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第六話 俺の、私たちの目的

 俺『はぁ、はぁ!』

俺は息を切らしながら、ただひたすらに歩き続けた。


 考えが追いつかない…否、ただ考えたくないからだ。想像もしたくない。だから、ただ走った。


 そして、俺は、村の入り口に着くと、焦りながら走っているジノルの姿があった。

 俺は、慌てジノルに駆け寄ろうとすると、ジノルが話しかけてきた。


 ジノル『早く逃げろ!シゲルダが足止めしてる!』


 俺は、その言葉を無視して燃えている家に向かおうとした。そんな俺をジノルが行かせまいとした。


 ジノル『今、あいつらは、吸血鬼とエルフを殺そうとしてるんだ!しかも、近衛剣士団も呼んで!』

 俺は、その言葉は、無視して、村の方へと歩き出す。


 ジノル『マラ!エルノは…エルノは、死んだ!』



 認めたくない、認めたくなんてない。こんなのあんまりだ、なんで、なんでよりにもよって…おかしいだろ?なんで?エルノが?

俺は…また…。


 なんでどうして?思考を巡らせそして、導きだす。


しかし、その考えはーーー


 ただの逃避でしかなく、現実的な思考では、なかった。


 俺『冗談…なんだよな!』


 俺が、笑顔でそう言うと、

いきなりジノルが俺の顔をぶん殴ってきた。


 ジノル『マラ…お前!何言ってんだよ!こんなところで冗談なんか言うか!』

 俺『だって、お前泣いてないじゃん』


 ジノルは、怒りを抑え込み露わにしてこう言う。


 ジノル『お前、僕がなんとも思ってないと思ってるのか?僕はな!お前より!エルノと過ごしてきたんだぞ!』


 俺『え、あ、いや』


 俺がそう慌てるのを見ると、ジノルは、怒りを抑え込み冷静にこう言った。


 ジノル『君の気持ちは、わかるし、僕が嘘をついてる可能性だってある。だから、行きたいなら行けばいいさ』


 それは、ある意味、確かめるチャンスだったが、ジノルから言ってみれば、行っても意味などないということだった。ジノルが嘘をついてる様子などなかった。それに、そんな嘘をつく意味がない。


 俺『本当に…死んだのか?』

 ジノル『そうだよ…』

そう言って、俺に手を差し出す。


 ジノル『ほら、早く逃げないと、あいつらが追いかけてくる、早く、ミネルネたちにも伝えないと…』


 俺は、その手を掴みこう言う。

 俺『すまない、ジノル……俺は…どうしても…』

 ジノル『…………』

 

 ジノルは、ただ黙って見つめる。

 俺は、そんなジノルの横を通り過ぎ、村へと向かおうとした。


 その時だった。突如、村から凄まじいほどの爆発が起こった。

 その爆発は、見たことのないもので、爆風もなく、ここが異世界だと、そう思わせてくれるほどに美しく、絶望的であった。



  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 遡って…。


 シゲルダ『これなら問題ないだろ…後は、ジノルとエルノをうまく逃して…後は、あの吸血鬼どもを…』


 なんで俺がこんなことするのか?そんなの決まってる。僕が彼女を好きだから、誰にも奪わせたくなんてないから。僕がここに来て初めて恋をした、女の子だから。



 ジノルも面白いやつだった。エルノもだんだんと話すうちに好きという感情を持つようになった。


 でも、俺はこの感情を黙らせた。俺はついついそのことをジノルに言ってしまった。そしたらジノルの奴、何したと思う?あいつそれをエルノの前で言いやがった。


 普通なら怒るが、俺は怒れなかった。理由は、単純にエルノが『じゃあもっとお互いを知らないとね!』と言ってきた。優しすぎる。優しすぎてしまうから断れない。優しすぎるからこそ、危険だった。この子はいつか、必ず損をする。だから俺は、何をしてでも守ろう。


 そして、エルノの恋を見守ろうと…だけど、実際にエルノがあの吸血鬼を『好き』の言った時は、耐えられなかった。何故…会って間もない奴に…。


 そんなクソみたいな奴はクソみたいな選択肢を再び選んだ。

 


 まずは、大人どもに吸血鬼がこの村に侵入してる、とホラを吹き、聖光騎士団を呼び込ませた。


 準備を整え、エルノを逃がす作戦を決行した。


 だが、俺は…………僕は、遅すぎた。

 

 そこには、燃やされたエルノの親と、何度も何度も斧で斬りつけらるエルノがいた。


 シゲルダ『何……やってるんですか。』

 村の人『は?お前が言ったんだろ?全員皆殺しだって…』


 シゲルダ『やめてくれぇ!!!』


俺はそいつに飛び掛かった。


 村長『お前ら!こいつも人外の下僕だ!殺せ!』


 村の人『死ねぇ!裏切り者が!』


 村の人は、飛び掛かるシゲルダに向けて、斧を振り下ろす。

 


 謎の女性『おっと、そうはさせないよ!』

 その瞬間、謎の女性がその斧を受け止める。


 シゲルダ『ハハハハハハ!』

俺は笑うしかなかった。なぜ死なないんだ?なんで止めるんだ?あぁ、可笑しい、ふざけてる。俺は死ぬべきなのに!


