第七話 新たな一歩
ミネルネ『これは、厄介じゃな…』
ミネルネの前には、謎の男達が立っていた。
さてと、何故こうなっているのか…それを知るために少し遡ってみよう。
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談話室にて
ライラ『こ、これは、まずいですね…』
ライラがそう言うと、そこにいるみんなが真剣な趣で頷く。
ナンジェル『大丈夫です……いつものようにやれば…』
レリス『でも、今回は、今まで以上だよ?本当に大丈夫?』
その時だった。鬼の形相でミデルダが扉をぶち破る。
そしてそのぶっ壊れた扉がナンジェルにぶつかる。
ナンジェル『ごわ!』
ナンジェルが、なんとかして姿勢を保つとレリエルが甲高い声で言う。
レリエル『あら!ナンジェルに当たってしまいましたわ、まぁこれは!私のせいではないのだから気にしなくていいわね!』
ミネルネ『別にそういう問題じゃないと思うんじゃが…』
ミネルネが呆れた顔でレリエルに向けて話した。
そんなミネルネたちに見向きもせずにミデルダは、怒りを露わにする。
ミデルダ『あんたたち…言ったよな?』
ミネルネたちは、固唾を呑む。
ミデルダ『ちゃんと布団は、きれいにしろ……てぇ!!』
ナンジェル『な、何故なのですか!?ちゃんと布団は、きれいにしたのに!』
その言葉に真っ先に反応したのは、ナンジェルであった。
ミネルネ『あ、すまん。それわしのせいじゃ』
レリエル『え?』
ミネルネ『いや〜ついつい布団で飛び跳ねてしまったわい!ウシシ!』
レリス『あら、かわいいじゃない、抱きしめたくなっちゃうわ』
ナンジェルは、その言葉を無視してミネルネに疑問を問いかける。
ナンジェル『ミネルネ様!?一体、あなたはおいくつなんですか!?こんな子供みたいなことをして!』
ミネルネ『そうじゃな、ざっと、467歳かのぉ』
ナンジェル『違いますぞ、ミネルネ様の年齢は…』
ライラ『767歳!!』
ナンジェル『え、それは、爺のセリフ…』
ライラにセリフを奪われたナンジェルは、悲しげな表情をした。
ライラ『あ、す、すみませんつい……』
レリス『気にする必要ないわよ、お爺の元気な姿より、かわいい子の元気な姿の方がいいから!』
レリスがそう言うと、ナンジェルがさらに悲しい顔をした。
ナンジェル『いえ、そんなことよりですね……』
ミデルダ『あんたたち!そんなことはどうでもいいから、さっさと布団を…』
その時だった。誰かが大声で『人間が!人間が!』と言った。
ミネルネ『この声は…ネルエか?』
ナンジェル『一体どうしたのでしょうか?儀式は、まだ終わらないはずですが…』
ミネルネ『緊急事態…と、いうことじゃろう』
ミネルネがそう言って、玄関の所に走っていくと、
その場にいたミデルダさえもが冷静になり、みんなで、玄関へと向かって行った。
そこでネルエが話した内容は、騎士団と剣士団のやつらがエルフの集落を攻撃し、もう既に約1万人のエルフが死んだらしい。
そこでエルフの村長は、そのことを、ミネルネ様たちに教えて、転移結晶を使って撤退する。と言ったそうだ。
ちなみに転移結晶というのは、簡単に言うなら大勢を転移できる石、という認識でいいよ。
それでミネルネたちは、事情を把握して、すぐに人間との戦いへと移った。
最初の予定では、ミデルダとナンジェルが足止めをする。
という話だったんだけど、ミネルネが『それは、できない』、自分も行って人間と戦う、と言ったそうだ。
ネルエは、『なら、自分も!』と言ってたけどミネルネに『わしが死ぬわけないじゃろう心配性じゃな』と言って拒否られた。
ミネルネ『お主たちは絶対に生き延びるんじゃぞ』
レリス『正気なの?ミネルネ様』
ミネルネ『正気じゃ、無論死ぬつもりもない』
レリス『……命の恩人にそこまで覚悟の決まった顔をされたら、何も言えないわよ……ネルエたちのことは私に任せて、絶対に死なせないわ』
その後ネルエは、レリスたちに連れてかれた。
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そして時は、今へと…
その場には、ミネルネ、ナンジェル、ミデルダ
そして、お久しぶりのテンセル、そして見慣れないカウボーイ風の男と、騎士の鎧を来た黒肌の男、がそれぞれが警戒し合い、互いに見つめ合う。
まず1番最初に動いたのは、
テンセル『お久しぶりぃぃだなぁ!吸血鬼ぃ!』
