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第五話 赤き鳥

 レリエル『赤創武具!!』


 レリエルがそう叫ぶと、多数の赤き光を放つ剣を。無であった物に形を与えた。それらは全て同じ方向を向き、その男。ナイース・ガンバを貫かんと剣先を尖らせる。レリエルが手を前に出せば、それに呼応するように、閃光の如く剣たちが放たれる。


 ナイース・ガンバ『水煙拳法(すいえんけんぽう)!』


 その男は剣たちに対抗すべく、固有魔法を唱えた。そうすると、彼の拳には煙のようなものが絡みつき、やがて拳全体を包んだ。


 そして、彼はその煙に包まれた拳を勢いよく一直線に突き出す。それと同時に水煙が一気に放出され、剣たちを包み込んだ。本来、煙だけでは飛んでくるものを止めることはできない。


 だからこそ、衝撃であった。剣は動きを止め、あろうことか、その剣先を回転させ、レリエルの方を向いた。


 ナイース・ガンバ『喝!!』


 レリエル『…え!?じょっ…!冗談でしょ!?』


 主を見失った剣は今。正に主を貫かんと、動き出した。


 レリエルは慌てふためき、咄嗟に『赤創武具』で盾を作り出そうとした。しかし、それは叶わない。何故ならば…間に合わないからだ。


 レリエルが行動を開始した時には数多の剣がレリエルの間近に迫っていた。


 レリエル『あ……やば…っ!』


 だがしかし、彼女を貫くことは叶わなかった。


 ドカンという音が鳴り響いたかと思えば、業火がレリエルを焼き尽くす勢いで向かっていき、それをマラがお姫様だっこで救い出した。


 俺『あっぶね…!大丈夫か!?』


 レリエル『えぇ……正直チビったわ……』


 二人はお姫様だっこしたり、されたりに特に言及することはなかった。それも当然だ。何せそんな暇ないから。


 ナイース・ガンバ『……ノノさん?何をしていらっしゃるのでしょうか?』


 ノノ『あぁ?お前を助けてやった3935(だけだが)?』


 ナイース・ガンバ『はいぃ?』


 ノノ『てめぇがいいやがったん36(だろ)!!チームワークが大事だって!!だから、オレハァ!オンナノトドメをさそうと41034(したんだよ)!』



 ナイース・ガンバ『……はぁ……分かりました、貴方がとことんチーム戦に向いていないことはよく分かりました……だから、もうチームプレイはなしということでよろしくお願いします!』


 どうやら、暇はあったようだ。二人が言い争っている間に俺たちは互いに視線を交え、両者が頷いた。俺たちは赤い武器、血の武器をそれぞれ持ち、走り出した。


 『『隙やり!』』


 ナイース・ガンバ『…っな!?』


 ナイース・ガンバの一瞬の隙。二人はそこに付け込み、彼の懐に入り込んだ。


 俺たち二人は剣の形を成した武器を変形させる。そして、竜巻のように血と魔力が拳を回る。二人は血と魔力が絡み合った一方の右ともう一方の左の拳を同時に突き出した。


 ナイース・ガンバ『……っっぐっ…ぶぁ…っ!』


 その男は目にも止まらぬ速さで壁に叩きつけられた。


 ノノ『…!テメェら!調子に…!!』


 ノノが手を前に突き出し、再び業火で彼らを焼き尽くそうとした。しかし、それは叶わなかった。


 レリエル『くらえ!!!』


 レリエルはそう叫ぶと先程作り出した赤い槍を握った手を勢いよく突き出す。それと同時に槍を手放した。それによって、槍は雷鳴が轟いたと勘違いする程の速さ、音でノノを貫いた。