 エルノ『し、シゲルダ…』

ハハ!ハハ…ハ?え?え

 シゲルダ『エルノ?』

 エルノ『ハァハァ…さす、がに痛いなぁ…ハハ…

ねぇ、シゲルダ…聞いて?』

 シゲルダ『あ、あぁ』


 村長『おい!まだ生きてるじゃねぇか!早くその女と化け物どもを殺せ!』

 村長が慌てた様子でそう言う。


 謎の女性『ちょっと黙ってようか?』

女性が睨みつけながらそう言うと、村の人達の体が止まる。


 エルノ『私…あなたたちと……暮らせて良かった…絶対に…生きてね、ごめんけシゲル…ダ…あなたの気持ち…気付いて……た。でも、…ハハ…断れなかった……』


 シゲルダ『ごめん、エルノ、僕のせいで……』


 エルノ『シゲルダ…生きてね……ジノルと仲良くして』



 エルノはそう言って、涙を流す。そして、小声で何かを呟いた。


 エルノ『やっと……また、会えたのにな……』


 エルノは何かを呟くと、目の光りを失った。息を引き取ったのだ。


 シゲルダ『…俺は、君が好きだった。だけど、僕は、自分のためにあの吸血鬼を…マラを殺そうとした。その結果君を死なせた。……でもそれでも生きていていいなら僕は生きるよ…生きて罪を償うよ…ん?あ、この…ネックレス』

 


 エルノの手に握られていた、黄色のネックレスを見つめる。


 シゲルダ『このネックレスは、いつか好きな人に渡す物…』


 そう言ってエルノと初めて会ったころを思い出す。

そして、シゲルダは決意した。


 シゲルダ『これ、彼に渡してくるよ、エルノ』

シゲルダは、そう言って立つと。


 謎の女性『おっとぉ悪いけどそれはさせられないよぉ?あなたには、来てもらうわ、私たちの目的のために…大体、今から会いに行ってどうすんのよ誰もあんたを許しはしないわ。許してもらえると思っているのなら貴方はイカれてるわね』


 謎の女性がシゲルダに立ち塞がる。シゲルダはそうして初めて彼女の存在に気付いたのだ。


 シゲルダ『あなたは?いえ、今は、どうでもいいですね…僕をどうしようと構いません、だけどこのネックレスは、彼に…あの吸血鬼に…』

 謎の女性『はぁ……わかったわ…じゃ早く私の手を握って…』


 女性はそう言ってネックレスとエルノに何かの魔法をかけて、置いた。

 シゲルダ『え?』

 謎の女性『そんなことより早く手を握って、でなきゃ巻き添えを食らうわ』

 シゲルダ『はい…?』


 巻き添え?と、シゲルダは、疑問に思ったがその疑問は、口に出さず、女性の手を握った。

 シゲルダは考えた。生きる。そのことこそが僕の、俺の目的であり、罪だと。


 シゲルダが手を握るとその瞬間にシゲルダと謎の女性は、消えて、村の人達が動き出す。


 村長『な、何だったんだ』

 村の人『そんなことより!早く化け物を殺してください!じゃないと私達は…』

 

 その時だった。突如、エルノが光り出す。


 村の人『な、なんだ!?この光!?』


 


  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そして、その爆発が止んだ(やんだ)後、きれいに穴が空いた。その中に光る物があったので、俺とジノルは、慌てて見に行った。


 そこには、アクセサリーが落ちていた。


 ジノル『これは…エルノの…でも、こんな爆発の中で傷1つないなんて…』


 俺『本当に…死んだ…ハハハハハハハハ……また!また………アハッ!』

急に笑い出した俺をジノルは、俺の体を揺する。

 ジノル『マラ!しっかり!気を保て!』


 だが俺にその言葉は、届くことなく。


 俺『あ、あ、あぁあ、アァァァァァアァァァァァアァァァァァア!!』

 奇声を上げながら、狂うように笑う。


 ジノル『おい!マラ!?な、なんで!?』

 その時だった。突如、さっきのことまでが嘘のように俺が何も言わなくなった。


 俺『…』

 ジノル『え?』


 ジノルは、困惑した。が、それを気にも止めずに、

俺は、口を開いた。


 俺『ん?…一体どういうことだ?どうして生きているんだ?いや、待て…そもそもこの体……まさかそんな偶然?いや、それとも…』


 困惑するジノルをほったらかしにして、話し続ける。


 俺『はぁ…まぁいいか…そんなこと…おい、貴様』

 ジノル『え?僕?』

 俺『そうだ、貴様だ、今までに何があったか話せ』


 ………というわけで…と、ジノルが今までにあったことを話す。

 

 俺?『なるほどな、やはり…』


 その時だった。タッタッタと、地をものすごい勢いで蹴る馬の足音が聞こえてきた。


 ジノル『や、やばいもう来た!』

 俺『まぁ、そう慌てるな、ほら、俺様の手に掴まれ…』

 ジノル『え?えーと』


 ジノルは、やや、怪訝(けげん)な顔をしている。

それに対して、俺は、脅しをかける。


 俺『死にたいなら、別に掴まらなくても良いが…』

 ジノル『いや、死ぬのは、御免だね!』


 ジノルは、死ぬよりは、マシだと…そう無理矢理結論づけて、俺の手を握ることにした。


 俺『ふん、それでいい』

 俺は落ちていたアクセサリーを拾い、手のひらに置いて、落ちついた表情でそう言ったのだった。


 


 


次回 新たな一歩


黄色のアクセサリーを入手

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