び、4年ほど前からこの廃屋にカプセルを移転させたこと。

 カプセルの点検のために金枝(きんし)家が度々この廃屋に来ていたこと。

 そして半年前いつもの通り点検をしに来た人が


「バカバカしい」


 と吐き捨てるように扉を閉じ、そこから誰も来ていないこと。


「……とまあ、こんな感じだ」

「ほ〜ん」

[……僕たちからはそいつが見えないからなんとも言えないけど……なんか急に仲良くなってない?警戒とかしといたほうがいいんじゃないの?]


 ……っは!

 急いで後ろに飛んで距離を開ける。


「っふっはははは!」


 マボロシがその光景を見て腹を抱えて笑う。


「なっなにがおかしい?」

「そりゃ どこからどう見てもおかしいだろw」


 マボロシが先程より大きく声を上げて笑う。


「いやーすまんすまんw……何なんだろうな、お前と話していると一段と楽しい というか、人間とここまで話し合ったのは私が生まれた時以来かもしれんな」


 そう話したマボロシの顔から段々と笑みが失われ、真剣になっていく。あまりの表情の変化に少しだけ驚いた。

 マボロシの表情の裏にも、なにかに驚いたようなものも見えたような気がした。


「……なあ、気になってたんだが なんで俺を『幻想の世界』に捉えようとしたんだ?」


 今まで気になっていた質問をする。もう一度マボロシの顔を見ると、顎に手を当て考え事をしているようだった。


「……最初は『お前を【G.D.】の手配書で見た』という理由だったんだが……なにか他のものがある気がするんだ」

「じゃあ質問を変えよう。もしも俺があのまま捕らわれていたら、俺はどうなっていたんだ?」

「…………」


 黙りこくってしまった。

 マボロシはずっと顎に手を当て頭を捻らせている。

 再び静寂が訪れる。


「『会話がしたかった』から……?」


 マボロシの口が開き、声が発せられる。

 そのあまりにも突拍子もない発言に思わず「え?」と声をもらしてしまった。


「私は、私が孤独だとずっと思ってたのかもしれないな……」

「それで『幻想の世界』に連れ込んで、話しをしたかったのか?」

「やろうと思えばこうやって現世で話し合えたんだ。『幻想の世界』はただの手段に過ぎない。『手配書で見た』という情報が『こいつは殺さなきゃいけない』という自分の中での概念になって、それでこの手段を撮ったんだと思う。」


 マボロシが真剣に理論を展開する。

 この対話に恥ずかしさを覚える俺が悪いのか?


「私は、なにかを知って経験してそれをもっと味わいたいという欲求があるんだろう。だから私の【幻覚】は人の記憶を探れるんだろう。」


「【神秘】とは、その者の欲求で初めて【神秘】と成る。

 と、あいつも言っていたからな。」


 マボロシは天を仰いで、なにか思いにふけてる様子だった


[ミイラくん、今なにを話したのか説明してください]


 ピジョンに促され、俺は小声でマイクにすべてを説明した。


[なるほどなるほど……見えてきました 【鍵】が]

 こんにちは作者の華街です。 

 すみませんね筆が遅くて!!最近も想像以上にリアルが忙しくてですね。

 やりたいこともたくさんあるんですよ。

 そのうちキャラの設定資料とかキャラデザとか作りたいんですけどね。いかんせん絵心が皆無なので……

 と、言うことで第15話見ていただきありがとうございました。

 おそらく次かその次で『廃夢篇』終わりです。

 それでは次の話で、華街でした〜

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