 ノノ『…っがはっ!』


 その槍はノノを確かに貫いたが、どうやら致命傷にすらならなかったようで、よく見れば、彼の服だけを貫いている。


 レリエル『運のいいやつね……』


 しかし、それでもノノは強い衝撃に、気を失ってしまったようだ。


 俺『…これで一件落着だな…』


 その時、轟音が鳴り響いた。


 咄嗟に俺たちはその音の聞こえた方向を見た。


 俺『あっち方面から…』


 レリエル『とりあえず…向かいましょう?』


 俺『あ、あぁ!』


 その直後だった。得体の知れない殺気を感じた。その殺気に全身の毛が逆立つ。


 一種の野生的な反応だ。俺たちは熱いやかんに触れたように脊髄で判断し、その何かから距離を置いた。


 俺『な…なんだこれ……』


 ナイース・ガンバ『火鳥(フェニックス)逆月(さかづき)!?……何故…!たしかに監禁していたはずなのに…』


 フェニックス・逆月!?魔物?てか、なんだその名前は……。ダサ。ていうか、ガンバさん。まだいたんですね。


 レリエル『何そのダサい名前は』


 その火鳥とやらは獲物をじっくり品定めするかのように俺たちを見る。しかし、何もしてこない。


 そうすると、火鳥は何事もなかったように立ち去っていく。ように見えたその刹那の時。火鳥はナイースの方を向き、急降下した。

 ナイースはそれに即座に対応する。


 ナイース『水煙拳法!!』


 『喝!!』


 咄嗟に手で円を描き、水の煙を円から放出させた。火鳥が煙に呑まれた途端に、火鳥は方向を見失った。標的が誰であったか。朱色の羽毛で覆われた鳥は自分の場所、息の仕方すら忘れてしまった。


