間話 ザラルルという名のヤンキー
道すがらに出会う者たち全ての実力をあらゆる手法で推し量り、誰が強者か、弱者かを判断し、相手への態度を変える。
弱肉強食を信条として今日まで生きてきた者の名を人はザラルルと呼んだ。この名の意味はどこかの古い言葉で猛進を意味するものらしい。またこの名は実親から与えられた訳ではない。実質的な親代わりであるニレスという人物からその名を与えられた。
人外保護団体の会長であるニレスは遥か遠くの砂漠の国から亡命してきた本当の両親たちを迎え入れたが、直ぐに息絶えてしまった。生き残ったのは母親の腕に抱かれていた俺だけだったらしい。
だが、ザラルルはそんな瑣末なことを気にしたことはなかった。親は負けた弱肉強食というルールの中で、だからこそ、ザラルルが何よりも大事だったこと。それは力。強者になるためには力が必要。
弱者を嫌ったザラルルはそれだけを考え、生きてきた。サデラルに出会うまでは……。
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ザラルル『おい、そこのお前!』
『……?我……のこと……か?…飴が…欲しいのか?』
ザラルル『いらねぇよ!!』
そう叫んでサデラルが飴と共に差し出した手を払い除けた。
ザラルル『あたりめぇだ!さっさと武器を取れ!お前が俺より強いか。今から勝負だ!』
『何故……勝負する……必要が?』
ザラルル『決まってんだろ!お前が!強者か弱者かを知りたいからだ!』
ザラルルと対峙した男の名はサデラル。俺と同じ学園で同じクラスの男。俺は目で強者か弱者を判別できない。だから、拳で語り合う。強者には従い、弱者は踏みにじる。この男が強者か弱者か。
それを…見定める!
ザラルルは咆哮を上げながら、目の前の男の首を噛み千切る勢いで飛びかかる。
だが、その瞬間。ザラルルは股間に強い衝撃を感じた。
ザラルル『……っが…!?』
ザラルルは声にならない掠れた鳴き声を発した。それ程の衝撃だったのだ。
ザラルル『て、てめぇ……!』
サデラル『……戦わない……言った…ぞ……だから……仕込ませた……』
ザラルル『仕込ませた?な、何をだ?』
サデラル『我の手には……獣を興奮させる……ものを……塗っていた……だけ』
ザラルル『う、嘘だろ……あぁーーー』
り、理性が、…壊れる……。全ての感情が押し寄せる。
ザラルル『ーーーぐ…ぐぉぉぉぉ!!』
サデラル『くらうが……いい……金的ショット…!』
そう言ってサデラルは……否、これ以上は語るべきではないだろう。ともかく、ザラルルは口から泡を吹きながら、気絶したのだ。
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ザラルル『……ぁあ…?』
目が覚めると知らない天井……。
メルメラ『あら?目が覚めた?』
ザラルル『……っ!!』
瞬間、ザラルルは立ち上がる。一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、恐怖を感じた。この…女から。
メルメラ『あら、そんな風に動いたらダメよ。また、大事な所が傷つくかもしれないわよ?』
ザラルル『…っ!う、ウルセェ!そ、そうだ…サデラルは何処だ!』
メルメラ『サデラルちゃんなら、貴方をここに運んできた後教室に向かって行ったわよ?』
俺をここに?情けを掛けられた?俺が?
真っ先に出てきた感情は怒りではなく、困惑だった。何故、弱者を助けた。弱者は踏みにじるべき存在のはずだ。
………。ザラルルは考えた。だが、何も答えは出てこない。
だが、もし、彼の下につけば、その答えが分かるのでは?
ザラルルは少し間を置くと、保健室のドアを開き、走り出した。
こうしてザラルルはサデラルの弟子になりましたとさ。チャンチャン。
メルメラ『失敗を繰り返し、学ぶ。あんたが正しい道を歩むことを祈ってるよ』