テンセルがそう言いながら両手に持った2つの突撃槍【真実の槍】を逆手に持ち、真っ先にミネルネへと突き刺しにいく。
それに真っ先に対抗したのは、ナンジェル。
ナンジェルは、テンセルに対抗するべく、レイピア【紳士の心】を出現させ、2本の突撃槍を【紳士の心】の武器魔法、ジェントルマインドを発動し、透明な壁で受け止め、すぐさまレイピアでテンセルの腹を狙って突き刺そうとする。
が、テンセルは、その素早い攻撃に対応して後退する。
テンセル『おいぃおいぃ、俺ぇのぉ!邪魔すんなぁ!』
不機嫌そうな言葉とは、裏腹にテンセルは、邪悪な笑みを浮かべながら、さらに言葉を続ける。
テンセル『邪魔ぁしたんだからよぉちゃんとぉ俺をぉ楽しませてくれよぉぉぉぉ!』
テンセルの上擦った声に反し、ナンジェルは、実に冷静にこう言った。
ナンジェル『お主のような者は、この爺めが成敗してくれましょう』
テンセル『成敗ぃ?いいねぇ、いいねぇ!やってみろよぉぉ!』
カウボーイ風『おっと、じゃあ俺様は、あのおばさんをやらせてもらうぜ』
黒肌騎士『好きにしろ』
カウボーイ風『あぁ、好きにさせてもらうぜ』
カウボーイ風の男は、そう言って赤のリボルバー【紅の弾丸】そして、白のリボルバー【白の弾丸】
を取り出し、ミデルダに向ける。
カウボーイ風『さ、死んでもらうぜ』
カウボーイ風の男がリボルバーの引き金を放つ、それと、同時に…
今まで突っ立っていた、騎士の鎧男……なんかめんどくさいからもう名前で言うね、えーと、カウボーイ風の男の名前はアレン、もう片方がガダル、覚えてね!
今まで突っ立っていたガダルが動き出し、素手でミネルネに向かっていった。
その行動にミネルネは、怯むことなく、颯爽と【炎血の鎌】を出現させ、素早い速さで振り下ろす。
ガダル『ふん!』
ガダルは、その鎌を両手の平で受け止める。
ミネルネ『くっ!』
(なんという反射神経!こいつ人間か?)
ミネルネはそう考えたが、すぐさまに思考を切り替え、【炎血の鎌】に、波動を収束させる。
ガダルは、危機を察知し、鎌から手を離して後方に退き、こう言った。
ガダル『この俺に食らわせてみろ。その技を』
ミネルネ『最初からそのつもりじゃ!』
ミネルネは、鎌を振りかざし、こう叫ぶ。
ミネルネ『ブラッドソウル!』
収束した波動がガダルに向けて、放出される。
ガダル『ほう、強いな…』
ガダルがそう言って感心していると、ミネルネは、すぐさまガダルの後ろに回り込み、鎌で切り刻もうとする。
ガダル『だが……』
ガダルが、言葉を切ると、攻撃を受け止めるべく、自分の愛用しているメリケンサック【閃光の拳】を目にも止まらぬ速さで身につけ、また再び呟く。
ガダル『甘い!』
ミネルネ『な!』
ガダルは、一瞬でミネルネを吹き飛ばし、赤い波動を閃光の如く消し去っていく。
ミネルネ『ぐっ!お主本当に人間か?』
ガダル『俺は、非常識だからな』
ミデルダ『ミネルネ!』
ミデルダは、心配そうな声で叫ぶ。
そんなミデルダを気にも止めず、アレンは、武器魔法を発動させる。
アレン『よそ見は、よしといたほうがいいぜ?くらえ!俺様の武器魔法!』
アレン『サンドクロス!!』
アレンは、2つの銃を構えてミデルダに向けて引き金を引く。
ミデルダ『くっ!』
ミデルダは、2つの銃から放たれた赤と青の弾丸を避けるべく、横に移動し、無事に回避した。そう思われたが、2つの弾丸のうち、赤の弾丸が急に軌道を変え、ミデルダの脳天に向かっていく。
ミデルダ『な!』
ミデルダは、慌てて避けようとするが、少しだけ掠ってしまった。だが、その少しは、決してぬるいものではなかった。
アレン『ふぅ〜こっちは、もう終わったぜ〜』
ミデルダ『ハァ?何言ってんだいあたしは、まだ…』
その時だったミデルダは、地面に膝をつき、それを見たアレンは、言葉を続けた。
アレン『ま、どうせ死ぬんだし、教えてやるよ。赤の弾丸には、汚染性のある猛毒が入っていてな、ちょいとでもカスったらおしまいの恐ろしい代物だ』
ミデルダ『じゃあ青の弾丸は?どんな代物…』
アレン『おーっとそれは、言えねぇなぁ?』
ミデルダ『くっ』
ミデルダが完全にバタリと倒れ込む。
ナンジェル『ミデルダ様!』
ミネルネ『母上!』
そんな2人の声を、掻き消すほどの大声を上げて、テンセルが叫んだ。
テンセル『おいぃおいぃ、よそ見厳禁だろぉ!?』
テンセルは、ナンジェル向けて、槍を突き刺しにいく。
ミネルネ『こうなったら仕方あるまい、もう出し惜しみなど出来ぬ!魂装魔法を使う!』
ナンジェル『了解しました!』