 「しかし、これだけは覚えていた。

いくら、頭が、胴が、足が潰れようと、これだけは忘れない。ーーすべてを蹂躙せよ。


 彼から与えられた存在意義だけは忘れない。遠い昔に与えられた役目など、とうに忘れている。


 しかし、これだけは忘れられはしない。ーーすべてをーーー蹂躙せよ!!」


 ナイース『…な!?』


 煙に包まれた朱色の鳥は突如、暴れ出し、その足趾でナイースを鷲掴みにし、勢いよく地面に()()を叩きつけた。


 そして、火鳥は俺とレリエルの方を向いた。


 俺『おいおい!やるってのか!?フェニ月さんよ!かかってこいや!てめぇーなんぞ……焼き鳥定食にしてやるよ!』


 どう考えても相手が強いのは俺も理解していた。だからこそ、俺は吠えた。虚勢を張り、自分を強く見せる。


 火鳥はただ()()をじっと見つめる。見つめるだけで何もしない。膠着状態が続く。


 俺『おらおら!どうした?びびってんのか?ははっ…!やっぱ鳥って脳みそ入ってないのか?』


 火鳥はその言葉には何も反応しなかった。しかし、火鳥はどうやら痺れを切らしたようで、こちらから視線を外した。


 俺『おい!どうしたんだ?俺にビビっ……!』


 煽り言葉を続けようとした途端、火鳥は足を曲げ、飛び立つ素振りを見せると、一瞬で上昇した。


 その影響か、地面は揺れ、俺たちは体勢を崩した。さらにそれに追い討ちをかけるように火鳥が口から炎を吐き出した。


 俺とレリエルはその炎から身を逃れるために、空中に飛んだ。たが、今の俺たちの状態は火鳥にとって追い討ちをかける好機だった。


 火鳥は勢いよく横に尾を振るい、俺たち二人を灼熱の炎を纏わせた金色の尾で壁に叩きつけた。


 俺『ぐはっ……!』


 あまりの威力に意識を失いかけながら、俺たち二人は叩きつけられた壁から放たれ、最後は地に落ちた。


 火鳥はその二人を見て、嘲笑うかのように甲高い鳴き声を上げながら、中央、多くの人が集まる場所へと向かった。


 俺『く…くそっ!なんか笑われた気がする!ウゼェ!!』


 レリエル『はぁ……はぁ…このボロボロな状況…どうする?』


 俺『決まってんだろ…これ以上犠牲を増やす訳には行かない、早く追いかけるぞ!』


 レリエル『でも、私たちが簡単にボコボコにされたのよ…援護しても意味ないんじゃ……』


 俺『人が増えれば何とかなるかもしれないだろ?それにあのまま行かせたら何となくやばい気がする!!』


 レリエル『………分かったわ…行きましょ!』


 レリエルは少しの沈黙の後に、肯定の意思を俺に見せてくれた。


 俺『あぁ…ありがとう!』


 俺たち二人は足早に火鳥の後を追っていった。


     ーーーーーーーーーーー

 レリス『全く…面倒な奴らね!』


 レリスはソウルアーマーによって、両足に黄色と赤色が何重も組み合わさり、形となった。

 そして、その右足を巧みに使い、向かってくる何人もの敵を蹴り飛ばす。


 ライラはそれを固有魔法で援護を行い、ネルエは拳と弓を併用して使っている。


 何人かが魔法を撃ってこようとすればライラとジノルの普通魔法とネルエの弓を組み合わせることで敵を一層する。


 ネルエ『倒しても倒してもしつこく湧いてくる…虫みたいな奴らだ…!』


 『誰が虫だ、俺たちは人間だ』


 一人の男がそう答える。


 レリス『うーわ虫が喋ったよ』


 『よし、殺す』


 そんな時であった。壁が、柱が、何かによって崩され、その男は瓦礫の下敷きになり、潰れた。


 ライラ『な…な、なんですか…あれ!』


 真っ先に反応を示したのはライラであった。今まで敵に向いていた視線は敵含め皆、()()に視線を奪われた。


 ()()は鳥であるが、普通の鳥ではない。燃え盛る炎で羽毛を覆っていた。


 その鳥は口を大きく開く。何かが起こる。それを察知したレリスは『黄防障壁』を唱え、黄色のドーム状の半円で他三人を覆った。


 レリス『みんな!私の後ろに!』


 ジノル『オッケ!』


 次の瞬間、鳥は鳴き声を上げた。甲高い鳴き声。地は揺れ、天井にはヒビが入る。


 だが、これはまだマシな方だろう。何の対策も出来なかった何百人といたはずであろう敵は脳が破裂し、全滅していた。


 ジノル『こ、これは…ちょっとやばいかも』


 障壁に守られていたとはいえ、鳴き声に含まれていた力を防げただけで、鳴き声そのものはこちらの耳に届いている。


 ネルエ『くそっ…!調子に……乗るな!!』


 『フェアリーブレイク!!』


 ネルエは金色の矢を鳥の首目掛けて放とうとしたが、その瞬間、鳥は空高く飛び上がり、その矢を避けた。そして、勢いよく地面に急降下した。


 地盤が、崩れた影響でレリスは体勢を崩し、障壁が解除された。


 火鳥はその隙を見逃さない。嘴を閉じる。その中に火を溜める。その小さな火は大きな炎となりそれを朱色の鳥は一気に放とうとした。


 『『焼き鳥ソード!!』』


 その時、二人の人間が壊れた壁から現れた。


 彼の左手。彼女の右手には一本の剣が握られていた。マラの血。レリエルの固有魔法。その二つが組み合わさったその剣を火鳥の首に目掛けて突き刺した。


 ライラ『お姉ちゃん…!』


 突き刺した同時に火鳥は大声で鳴き、頭を何度も何度も振った。


 『キィィエエエエエエ!!!』


 俺たちは剣から手を放し、巻き添えを喰らわないように後退した。火鳥は鳴き声を上げながら、頭を何度も振りながら、羽を広げ、再び空を飛んだ。そして、何処かに逃げて行った。


 俺『みんな…大丈夫か!?』


 レリス『えぇ、問題ないわ、ありがとう二人とも』

 『それで、みんなはどうするの?鳥の件もだけど本来の犯人探しの件はまだ終わってないだろうし』


 俺『俺は行く。あの鳥野郎は危険すぎるし、それに、これ以上被害は抑えるべきだろ?』


 俺がそう言うと、周りのみんなは黙ってしまった。この沈黙の状況を打ち破るべく声を上げたのはレリスであった。


 レリス『それなら、分かれて行動しましょ』

 『私とマラとネルエはあの鳥、ジノルとレリエル、ライラは犯人探しを。頼める?』


 ライラ『ま、任せてください!』


 ライラのその言葉を聞いたレリスは頷き、皆と視線を合わせた。


 レリス『それじゃ!行動開始!!』


       ーーーーーーーーー

 マータ『ひあい?』

 

 悲哀『悲しいと哀れを組み合わせた名前だよ…僕にぴったりでしょ?』


 マータ『古代魔法を扱い、「神童」と呼ばれた貴方が何故こんなことを…!』


 悲哀『何故って…あぁそうか、君たちはここの闇を知らないんだね』


 マータ『え?』


 悲哀『まぁそんなことは実際どうでもよくてさ……それより気になったんだけどもしかして君たちって呪われた血の一族かい?』


 マータ『……その血を深くは受け継いでいませんが…何故そう思ったんです?』


 悲哀『角だよ、角。今でこそ単なるそういう一族としか思われていないけれど、この協会にいればその一族の正体も分かる』


 『まぁそんな知識なくたって、君達が僕と同じ血が流れてくることくらい見れば分かるけどね…まぁ僕に角はないんだけどさ』


 物悲しそうにその男はそう語る。ムルムはそれなら何故と。言葉を続ける。


 ムルム『…!ならば何故このようなことを…。安住の地を去ったのですか…』


 悲哀『言わなくても分かるだろ?ここは安住の地ではなかった…いや、そもそも安住の地なんて僕達には存在しないんだよ』


 マータ『存在…しない…』


 悲哀『君達も薄々気づいているはずだ…何処の国にも黒い部分はある…。そしてそれは決して僕らを受け入れてはくれないってことをさ…』


 ムルム『でたらめを言うな!』


 マータ『…!お兄ちゃん…』


 ムルム『私には家族が、学園の仲間が、友達がいる!居場所ならそこにある!』


 悲哀『そうかい…それなら、予言してあげよう。君たちはいずれ、その仲間に殺される』


 ムルム『な…』


 悲哀はムルムの疑問の言葉に覆い被さるように言葉を続けた。


 悲哀『何故そう思うかって?それは…僕たちが呪われた一族だからさ』


 悲哀はそれだけ言うと手を地につけ、口を開いた。


 悲哀『古代に存在していた魔法…その一角を見せよう』


 悲哀『万物の創造…。神の欠片が生まれ落ちた。それは幼き英雄となり、人々に安寧を与えた。何故。英雄は悪を知り、悪を愛した。何故。英雄になれなかった兄は悪魔に魂を売った。何故。母は英雄の力を利用した。何故。父はそれを知り得なかったのか。英雄は恨んだ。憎んだ。憎悪の塊根は未だ根深い。創造せよ!「闇夜の英雄」!』


 悲哀が詠唱を終える頃。マータたちは既に魔法を撃つ準備をしていた。


 『『嵌合魔力!!』』


 固有魔法『嵌合魔力』彼らの使う魔法は二人一緒にいて初めて発動する。二人の中に存在する魔力をピース状に様々な形で組み合わせることで様々な魔法を放つことができる。

 これは兄弟、双子にしか現れない魔法で極めて特殊である。


 マータの左手とムルムの右手が重なり合うことで魔力のピースは変形し、そして組み合わさる。


 『『穿て!』』


 二人が同時に叫ぶとマータの右手とムルムの左手に光が収束し始め、虹色の輝きが一直線に悲哀を焼きつくさんとした。


 しかし、結果は失敗に終わった。「闇夜の英雄」がそれを阻んだのだ。虹色の光は闇に溶け、なき物となってしまった。


 悲哀『じゃあ…僕はこれで…帰らせてもらうね…』


 悲哀はそうとだけ言うと、再び詠唱を始めた。


 悲哀『この地を守りし、四つの獣たち。その一角の力を我に与えよ!欲するは水の力!大地を渡るための力を。波を操る力を。雲となり、大地を跨ぎ、再びこの大地に舞い降りるその力を我は欲す!顕現せよ!「水亀の流水」!』


 悲哀が詠唱を終えると、彼の足から多量の水が出てくる。その水は小さな波となり、悲哀はそれを足で操ることでサーフィンで海を渡るようにこの場を去っていった。


 ムルム『逃がすものか!』


 ムルムは慌てて手を前に出し、魔法を放とうとしたが、丁度それを阻むように「闇夜の英雄」が彼に攻撃をしかけた。


 マータ『お兄ちゃん!危ない!』



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