ナンジェルは、潔く賛成して、武器魔法のジェントルマインドでミネルネを攻撃から避けさせようとしたその時。
アレン『おっと!そうは、させねぇよ!』
ナンジェルの魔法より先に、アレンが動き出し、謎の棒を持ち、その棒をミネルネに向けた。
そして、突如ミネルネのを稲妻包み込み、ミネルネの体が完全に痺れ、倒れ込む。
ナンジェル『な!ミネルネ様まで!』
アレン『生憎と、その女に魂装魔法を発動されたら、流石にまずかったからな』
ナンジェル『くっ!』
はっきり言ってこうなってしまったら、負けるのは確実なのでナンジェルは、勝つことよりもいくら時間稼ぎができるか、を考えた。
だが、そんな暇をアレンたちは、与えない。
すぐさまナンジェルを仕留めるべく、動き出す。
ナンジェル『そんな易々とやられてたま……がっ!』
ガダル『俺は、非常識だからな』
ガダルの手には、ナンジェルの心臓が握られていた。
ナンジェル『あ、こんな…』
ナンジェルは、膝から崩れ落ちた。
アレン『よし、終わったな、じゃ!俺は、この吸血鬼をあいつに渡しに行くからな』
アレンは、そう言ってミネルネを担いだ。
ガダル『好きにしろ』
そんなガダルの対応にテンセルは、思う。
(相変わらずぅ無愛想な奴だぁ、何故ぇ俺がぁこんな奴の…)
テンセルは、心に秘めた思いを切り替え、さっさと撤退することにした。
テンセル『俺もぉそろぉそろぉ引くかぁこの場には、もう人外ぃはいないだろうしぃ』
そして、テンセルたちは、去っていった。
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そんな死闘を繰り広げていた時、また別の場所では
ネルエ『……』
この場は、静寂に包まれていた。誰も喋らず、ただ歩く、その時だった。
何もないところから何者かが霧とともに現れた。
その霧は、段々と消えていき、その姿を露わにしていく。
レリエルたちは、警戒しながらただそれを見守る。
その人物は、見知った2人の人物だった。
レリス『マラにジノル一体…』
ジノル『あ、どうも…』
マラ『貴様たちが生き残りか?』
ネルエ『は?』
真っ先に俺の口調の変化に反応したのは、意外にもネルエであった。
俺『ほう、お前らが、レリスに、レリエル、ライラにネルエだな』
レリス『えぇそうだけど……一体何が…』
ジノル『あ、それについては、僕が…』
レリスの疑問に答えたのは、霧の中にいたもう1人の人物ジノルであった。
そうして、ジノルは、今まで何があったかを手短に説明した。
ジノル『てなことがあって…』
レリエル『もう1つの人格ってこと?』
俺『まぁ、そうでもあるが、そうでもない』
ライラ『?』
俺『そんなことより、だ、貴様ら一体これからどうするんだ?』
レリエル『どうするって?それは、もちろんミネルネ様たちが来るまで待つしかないでしょう』
俺『何故だ?どうせもう死んでいるぞ?』
ネルエ『な!ふざけるな!』
ジノル『!!』
俺の口から出た容赦のない発言に、ネルエは、激昂し、ジノルも驚いた。
レリス『流石にいくらなんでもその言葉使いは、
ないんじゃないか?』
レリスの発言に俺は、呆れた表情で言う。
俺『はぁ?何故わざわざお前らに気なんて使わなければならない…自分がどうするかは、自分が決める』
ネルエ『なら、ミネルネ様が死んでるかどうかは、自分で決める』
俺『勝手にすれば良い俺様は、憶測を語っただけだ』
ネルエ『そうかよ!』
ネルエは、怒りを剥き出しにしている。
俺『そんなことより…』
ネルエ『そんなことより…だと?』
俺は、そんなネルエの声を無視し、話し続ける。
俺『お前らこれからどうすんだ?』
レリエル『うーん特に…ない、エルフたちに着いていこうとは、思わないし』
レリス『そうね、私も同意見』
ライラ『僕も』
ネルエ『俺は、城に…』
レリス『あんた、まだ言ってるの?何のためにミネルネ様方が私たちを逃したか、分かってるの?』
ネルエ『…だが俺は…』
俺『あ"ぁ〜もういい!貴様らに選択肢はない!つまらん論争はやめろ!めんどくさい!とりあえず着いて来い!』
ジノル『え?どこに行くの?』
俺『いいからさっさと着いて来い!』
そうしてネルエたちは、自分勝手な俺に無理矢理連れられて、新たな一歩を踏み出しのだった。しかし、それは希望の一歩などではないことなど一目瞭然だった。
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